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モーター スポーツ コラム 2025年5月15日

【見どころ解説】お台場の公道でレース!2回目の開催となるフォーミュラEの魅力とは? | FIA フォーミュラE世界選手権 2024/25 第8、9戦 東京

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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東京の特設サーキット(※昨年の様子)

お台場の特設コースで「Tokyo ePrix」が今年も開催

2024年、日本で初めて開催された「フォーミュラE世界選手権」が再び、東京都・お台場に帰ってきます。2025年5月17日(土)、18日(日)の2日間、お台場の特設コースで「Tokyo ePrix」が今年も開催。昨年の初開催は1レースだけの開催でしたが、今年は初の2レース制となり、土曜日、日曜日の2日間レースが行われます。

昨年は(細かく言うと他にもありますが)日本で初めての公道で行われた世界選手権自動車レースとして大きな話題を呼びました。日本では実現不可能と長年言われていた公道レースの開催を東京都とフォーミュラEは見事に成功させました。決勝レースには都知事だけではなく首相まで来場するという、これまでのモータースポーツイベントにはない歴史的なイベントになったと感じます。

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公道での開催が実現できたのは「フォーミュラE」が電気自動車(EV)のレースであることが一番大きく影響しているでしょうか。「エンジン音のしないモータースポーツなんて迫力ない」という否定的な意見もいまだにありますが、実際にお台場を走るフォーミュラEカーの姿は想像以上に迫力があります。モーターの音、タイヤのスキール音だけでなく、特に高速で公道を駆け抜ける凄まじい風切り音はその迫力を増幅させてくれました。

また、高架鉄道の「ゆりかもめ」に乗車してフォーミュラEの走行を撮影した動画がバズったり、無料で入場可能なイベントエリア「ファンビレッジ」には大勢のファミリーが詰めかけ、大スクリーンで中継映像を見ているだけなのに、ワーッと歓声が上がっていましたね。普段モータースポーツを見ない層の方にも、フォーミュラEの魅力が伝わったのだと現場に居て感じました。

そんなフォーミュラEは今年で11年目のシーズンを迎えています。ポルシェ、DSオートモービル、マセラティ、ジャガーなど海外の自動車ブランドに加えて、日本の日産自動車、さらに今年からはヤマハ発動機も本格参戦を開始しました。

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【決勝 ハイライト】FIA フォーミュラE世界選手権 2024/25 第7戦 モナコ(5月4日)

新しい日本メーカーの参戦が実現できた最大の理由は企業としての技術開発、エンジニア育成という側面もありますが、何より年々レースが非常に面白くなっていることに最大の理由があるように感じます。フォーミュラEは今年から既存のワンメイクシャシー「GEN3」をアップデートした「GEN3 Evo」を導入。最大出力350kWで四輪駆動も使って走るフォーミュラEカーはシリーズが始まった2014年当時では考えられないくらいの加速力を獲得し、マシンの動きがよりクイックになり、ラップタイムが飛躍的に向上しているのです。

さらに今年からは内燃機関のモータースポーツの給油に値する「急速充電」の「ピットブースト」が導入。2レース制のイベントではどちらかのレースでピットインして急速充電することが義務付けられることになりました。「Tokyo ePrix」では5月17日(土)の第8戦で「ピットブースト」が採用されます。

この急速充電はフォーミュラEの積年の夢だった技術で、ようやく今年導入されました。今はまだテスト導入段階であり、安全面と急速充電の競争激化とならないように全車最低34秒はピットで停止しなければならないというルールになっています。これでは差は生まれないのですが、どのタイミングで充電のためのピットストップを行うか、それによってレースの展開が大きく変わってきます。ちなみに同じチームのドライバーが同じ周回数に一緒に入るのが禁止されているので、チームの中で戦略を分けなければなりません。これがドラマを生み出す要素の一つになっています。

戦略という意味では、フォーミュラEで勝つための大きな要素として「エネルギーマネージメント」があります。バッテリーに貯められる電力量は現行の「GEN3」では38.5kWhと決まっていますから、このみんな一緒のエネルギー量をいかに効率よく使って最後に1番になれるかを競います。時にはエネルギーをセーブするために抑えて走らなければいけない時もありますし、パワーを最大350kWにまで上げて四輪駆動で走る「アタックモード」を使う時はドライバーが猛烈に攻めなければいけません。

「ゆりかもめ」の路線下を走るマシン

「ゆりかもめ」の路線下を走るマシン

そこには緻密な計算が必要であり、独自に開発するパワートレイン(モーター、インバーター、ギアボックス)を最適化することも必要です。つまりはチーム力の差が結果を左右します。もちろんチーム力があっても肝心のドライバーが計算通りの走りをできなければ意味がありません。これはF1を代表とするモータースポーツにおいて、どのレースでも同じ必要不可欠な能力です。ドライバー、メカニック、エンジニア、そしてマネージメントチームが一体になってこそ初めて勝利に近づきます。

このエネルギーマネージメントとレース戦略の難しさから、今のフォーミュラEは頻繁に順位が変わるもの魅力の一つになっています。F1ではほぼ順位変動がないモナコ市街地コースでは200回近いオーバーテイクが記録された年もありました。昨年の「Tokyo ePrix」でもオーバーテイク回数の総数は200回以上だったと報告されています。レース時間は1時間弱と短いですが、その分最初から最後まで行方が分からないレースになるのがフォーミュラE最大の魅力です。

新ルールの「ピットブースト」の導入もあり、さらに先の展開を読みにくくなった現在のフォーミュラE。中継映像では時々「AI(人工知能)のエンジニアが考えた戦略」を文字情報で紹介することがありますが、当たらなかったり、誰もその作戦を使わなかったりすることも多々あり。まさにAIでもエンディングを読み解けない複雑なストーリー性をあえて伝えるための演出なのかなとも思いますね。

とにかく「フォーミュラE」のレースは、百聞は一見にしかず。テレビ中継で流される情報も豊富ですし、常にスリリングなレースは見応えがありますよ。ぜひ「Tokyo ePrix」は生中継で放送する「J SPORTS」でお楽しみください。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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