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モーター スポーツ コラム 2025年6月9日

【ル・マン特集 | コース紹介】公道が大半の1周13.6kmのコースは単純なようで難所だらけ

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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サルト・サーキット

サルト・サーキット

2025年6月14日(土)〜15日(日)に「第93回ル・マン24時間レース」が開催されるコース「サルト・サーキット」をご紹介しましょう。

MotoGP・フランスグランプリや2輪(FIM EWC)ル・マン24時間など「ル・マン」で開催されるレースの大半は常設コースである「ブガッティサーキット」(1周約4.2km)で開催されますが、FIA WEC「ル・マン24時間レース」は「ブガッティサーキット」のピットやスタート/フィニッシュ区間を使いながら大半が公道で構成される1周13.6kmのコースで行われます。公道を封鎖してコースとして使用されるのは年に1度のこのレースと2年に1度の「ル・マンクラシック」だけ。つまり、テストデー以外は練習できないコースなのです。

まず、コースはブガッティサーキットのホームストレートからスタート。決勝レースでは映画「2001年宇宙の旅」でも使われたクラシック曲に乗ってスタートしていきます。第1コーナーは右の高速コーナーで、急激な上りになっています。その後やってくる最初のブレーキングポイント「ダンロップシケイン」はスタート時の鬼門です。2列になったローリングの隊列がスタートで3台、4台横並びに広がり、走行ラインはほぼ1本しかないシケインへと雪崩れ込んでいきます。当然、スタートでは頻繁に多重クラッシュが発生します。

そこからダンロップブリッジを抜けて、ル・マンの写真で有名な下り坂。ここでブガッティサーキットを離れ、専用コースへと入ります。左、右とターンした後、やってくるのが高速コーナーの「テルトル・ルージュ」。ここからが公道区間です。路面の舗装が一気に変わり、アクセル全開で駆け抜けた後にやってくるのが右、左の「第1シケイン」。ここでは頻繁にクラス違いのマシン同士の接触が発生します。

さらに加速して「第2シケイン」へと向かい、今度は左、右のシケイン。出口が重要で次のストレート区間へのスピードを乗せていかなくてはなりません。この3本続く公道のストレートは英語で「Mulsanne Straight」と呼ばれますが、日本ではフランスの名称「Hunaudieres(ユノディエール)」と呼ぶ人が多いです。

空撮写真

空撮写真

その先にあるのが高速右ターンからのブレーキングポイント「ミュルサンヌ」。またストレート2本を駆け抜け、次が難所の右、左の「インディアナポリス」、そしてキツイ右の「アルナージュ」です。この区間は非常にチャレンジングで経験が少ないジェントルマンドライバーたちがアクシデントを起こしやすい区間です。

さらに加速していくと公道区間が終了。右、左と高速ターンが続く「ポルシェカーブ」です。左ターンもかなり高速なのですが、右側はバリアの壁になっており、壁際ギリギリを攻める走りが求められますが、バリアの餌食になった時のマシンダメージは甚大です。その後、すぐに右、左とコーナーが連続する「メゾンブランシェ」という区間を駆け抜け、最後は2つのシケインが連続する「フォードシケイン」。そして再びブガッティサーキットのホームストレートに戻ってくるというコースです。

コーナー数は全部で38個ありますが、ストレート区間が長く、ブレーキングは僅か7箇所と、レイアウトは意外にも単純。しかしながら、その分、一つ一つのコーナーの攻め方が大きくタイム差となって表れてくるため、プロとアマチュアの差が出やすいコースでもあります。

コースの難しさよりもドライバーたちを苦しめ、チームを悩ませるのは天候です。全長が長いため、部分的な降雨となることも多く、ただでさえスリッピーな公道路面では様々なリスクが伴います。逆に良い天気で晴れると、近年は温暖化の影響でヨーロッパが熱波に襲われることも多く、6月半ばのル・マンでも夏日になることがしばしばあります。そうなった時は完全なサバイバル戦。マシントラブルが発生しやすくなり、ドライバーもチームも集中してレースを続けなければなりません。

ましてや近年のFIA WECは性能調整によってラップタイムは非常に僅差。よほど大きなトラブルに見舞われない限り、常に同じクラスのマシンとのバトルが続きます。2025年の「ル・マン24時間」開催週はどうやら一気に気温が上がりそうな予報。まさにサバイバルレースになりそうです。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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