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サイクルロードレース コラム 2026年4月28日

タデイ・ポガチャルの3連覇と新たなライバルに名乗りを上げたポール・セクサス 勇敢2人が新時代を築く|Cycle*2026 リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ:レビュー

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

優勝ポガチャル、2位セクサス、3位エヴェネプール

圧倒的な強さを誇った絶対王者と、敢然と挑んだ19歳。2人の激走はリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに、いやこれからのサイクルロードレースシーンに、新しい時代がやってくると確信させるものになった。

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【フィニッシュシーン】リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ|Cycle*2026

第112回リエージュ〜バストーニュ〜リエージュは、勝負どころのひとつコート・ド・ラ・ルドゥットでタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)のアタックに、ポール・セクサス(デカトロン・CMA CGM チーム)が反応。約20kmにわたってリードを続けた末に、最終登坂コート・ド・ラ・ロッシュ・オウ・フォーコンでポガチャルが決定打。アルデンヌクラシックはこの1本に絞り調整していた現役世界王者が、狙い通りの大会3連覇を果たした。

「自転車競技の中でも特に大きなレースであるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで勝てたことに大きな意味を感じている。最近はレース数を絞っているので、勝つ喜びを味わう機会も減っていたんだ(笑)。今日のレースはもちろん、シーズンインからのチームの働きに心から感謝しているし、誇りに思っているよ」(タデイ・ポガチャル)

不意の集団分断に戸惑った選手たち

2月下旬から加速していた格式高きワンデーレース群は、今年もリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで締めとなる。今年は特に“歴史的激闘”の連続。その中心に立ってきたポガチャルを筆頭に、この一戦には4日前のラ・フレーシュ・ワロンヌを勝ったセクサス、1週間前のアムステル・ゴールドレースを制したレムコ・エヴェネプール(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が参戦。ほかにも登坂力に長けるライダーがそろい、真の丘陵クラシック王者決定戦にふさわしいものとなった。

大会名の通り、ベルギー東部の街・リエージュを出発し、南部のバストーニュで折り返し、再びリエージュへと戻るルートで、今回の行程は259.5km。獲得標高は4000mを越え、11カ所の登坂区間がプロトンをふるいにかける。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

レース開始直後に集団が割れた

そうして迎えたレースは、リアルスタート直後から激動する。誰が仕掛けたわけでもなく、自然発生的に集団が分断。52人が前方を走り、その中にはレムコが入っている。一方で、ポガチャルやセクサス、その他力のある選手たちも多くが後ろに取り残された。

「正直、何が起きたのか分からなかった。僕は前から30人目あたりを走っていたのだけれど、すぐ後ろで穴が開いたように集団が割れたんだ。きっかけ? ただの偶然だと思う。僕は逃げたいとは思っていなかったし、脚を使わないように心掛けるだけだった」(レムコ)

それでも、この状況を活かさないのはもったいない。レッドブル・ボーラ・ハンスグローエが主導して先頭グループのペースを上げる。後方集団がそれほど追走を急がなかったこともあり、最大で5分ほどまでタイム差が広がった。

後ろの集団は、UAEチームエミレーツ・XRGがコントロールを担った。その姿は他のレースとそう大きくは変わらず、スーパーエースのポガチャルのためにペーシングしている装い。いくぶんはペースを速めていたようだが、本人たちはさして焦っていなかったという。

「集団が割れた瞬間は少し不安になった。でも、20分くらいしたらあまり気にならなくなっていたんだ(笑)。あんなに大きな集団は逃げようにも連携がうまくいかないだろうから、とりあえずは逃がしても良いかとね。チームメートがうまくペースを組み立ててくれたし、デカトロンも協力してくれた。みんなレムコを逃がすつもりはなかったようだよ」(ポガチャル)

UAEのほか、やがてアシストを送り出したデカトロン・CMA CGM チームなどの動きによって、フィニッシュまで94kmを残したところで先頭グループをキャッチ。レースはふりだしに戻った。

