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サッカー&フットサル コラム 2026年10月20日

前日に急遽告げられたプレミアデビュー。流通経済大柏高校・橋爪フェリックス一清が実感した「試合に出ること」の意義 高円宮杯プレミアリーグEAST 流通経済大柏高校×ベガルタ仙台ユースマッチレビュー

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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プレミアデビューを飾った流通経済大柏高校・橋爪フェリックス一清

待ちに待ったデビューは、思わぬ形で告げられた。

「昨日の練習が終わった後に自主練をしていて、シュートを受けている時にエノさんから呼ばれて、『フェリ、明日スタメンだって知ってるか?』って(笑)。そこでドキッとしたというか、ビックリしたんですけど、そこからシュートを受けるだけじゃなくて、しっかりいいキックを蹴れるように、キックの練習もし直しました」

チームを率いる指揮官は、その舞台裏をこんなふうに明かしてくれた。

「昨日の練習を見ていて、(大泉)未来がこの試合のセットプレーのことをあまりわかっていなかったんです。優勝した国スポから帰ってきたばかりで、そこまでちょっと気が行っていないのかなって。その時にセットプレーの指示は全部フェリックスがやっていたんですよ。それも頭に入っていますし、彼もずっと期するものがあったはずで、もう練習が終わった後だったんですけど、『明日はフェリックスで行こうか』ということになりました」(榎本雅大監督)

10月17日。高円宮杯プレミアリーグEAST第18節。ベガルタ仙台ユース戦。その2日後に18歳の誕生日を控えた、リーグ首位を快走する流通経済大柏高校の背番号25。3年生ゴールキーパーの橋爪フェリックス一清は、プレミアリーグデビューのピッチに解き放たれる。

ここまでの3年間の道のりは、決して平坦なものではなかった。入学してすぐにプレミアのベンチ入りを果たしたものの、直後にヒザの大ケガを負い、半年近い時間をリハビリに費やすことに。2年に進級すると藤田泰土と丸山ジェフリーという1つ上の先輩に加え、年代別代表経験者の大泉未来も入学してきたことで、なかなか序列を上げることができない。

最終学年になっても、主戦場はBチームが戦うプリンスリーグ関東。プレミアのスタメンには大泉が指名され続ける中で、橋爪は経験豊富な南雄太GKコーチから“ある指摘”を受けたという。

「未来がずっとプレミアに出ている中で、『オマエ、諦めてないか?未来に勝とうとしてないんじゃないか?』って言われたんです。もちろん自分自身は全然諦めているわけではなかったんですけど、たぶん練習の態度とかでそう見えていたのかなって」

「そこからは逆に『未来に勝とう、勝とう』と思い過ぎたり、未来と自分を比べないようにしました。もともとは結構比べてしまう方だったんですけど、やっぱり比べても変わらないですし、練習からしっかり自分にできることをやりながら、未来のいいところを盗むことをずっと意識してきました」

17歳として臨む最後の公式戦で巡ってきたプレミアデビュー。「試合前に並んだ時に、同じ会場でいつもプリンスには出ていたんですけど、プリンスとは全然雰囲気が違うなと思って、そこが一番緊張しましたね」。昂る気持ちを抑えながら、流通経済大柏のゴールマウスへと歩みを進めていく。

 

前半3分。右サイドを崩され、1本目のシュートはきっちり弾き出したものの、2本目のシュートはやや味方がブラインドになり、ゴールネットを揺らされる。いきなりの失点で、先制される展開に。だが、むしろ橋爪はそこでメンタル的にも吹っ切れたようだ。

「失点の後から自然と力が抜けたというか、そこからはもうリラックスして試合に入ることができたかなと。自分がそこで落ち込んでいたら、チームの士気も下がってしまいますし、その直後の背後の飛び出しもケアできたので、しっかり切り替えることができて良かったなと思います」

20分から5本続けて蹴られたCKを凌ぐと、29分にはビッグセーブ。左サイドからインスイングで入ってきたFKは枠を襲うも、懸命に伸ばした手で触ったボールは、クロスバーを叩いてピッチの内側へ。この時間帯をやり過ごしたチームは、前半のうちに逆転に成功する。

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「全体的にキックは調子が良くて、飛距離も出ていましたし、コーチングのところもしっかり声をかけることができていたので、自分のパフォーマンスも徐々に上がっていった感覚はありました」。特別な舞台に立っている実感も覚えながら、集中力も時間を追うごとに増していく。

「アディショナルタイムが4分と出て、『もう絶対これ以上失点しない』と思っていた中で、最後の笛が鳴った時には、もうメチャクチャ嬉しかったですね」

ファイナルスコアは4-1。快勝を収め、きっちり首位をキープした試合後。橋爪はチームメイトに促され、応援団に向かって右手を突き上げる。「みんなから認められた感じじゃないですけど、やっぱりアレは気持ち良かったです」。プレミアデビューを勝利で飾った背番号25の表情に、キラキラとした笑顔の花が咲いた。

 

 

ここからはすべてがシビアな決戦。まずはインターハイで逃した全国切符を獲りに行く、高校選手権の千葉県予選が控えており、その後には13年ぶりのEAST制覇を懸けたプレミアのラスト4試合が待っている。ようやく晴れ舞台を踏んだ橋爪も、残された高校生活に向けて、強い意欲を口にする。

「試合に出ることへの想いは、今日でメッチャ強くなりました。ここからはプレミアも選手権もあるんですけど、そういうピッチにまた立ちたいなって、今日の試合に出て思いましたし、この1試合でこれからが本当に楽しみになりましたね」

「今後の未来との競争もそうですし、もちろん未来だけではなくて、同じ3年生の仲間も一緒に切磋琢磨して練習してきているわけで、流経は日本一と言っていいぐらいキーパーの層が厚いと思っていますし、みんなが仲の良い関係性でやってきているところがあるので、これからもみんなでまたイチから競争できたらなと思います」

すべての努力が報われるわけではないこともわかっているけれど、努力していない人の元には、決してチャンスが転がってこないことも、同じぐらい理解している。18歳になってからの3か月は、ここまで積み重ねてきたものを出し尽くすための、まさに集大成。橋爪フェリックス一清は、この日味わった確かな手応えと、さらに湧き上がった成長欲を胸に、日常のトレーニングと真摯に、全力で、向き合っていく。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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