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これぞマリア・ローザ マジック! エウラリオ粘走で首位キープ 42km個人TTはフィリッポ・ガンナが貫録の勝利|ジロ・デ・イタリア2026 レースレポート:第10ステージ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介エウラリオがマリア・ローザを守った
「僕のジロは終わり」と言い、笑顔でスタート台を駆けていったマリア・ローザ。ジャージとの別れを楽しむはずの42km個人タイムトライアルは、思いがけない方向へと走っていく。終わってみれば、わずかなタイム差ながらもトップを守った。アフォンソ・エウラリオ(バーレーン・ヴィクトリアス)のピンク旅はもう少し続く。
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「実際に体験しないと分からないかもしれないけど、すごいものを体感したよ」(エウラリオ)
これが、マリア・ローザ マジックである。
ステージ優勝争いは、ダントツ一番手に挙げられていたフィリッポ・ガンナ(ネットカンパニー・イネオス)がひとり平均時速54km台で走り抜いて、順当に一番時計を記録している。
ガンナが前評判通りの圧倒的な走り
ブルガリアからの移動日も含めると実質2回目の休息日を終えて、今大会唯一の個人タイムトライアルステージへ。トスカーナ地方に舞台を移し、ティレニア海沿いを走る42kmの個人タイムトライアル。部分的に、例年3月開催のティレーノ〜アドリアティコのTTコースが採用されている。
改めて、42kmもの距離は1回のTTステージとしては、過去10年間のグランツールで最長。平坦かつコーナーリングテクニックが要求されるコースは、選手たちにとってどう作用するのか。「直線的だ」と述べる選手たちが多いが、コーナーでのオーバーランやタイヤを滑らせてのクラッシュには細心の注意が必要だ。
選手たちの出走時間は、個人総合成績が反映される。下位選手から1分おきにコースへと出発。最後の15人……つまりは個人総合15位までの選手が3分おきに拡大された時間差でスタートを切る。中間計測は、1回目が16.7km地点、2回目が28.9km地点、3回目が38.4km地点に設定された。
フランク・ファンデンブルーク(チーム ピクニック・ポストNL)が第1走者を務めて始まったTTステージ。第4走者のマキシミリアン・ヴァルシャイド(リドル・トレック)が平均時速52.318kmとなる48分10秒で走破をし、早くから高水準のレースになる。ヴァルシャイドの2人後に出発していたヨハン・プリース=パイタースン(アルペシン・プレミアテック)も48分22秒をマーク。日々アシストに従事してきた選手たちが、個の力を試す局面で意地を見せる。
ひとり平均時速54km台で走り抜いたガンナ
すると、36番目にスタートしたシュールト・バックス(ピナレロ・Q36.5プロサイクリング チーム)が中間計測からヴァルシャイドのタイムを上回り続けて、47分47秒で走り抜く。これが基準となって、66番目のスタートで控えていたガンナのタイミングを迎えた。
過去2度個人TTで世界王者を経験している男は、スタートから異次元のペースで突き進む。第1計測の段階でバックスのタイムを41秒上回ると、第2計測では1分19秒更新。よほどのことがない限りフィニッシュでのトップタイムが決定的になっても、ガンナの攻めは続く。第3計測では1分54秒更新し、フィニッシュタイムは45分53秒。平均時速54.9km、最終的にバックスのタイムを2分4秒更新した。
「長くハードなタイムトライアルだから、ペース配分やポイントごとでの走りをあらかじめ分析しておく必要があった。その点においては簡単なものではなかったから、決められたスケジュールのもので忠実に実行しないといけなかった。走っている間は、他の選手のタイムは気にしないようにして、自分がやるべきことだけに集中していたよ」(ガンナ)
さすがにガンナの走りを上回る選手は現れず、長くホットシートに待機したのち、ガンナはステージ優勝を喜ぶことになる。
アレンスマンがチームメートのガンナに続く好走、ヴィンゲゴーはいまいち伸びず
ガンナのステージ優勝が濃厚ムードとなったなかで、次なる注目は総合系ライダーたちの走り。
トップ10圏外の選手では、個人総合14位でスタートしたデレク・ジー=ウェスト(リドル・トレック)がまずまずの走り。ガンナからは2分16秒離されたが、48分9秒のタイムはこの段階で4番時計。
第1週後半で胃の不調に悩まされたジュリオ・ペリツァーリ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)は、この日も我慢の走り。第2計測でガンナから2分以上の差になっていたが、何とか粘ってフィニッシュでは3分18秒差に踏みとどまる。ガンナからの遅れが2分程度であれば成功との空気感が出てきて、各選手がどの程度の差で走れるかが見ものとなっていく。
そうした中で、ペリツァーリのあとに走り出した個人総合8位のベン・オコーナー(チーム ジェイコ・アルウラー)が上々の走り。第1計測で47秒差の4番手とすると、その後は少しずつ順位を下げたものの、48分37秒のフィニッシュタイム。ガンナとのタイム差2分台の指標にしっかりと踏み込んだ。