そこからは、改めてUAEがレースの主導権を確保。こうしている間に、過去に上位進出経験のあるトーマス・ピドコック(ピナレロ・Q36.5プロサイクリング チーム)がバイクトラブルで後手に回るが、集団は待つことなく残り距離を減らしていく。結局ピドコックは集団復帰できず、フィニッシュこそしたもののトップから16分15秒遅れの最終便でレースを終えている。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

UAEがメイン集団を牽引

一時的に5人が逃げを試みる局面があったものの、レースそのものを揺るがすまでは至らない。バストーニュの折り返し地点を過ぎ、本格的な登坂が繰り返されると、UAEやデカトロンのペーシングによって集団の人数は絞り込まれていった。

快調に、それでいて張り詰めた集団のムードは、フィニッシュまで50kmを切るとより顕著に。多くのチームが隊列を成して集団前方でポジション固めに走る。いよいよやってきたコート・ド・ラ・ルドゥット(登坂距離1.6km、平均9.4%)で、物語は動く。

最後の上りで勝負を決めきったポガチャル

ラ・ルドゥットの上りに入ると、UAEはブノワ・コスヌフロワが牽引を開始。4日前のラ・フレーシュ・ワロンヌではエースを張り、4位で終えた男が今度は最終アシストを務める。その後ろにはポガチャルがつき、番手をセクサスが押さえた。かたや、レムコは彼らのペースにいまひとつ合わせきれず、少しずつ差が開いていく。

その瞬間は、頂上まで1kmのポイントで訪れた。まるで昨年を焼き直したような展開である。ポガチャルがスタンディングで踏み込んだ。ただ、今年はこれまでとは違う。ひとりだけ食らいついた者がいるのだ。セクサスだ。

セクサスは左右に触れながらも、ポガチャルの背中から離れない。王者の執拗な加速にも振り落とされることなく粘ると、2人で後続との差を拡大するスタンスへ。

「セクサスが苦しんでいるのは分かっていた。でも、ラ・ルドゥットの頂上で僕に迫ってきたのには驚いたよ。彼はその後も前に出て牽いてくれたから、おかげで後ろとの差を広げることができたんだ」(ポガチャル)

先頭を行く2人の後ろでは、ジャイ・ヒンドレー(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)らが追走グループを形成。さらに数秒後方にはレムコらが控えるグループが続いている。どうにかこうにかローテーションを繰り返しながら前を追うが、この日最も強いのはポガチャルとセクサスで揺るがない。2人と後続ライダーとの差は確実に広がっていった。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

ポガチャルに唯一ついていけたのはセクサス

ハイペースで飛ばしてきたポガチャルとセクサスに明確な差が生まれたのは、最終登坂のコート・ド・ラ・ロッシュ・オウ・フォーコン(1.3km、11%)だった。大観衆が待つ難所で、ついにポガチャルが単独先頭に立った。頂上までは600m、ともに力強く踏み続けたが、セクサスは限界に達した。

「ラ・ルドゥットでもう疲れ果てていた。ラ・ロッシュ・オウ・フォーコンまでに呼吸を整えていたつもりだったけど、力比べで負けてしまったね。あれ以上うまく走る術が僕にはなかったよ」(セクサス)

最後の14kmをひとりで駆け抜けたポガチャル。左袖にはかつてのチームメートで、自国チームでのレース活動中だった4月24日に亡くなったクリスティアン・ムニョスを悼む喪章を巻いていた。多くのファンが待つリエージュのフィニッシュラインに達すると、右手で天を指し、左手は胸へ。3年連続4度目のリエージュ制覇は、遠くへ旅立った仲間へ捧ぐものになった。

ラ・ルドゥットでのアタックにこだわり

終わってみれば、2番手でフィニッシュへとやってきたセクサスとは45秒の差がついた。それでも、ポガチャルは想定以上に追い込まれていたことを隠さなかった。

「心のどこかでスプリント勝負になるんじゃないかと思う自分がいたんだ。ラ・ロッシュ・オウ・フォーコンで仕掛けたらうまくいったけど、彼と一緒にフィニッシュに到達していても不思議ではなかったと思う。彼の強さには驚かされるばかりだよ」(ポガチャル)

