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サッカー&フットサル コラム 2026年9月23日

“成長3倍”のビッグマッチに快勝! 流通経済大柏高校・榎本雅大監督が考える「この1試合で伸びる試合」の価値 高円宮杯プレミアリーグEAST 流通経済大柏高校×鹿島アントラーズユースマッチレビュー

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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大一番で勝利を収めた流通経済大柏高校

「たぶん『この1試合で伸びる試合』って、やっぱり年間で何試合かしかないじゃないですか。だから、選手たちにも『全国の決勝だと思って行け』と。『いや、今日の試合は言い過ぎじゃないぐらい、その価値があると思うよ』と言って送り出しました」(流通経済大柏高校・榎本雅大監督)

メチャメチャ気合が入っていた。高円宮杯プレミアリーグEAST第14節。勝点28で首位に立つ流通経済大柏高校と、勝点27で2位に付けている鹿島アントラーズユースが、直接激突する大一番。ホームチームにはちょうど5か月前に味わった苦い記憶があった。

4月19日。第3節。流通経済大柏は前半だけで3ゴールを献上し、後半に何とか1点は返したものの、1-3で鹿島ユースに完敗。前年王者にシビアな現在地を突き付けられる。

「負けた時は本当にショックが大きかったですよ。むしろウチの土俵でやられた試合でしたし、選手たちも落胆していましたからね」と明かすのは流通経済大柏を率いる榎本雅大監督。それでも、そこからチームは6連勝を達成。インターハイこそ全国出場を逃したが、リーグ前半戦は首位で折り返す。

ところが、夏の中断期間が明け、リーグ再開初戦となった前橋育英高校戦は1-2と逆転負け。続く横浜FCユース戦も3点を先行される展開から、最後は執念で追い付くも、3-3のドロー決着。一昨シーズンも、昨シーズンも、後半戦の失速で優勝争いから脱落したため、チームは嫌な雰囲気が漂いかねない状況に陥っていた。

9月19日。迎えた鹿島ユースと対峙する首位攻防戦。前橋育英戦後に「僕は3年生を諦めたくないんですよ。(福田)明史は『今日はすいませんでした』って泣いていたので、こういう気持ちの選手が何人いるのかって話なんです」と話していた指揮官は、フィールドプレーヤーに10人の3年生を揃える。

前回の対戦時はメンバー外だった山本頼斗は、この一戦に懸けてきた想いをこう語る。「自分は出ていないですけど、前期は鹿島に負けていただけに、他の相手よりも鹿島に対して勝ちたい気持ちはみんな強かったですし、みんな気合が入っていました」

この試合がプレミア初スタメンだった嘉味田颯太は、心地よい高揚感に包まれていたという。「緊張もあったんですけど、『ここで一発やってやろう』という気持ちでしたね。エノさん(榎本監督)からもよく『こういう大事なゲームは“成長3倍”だ』と言われているので、『ここで成長したいな』と思いました」

まさに“成長3倍”のビッグマッチは、序盤から流通経済大柏がペースを握る。不動のアンカーの内田煌生が、U-17日本代表招集で欠場する中、中盤の形はいつものダイヤモンドから、4人をフラットに並べる格好に。本来はセンターバックのメンディーサイモン友が、加島宏樹とドイスボランチを形成し、セカンドボールの回収とトランジションの速さで相手を圧倒する。

37分に平野万緑を起点にして、山本が右足で上げた左クロスに、渡辺瞳也が合わせて先制点を奪うと、40分には福田明史が果敢に仕掛け、加島の丁寧なパスから古川蒼真が追加点をゲット。前半だけでホームチームが2点のアドバンテージを手にする。

 

後半は反撃を期す鹿島ユースの勢いに押し込まれながらも、71分に古川のFKから大徳剛矢が豪快なヘディングを叩き込めば、79分には渡辺の身体を張ったポストプレーから、古川がとどめの1点を記録。終わってみれば4-0で快勝。「前期の借りを3年生全員で返さないといけないと思っていたので、今日は3年生の意地を見せられたと思います」と笑ったのは櫻井亮太。いつものグラウンドには歓喜の歌声が響き渡った。

「本当の快勝とはこのことですよね。もちろん今までも素晴らしい試合はいっぱいあるんですけど、プレミアが始まって以来でも一番ぐらいの勝ち方でしたし、今日はやっぱり3年生の想いみたいなものをメチャクチャ感じました」と選手を称賛した榎本監督は、続けてこの日の90分間の価値を明確に説明する。

「たとえば市船とのダービー、今日みたいな首位攻防戦、それこそ県の決勝だったり、全国の決勝だったり、そういう舞台を経験すると、もうその1試合だけで別人になっちゃうヤツがいるんですよ。だからこそ、そういう試合に対してどういうモチベーションで行くのかが大事なんです」

「相手を怖がって行くよりは、やられてもいいから行けよ、と。結局、勝つか負けるかは別として、後悔が残らないようなことを選んでいくべきで、やっぱり成長ってそういう気持ちの先にしかないんですよ。遠慮したり、ちょっとビビってやったりしても、成長することはないんです。思い切ってやる、負けても後悔ないぐらいやってこそ、まさにそこで伸びるんですよね」

「だから、今日はもう試合が始まる前に『全国の決勝だと思って行け』と。『オマエたちは前期のアントラーズ戦、インハイの市船戦と、そういうゲームを落としているわけじゃん。ここ一番の試合で自分たちの力を出せないで終わっている試合が多いんだから、それを払拭するためには、もうこれ以上の舞台はねえよ』って発破をかけまくったんで(笑)」

それは勝つに越したことはないけれど、しびれるような試合の中でしか得られないものがある。ただ、その手応えを実感するためには、とにかく遠慮せず、ビビらず、思い切りやるしかない。その先にだけ、“成長3倍”が待っているというわけだ。

キャプテンのメンディーも、自分たちの成長の跡をしっかりと噛み締めていた。「前期は前半で3点もぶち込まれて、アントラーズに圧倒されたゲームでしたけど、今日は4点も獲れて、前期の結果よりオレらが上回ったという部分では、オレらの成長の方が強かったかなと思います」

プレミア初スタメンでフル出場を果たし、スーパークリアを披露するなど完封勝利に貢献した嘉味田は、ここから先のシーズンに向けて、改めて携え直した強い決意を口にする。

「来週は煌生が戻ってきて、もう一度スタメン争いが始まる中で、自分は出られないかもしれないですけど、いつもプリンスで頑張ってきたから、今日のこのプレーがあったと思うので、どのカテゴリーでも、その時の100パーセントを出すという姿勢は変わらないと思います」

チーム全体の執念が引き寄せた、「この1試合で伸びる試合」での完勝劇。もちろんまだまだシーズンは続いていくが、それはまだまだ成長する余地が十分に残されていることとイコールであることも間違いない。2026年の流通経済大柏がたどり着く最終形の姿は、果たしていかに。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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