彼らを超える秀逸な走りを見せたのが、個人総合6位につけているテイメン・アレンスマン(ネットカンパニー・イネオス)だった。スタートダッシュをうまく決めると、第1計測ではガンナから30秒差の2番手に。さすがにガンナとの差は広がっていったが、それでも第2計測は1分10秒差、第3計測では1分42秒差と、他の総合系ライダーとは別レベルの走りを見せる。フィニッシュタイムは47分47秒。平均時速は52.738kmで2番時計。
個人総合4位のジャイ・ヒンドレーは、チーム内でペリツァーリと同様の胃腸症状が蔓延しているのが関係してか、終始苦戦。ガンナからは3分31秒差で終える。さらに厳しいTTとなったのが、同3位のフェリックス・ガル(デカトロン・CMA CGM チーム)。まさかの4分22秒遅れでのフィニッシュとなり、とてもではないが成功とはいえない走りに終わってしまう。
最後から2人目で出発したヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(チーム ヴィスマ・リースアバイク)は、第1週の好調そのままに進撃するかに思われた。しかし、第1計測を56秒差とすると、第2計測では1分43秒差と、いまひとつ伸びてこない。ベースを大きく落とすわけでもないが、そこから挽回できる感じてもない。結局、フィニッシュでは3分差の13位。ステージトップ10圏内にも入ることができなかった。
こうなってくると、状勢が一気に変わってくるのがマリア・ローザの行方である。エウラリオも前半から飛ばしている。「タイムトライアルは得意じゃない」とたびたび口にしてきた彼だが、それならそれなりの戦い方を見せる。とにかく踏み続けて、フィニッシュを目指す。フィニッシュタイムこそ4分56秒もの遅れを喫したが、第1週からの貯金が利いて、マリア・ローザは誰にも奪われずに済んだ。“ミラクル・エウラリオ”の瞬間である。
「昨日、スポーツディレクターたちと話し合ったんだ。ジャージを守りに行くか、ステージ優勝狙いに切り替えるかについてだった。僕はジャージをできるだけ守りたいと言ったんだ。もしどこかで失敗して手放してしまう日が来たら、それで構わない。そこまでは全力で走ると決めたんだ」(エウラリオ)
ステージ13位の結果となったヴィンゲゴー
ヴィンゲゴー「最悪だ、本当にひどかった」
ガンナは狙い通りにタイムトライアルステージをモノにした。大会前からこのステージにフォーカスし、日々研究、そして相当なモチベーションで臨んでいた。
「今日は午前5時に目が覚めたんだ。アドレナリンがほとばしっていて、いろんな感情がこみ上げていた。自分をどうやって落ち着かせるか悩んだくらいだ」(ガンナ)
3日後には、地元ヴェルバーニアでのステージも控えており、次なるターゲットになってくる。
「そうだね、このジロでもう1勝はしたいと思っている。それがヴェルバーニアのステージになれば良いのだけれど、あとは集団の判断にゆだねるしかないね。僕を逃がしてくれればうれしいのだけれど。テイメン(アレンスマン)の総合成績もかかっているから、彼やチームの意向を聞きながら、オーダーに沿って役目を果たすよ。行けてと言われればトライするつもりさ」(ガンナ)
そして総合系ライダーたちである。うまく乗り切った選手と、苦心した選手とが入り乱れ、あまりに複雑な状況となった。数字だけでいえば、ヴィンゲゴーはエウラリオとのタイム差を一気に縮めて27秒差とし、快走のアレンスマンが1分57秒差の3位に急浮上。ガルがランクダウンで、2分24秒差の4位。オコーナーが2分48秒差の5位、ヒンドレーが3分6秒差の6位。
成功か失敗かは、各選手のTT能力にも関係するので見た目だけでは判断できないが、やはりこの日光ったのはアレンスマンだろう。一方で、思ったほどの成果とならなかったのがヴィンゲゴー。本人も、このステージでのマリア・ローザ奪取をイメージしていたのかもしれない。
ポディウム控室では穏やかな雰囲気
「最悪だよ。本当にひどかった。コースがとても長かったし、今日のような平坦なタイムトライアルは得意分野ではないね。まぁよく走った方だと思うよ。体格の大きな選手が力を発揮できるコースだったし、僕の日ではなかった。マリア・ローザを着られれば良かったけど、徐々に近づいていることは確かだ。調子は良いし、全体的には満足しているよ」(ヴィンゲゴー)
エウラリオの首位キープと順位シャッフルで、一層活発になってきた個人総合争い。ここから、各選手・チームの戦略がどのようなものになっていくか、われわれは注視していく必要がある。
最後にこの日のステージ順位を整理。ガンナ、アレンスマンのネットカンパニー・イネオス勢がワン・ツーフィニッシュを達成し、3位に続いたのがレミ・カヴァニャ(グルパマ・FDJユナイテッド)。一時ホットシートに座ったバックスはタイムが残って4位フィニッシュ。ジー=ウェストが5位。なお、ジー=ウェストは個人総合でも6つ挙げて8位に上げている。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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