ラ・ルドゥットでアタックするのは予定通りだったという。ポガチャル本人に言わせれば、今年、昨年、一昨年とアタックしているポイントが若干違っているそうで、その判断は感覚ありきだとか。アシストの働き、ライバルの状況、そして自身のコンディション。これらを総合的に判断する。過去2回は他選手を完膚なきまでに引き離し独走へと持ち込んだが、今年はセクサスが食らいついたことで違ったレース運びが求められた。それでも、この区間で仕掛けるのは効果的であるとの考えは揺らがない。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

遠くへ旅立った仲間へ捧ぐ勝利

「うまくは説明できないのだけれど、この上りが自分に合っているのは確かなんだ。スタートから5時間後にやってくるこのポイントが、アタックするには絶好の場所だと感じている。今回はセクサスが一緒に来て驚かされたけど、ラ・ロッシュ・オウ・フォーコンで勝負を決められた要因にはラ・ルドゥットでのアタックも関係しているんじゃないかと思うよ」(ポガチャル)

ラ・フレーシュ・ワロンヌでの優勝に続き、リエージュでは殊勲の2位となったセクサス。敗れた悔しさよりも、ポガチャルとの距離が埋まっていく過程に手ごたえをつかんでいる。

「ストラーデ・ビアンケではタデイについていけなかったんだ。でも今日はそれができた。それだけでも大きな意味のあったレースだと思うよ。フィニッシュまでもあと少しだったんだ。やるべきことはたくさんあるけど、今日の経験を活かせるよう精進を続けようと思う」(セクサス)

躍進著しいセクサスには、自国フランスでツール・ド・フランス出場待望論が出はじめているそう。実情として、リエージュ後のレーススケジュールはまったく決まっておらず、5月に入ってから大枠が見えてくる算段だという。今回直接対決に応じたポガチャルも、セクサスの走りはツールに値すると太鼓判を押す。そう遠くない未来には、両者の熾烈なマッチアップを見るのが当たり前になっているかもしれない。

「ツールで彼と会うことになるだろうね。十分活躍できる力はあるし、何よりフランスのファンがみんな満足するだろうから。どんな結果であっても、きっとみんな受け入れてくれると思うよ」(ポガチャル)

走り終えて健闘を称え合うポガチャルとセクサスの向こう側では、3位争いのスプリントが展開されていた。表彰台の最後の枠をかけた争いは約20人の集団にゆだねられることになって、レムコが勝負強さを発揮。大会前に“3強”と目されたメンツが、その見立て通りに表彰台を占めた。

「ラ・ルドゥットでは、前の選手との接触もあって上る前にポジションを落としてしまったんだ。上りのスピードが速かったから、無理して前を目指していたらオールアウトしていたと思う。そもそも、今日は脚の状態がベストではなかった。だから最後は集団から抜け出そうとせず、表彰台を目指すためのスプリントに集中したんだ。今日はこれが精いっぱい。結果は悪くないと思うよ」(レムコ)

ポガチャルに罰金と発表も取り消しに

ドラマに満ちた春のクラシックシーズンに終わりがやってきた。これからは、グランツールを中心にステージレースが各地で盛況を迎える。リエージュで勝ったポガチャルは、すぐにスイスへと移動しツール・ド・ロマンディへ。レムコは休養をはさんで、ツールに向けたトレーニングに移っていく。

間近に迫るジロ・デ・イタリアにも、ビッグネームが多数集結する。1日完結の戦いから、日数をかけた長丁場の戦いへ。楽しみは尽きない。夏の主役は誰になるだろうか。

最後に、ポガチャルはこのレースの表彰時にUCI規則に違反したマイヨ・アルカンシエルを着用していたとして、5000スイスフラン(約100万円)の罰金が課せられたのだけれど、のちに取り消しに。一説には、スポンサーロゴの表示位置に問題があったと言われているが、実際の問題点については大会主催者もUCI(国際自転車競技連合)も明らかにせず。何なら、罰金を取り消した理由についても説明がなされていない。歴史的な好レースの裏側では、どうにもすっきりしない事態が起こっている。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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