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モーター スポーツ コラム 2025年3月4日

雪の影響で勢力図は見えず……その中でも気になった2台の走り|2025スーパーフォーミュラ公式テストレビュー

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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激しい降雪に見舞われ2日目の開催が中止となったスーパーフォーミュラ公式テスト

いよいよ開幕間近に迫った2025年のスーパーフォーミュラ。今年は週末2レース開催の大会が増え、全12戦で争われる。今年は新規参戦のドライバーやチームもあり、昨年から顔ぶれが大きく変わったという印象。今年もチャンピオンの座をかけた激闘が鈴鹿サーキットで開催される3月8日・9日の開幕ラウンドから繰り広げられる。

そのシーズンの行方を占う上で注目が集まった2月18日・19日の鈴鹿公式テストだが、強烈寒波の影響で雪に見舞われる2日間となった。テスト1日目は降雪量も少なく、セッション開始までに溶けたことによって、最初はウエットタイヤでの走行を強いられたが途中からドライコンディションでテストが進めることができた。

しかし、2日目は雪の量がさらに増し、午前・午後共に走行はキャンセル。開幕前の重要な走行機会が雪の影響で半減されることとなった。

今シーズンは全車に供給される横浜ゴム『ADVAN』レーシングタイヤの仕様が変わり、再生可能原料・リサイクル原料の比率がさらに高められたタイヤが導入される。わずかな変化でも結果に左右するほどの違いとなって現れるほど超繊細なスーパーフォーミュラでは、タイヤの仕様が変わるというのは大きなトピック。各チームとも、新しいタイヤの特性理解に時間を費やしたかったが、それも雪の影響で十分ではないままに終わった。

結果的にテストでは牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が1分36秒116でトップ。2番手に福住仁嶺(Kids com Team KCMG)が0.027秒差で続いた。2台とも昨年末のテストを含めて好調ではあったが、タイヤが新しくなったことで抱いている感触も様々な様子。牧野は「ニュータイヤでアタックした時の(タイムの)上がり幅が、昨年ほどない感じ」と答え、福住も「新しいタイヤは…難しいですね」と話していた。

牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

あとは、タイヤのデグラデーション(性能劣化)が少ないという声もあったが、これは雪の影響でウエット路面からテストが始まり、走るごとに路面コンディションが急速に回復していったこともあり、本当にタイヤが変わった影響なのか判断しにくいところもある。

そのため、現時点では今年の勢力図が見えていない状況。昨年末のテストではチームタイトルを獲得したDOCOMO TEAM DANDELION RACINGが一歩抜け出ている感があったが、もしかするとタイヤが変わったことで昨年のアドバンテージが少なくなっていそうな雰囲気もあるが…結局は何かを予想できるほどデータが豊富ではないため、開幕ラウンドが始まってみないと勢力図が分からないというのが正直なところだ。

それでも、収穫は少なからずあった。今回は2025シーズンのスーパーフォーミュラで注目しておきたい2台を紹介する。

まずは“ある意味で”今季一番の話題となっているThreeBond Racing。ドライバーは昨年同様に三宅淳詞が務めるが、監督にはスーパーGTドライバーである塚越広大が就任。そして、チーフエンジニアには2021年と2022年に野尻智紀とともにチャンピオンを獲得した一瀬俊浩氏がTEAM MUGENから移籍する形で、このチームに加入した。

昨シーズンは、ポイント獲得はおろかトップ10圏内でのフィニッシュも叶わなかった三宅の12号車。塚越監督も「悔しいシーズンだった」と振り返っていていた。そんななか、大きな変化となっているのが一瀬エンジニアの加入だ。

エンジニアが1人変わることで大きな変化が出るとは限らないのだが、この日の三宅は1日目午前のセッションから好タイムを次々と記録し、セッション1で2番手、セッション2で3番手につける速さをみせた。

本人も「最初の走行から明らかに手応えがあった!」と語るほど、状況は好転している模様。それに伴い、セッション1終了後にThreeBond Racingのピットを覗きにいくと、昨年にはなかった明るい雰囲気が漂っていた。

三宅淳詞(ThreeBond Racing)

塚越監督をはじめ関係者の間からは「一瀬エンジニアの存在が大きい」という声が聞こえてきたが、当の本人は割と謙虚な感じ。「午前は有力チームがほとんどタイヤを使っていなかったですし、午後もアタック時にトラフィックに引っかかっていた選手がいました。ちゃんとした勢力図は見えていないので、この順位が僕たちの本当の順位ではないと思っています」と冷静だった。開幕ラウンドでの目標を5位から10位に設定していた。

一瀬エンジニアには、ここ数年取材で話を聞く機会があったが、昨年までの“相手に追われる立場”から今年は“相手を追う立場”にどこかリラックスした表情でテストに臨んでいたのが印象的だった。いきなりトップに来るということはないかもしれないが、今シーズンは要注目の存在と言っても過言ではなさそうだ。

今季は4人の外国籍ドライバーが参戦するが、なかでも手強そうなのがKONDO RACINGの4号車をドライブするザック・オサリバンだ。

イギリス出身の20歳で、ウィリアムズ育成ドライバーとしてFIA F2にも参戦。昨シーズンは2勝を挙げる活躍を見せたが、資金面の問題もありシーズン終盤はシートを失っていた。そんな中、今年は日本のトップフォーミュラに挑戦する。

実はスーパーフォーミュラ初走行となった昨年末のルーキーテストから評価は上々。近藤真彦監督も「いきなり鈴鹿のセクター2(デグナー周辺)が速い!」と高く評価。今季、彼の4号車を担当する阿部和也エンジニアも「(ルーキーテストで)最初にユーズドタイヤを履いた時からセクター2が速くて『速いドライバーなんだろうな』という雰囲気がありました。あと、始めて一緒に仕事した時、彼は19歳でしたけどウィリアムズの育成を含めてヨーロッパで色々な経験をしてきていることが効いているなと感じました。これで遅かったら、完全に僕のせいかなと思います」と語るほど。オサリバンに対する周囲の期待は高い。

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ザック・オサリバン(KONDO RACING)

実質1日のみとなったテストでも、トップタイムとまではいかないにしてもトップ10圏内につけており、セッション2では早くもロングランテストを実施していた。「まだまだやらなければいけないことがあるし、(2日目のセッションがキャンセルになったことは)痛手ではあるけど、ペースはそこまで悪くないと思っている」とオサリバン。

過去にもFIA F2経験者が多数日本にやってきて、成功した者とそうではなかった者がいたが……オサリバンに関しては見どころの多いドライバーという予感がしている。

もちろん、このほかにも注目のドライバーが多数参戦する2025年のスーパーフォーミュラだが、全22人のなかで用意されている頂点のイスは“1つだけ”。その栄冠を掴むのは果たして誰なのか……一瞬たりとも目が離せないシーズンが、いよいよ開幕する。

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文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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