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TT巧者から逃げのスペシャリスト、そして名参謀へ スーパーエース直々の指名でメンバー入りしたカンペナールツの境地|ジロ・デ・イタリア2026
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介名アシストとして名を馳せるカンペナールツ
グランツールを制した選手たちには、いつも参謀となる強力なアシストが存在する。その者とエースには何にも代えがたい信頼関係があり、いついかなるときでも両者は一緒に立ち回る。それがグランツールとは異なる、仮にも小さなレースであったとしても。エースが移籍するときは、参謀となる選手も一緒にチームを移る。何なら「一緒に移籍すること」が条件であったりもする。
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ジロ・デ・イタリア2026で、絶対的な優勝候補筆頭に挙げられるヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(チーム ヴィスマ・リースアバイク)。山岳が本格化するこの先の戦いに注目が集まるが、その彼にも決して外すことのできないアシストマンが存在する。ヴィクトール・カンペナールツ。百戦錬磨の34歳のベルギー人ライダーは、ヴィンゲゴー直々の指名によってジロの舞台を走っている。
ヴィンゲゴー直々のアシスト指名
ヴィンゲゴーによるカンペナールツ評は、「平地での巡航はもちろん、登坂力もあり、隊列を長時間安定させられる存在。特にスピードが上がる平地での混沌とした状況で巧さを発揮する」。これぞ一流のアシストとしての評価である。
ヴィンゲゴーは今年ジロに挑戦
大会開幕を前にカンペナールツのメンバー入りについてベルギーメディアに問われた際も、「絶対に外せない存在。ヴィクトールをメンバーに入れてもらうよう、チームに頼んだんだ」と。もっとも、「彼のレースプログラムは僕次第だったようなもの」と内情を明かしている。
確かに、カンペナールツは2025年の現チーム加入以来、ヴィンゲゴーが出走した2つのグランツール…ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャを走っている。もっといえば、同年春からいくつか同じレースを走っており、その経緯からみても信頼関係が築かれているのは想像ができる。
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今シーズンも、すでにスタートを切っているジロはもとより、7月のツール・ド・フランスのメンバー入りも内定している。この春にはスペイン・テネリフェ島での高地トレーニングキャンプに参加。ヴィンゲゴーが日々リラックスし、順調にトレーニングを消化していることを目の当たりにしている。
チーム ヴィスマ・リースアバイクにとって、ジロは今シーズン2つ目のヤマと位置づける。1つ目に設定されたパリ~ルーベではワウト・ファンアールトが劇的優勝。あの激走が、チームに良い流れをもたらしていることをカンペナールツは実感している。
「ワウトのルーベ優勝は本当に感動した。僕個人はジロの準備があったのでルーベを走れなかったけど、自分のことのようにうれしかったし、チームがあれで完全に明るくなったよ。ジロに向けても万全の準備を整えられたし、勝つことはイメージできている」(カンペナールツ)
ジロ第4ステージでは、コース後半に設けられたレッドブルKMでのボーナスタイム獲得へ、ヴィンゲゴーを牽引する彼の姿があった。それはさながらスプリンターを引き上げる発射台のよう。直前までモビスター チームが主導権を握っていたプロトンは、彼の素早いポジションチェンジによって流れが一変。ヴィンゲゴーのボーナスタイム獲得はならなかったものの、そこまでの構築は完璧だった。
ローマで勝利を喜びたい
本格的に山岳区間へと踏み込んでいけば、遅かれ早かれヴィスマが集団をコントロールするタイミングがやってくるだろう。ウィルコ・ケルデルマンがリタイアし7選手で展開していかねばならないが、それでもクライマー陣の充実度は高い。そうした中で、カンペナールツのペースメイクや集団コントロールは、アシストの役割として際立ったものになるはずだ。
かつてはタイムトライアルスペシャリストとして鳴らし、2017年と2018年にヨーロッパ王者にも輝いた。2018年には同種目で世界選手権銅メダル。ステージレースでも、TTステージになれば確実に上位に入ってくる選手だった。
新型コロナ禍がきっかけだったわけではないのだろうが、ちょうどこの時期に走りのスタイルを転換。なかばTTを捨てるようにして、“逃げ屋”へとモデルチェンジ。2021年ジロ第15ステージ、2024年ツール第18ステージの勝ち方は、逃げ屋の矜持と言わんばかりのスマートすぎるものだった。
そんな彼が、今度は名参謀へと様変わりしようとしている。現チーム入りを決めたのも「チャンピオンチームで走りたかったから」だった。想いを貫き、走りで実行してみせるあたりに、彼の真の強さが現れている。
ヴィンゲゴーはカンペナールツに絶大な信頼を置く
「ヨナスとの関係はあくまでも競技だけ。家族ぐるみで付き合うようなことはないし、将来的にもそうはならないと思う。でも、走りで通じ合えれば十分だ。彼の勝利に貢献できるのはうれしいし、相性は間違いなく良いはずだよ」とカンペナールツ。絶対エースのヴィンゲゴーがアシストとして直々に指名していることこそ、何よりの証明である。
昨年のブエルタでは第16ステージのスタート前にリタイアし、ヴィンゲゴーの個人総合優勝に立ち会うことができなかった。その点においては、このジロが「リベンジの場」だとも。ローマでピンクに染まるエースの傍らで一緒に喜ぶこと、それがジロを走る最大のモチベーションになっている。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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