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サイクルロードレース コラム 2026年5月16日

ヴィンゲゴーがアペニンの名峰ブロックハウスを征服 エウラリオは「目標通り」のマリア・ローザキープ|ジロ・デ・イタリア2026 レースレポート:第7ステージ

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ジロ・デ・イタリア

全てのグランツールで区間勝利!ヴィンゲゴーハンセン

ジロ・デ・イタリア2026最初の本格山岳として注目された第7ステージ。アペニン山脈の名峰ブロックハウスを目指したレースは、上りで別次元の走りを見せたヨナス・ヴィンゲゴーハンセンチーム ヴィスマ・リースアバイク)が今大会初勝利。初出場でもあることから、これが記念すべきジロ初勝利となった。6分以上の総合タイム差を持ってスタートしたアフォンソ・エウラリオ(バーレーン・ヴィクトリアス)は、ヴィンゲゴーから2分55秒差の15位。リードは減ったものの、マリア・ローザのキープには成功している。

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ミランが逃げでポイント加算

大会第1週は残り3ステージ。いよいよ初の本格山岳ステージの到来である。今大会最長の245kmに設定されたコースは獲得標高4600m。

最後の13.6kmは、ブロックハウスの頂上に設けられたフィニッシュラインを目指してのクライミング。平均勾配は8.4%で、部分的に10%を超える急坂も待ち受けている。残りステージ数からして、この山で決定打が生まれることは考えにくいが、取りこぼしは決して許されない。ここでの結果次第でマリア・ローザ争いから完全に脱落してしまう可能性だってある。

迎えたレースはまず、ジョナタン・ミランリドル・トレック)らがアタックして先頭グループを形成。本気で逃げるというよりは、ミランであれば中間スプリントでのポイント加算、山岳賞でトップのディエゴ・セビーリャ(チーム ポルティ・ビジットマルタ)は同賞ポイントの加算、あとのメンバーもスポンサーアピールや集団に控える総合エースの負担軽減を目的としたものと見ることができる。

リーダーチームのバーレーン・ヴィクトリアスがコントロールするメイン集団は、先頭との差を5分台まで容認。この間、112.4km地点に設置された中間スプリントポイントで、ミランが「狙い通り」の1位通過。12点を加算し、マリア・チクラミーノ奪還への意欲を示す。

ジロ・デ・イタリア

海岸線を進む先頭グループ

目的を果たしたミランが意識的に後退すると、4人となった先頭グループは中間地点を過ぎて山岳地帯へと足を踏み入れていく。166.4km地点に設定された2級山岳では、セビージャが1位で通過して山岳ポイントを追加している。

ここ数日と同じように雨が降り始めると、路面がウェットになっていきプロトンは慎重な走行を求められる。それでも、先行するライダーたちとのタイム差は着実に縮小。ブロックハウスに近づくにつれ、ネットカンパニー・イネオスやチーム ヴィスマ・リースアバイクが隊列を組んで集団を率いる場面が増えてくるが、それでも無理して逃げる選手たちを捕まえにいくムードとはならない。すでに射程圏に捉えており、ブロックハウス登坂で彼らをパスすれば問題ないと見ているようだ。

ヴィンゲゴーが風を計算しながらのアタックでライバルを引き離す

ブロックハウスの上りが始まると、先頭グループからヤルディ・ファンデルリー(EFエデュケーション・イージーポスト)がアタック。さらにニコラ・ズコウスキー(ピナレロ・Q36.5プロサイクリング チーム)がカウンターで仕掛ける。一時的にズコウスキーが単独先頭に立ったが、2kmほど進んだ先でファンデルリーが合流。メイン集団では、ジャイ・ヒンドレーとジュリオ・ペリツァーリの2枚看板を擁するレッドブル・ボーラ・ハンスグローエがペースメイク。先頭2人との差は確実に縮まっていく。

残り8.5km、勾配が緩んだところでファンデルリーが再度のアタックでズコウスキーを引き離す。その後ろでは、ヴィスマ勢が満を持して集団のペースを上げる。マリア・ローザのエウラリオは敢然とヴィンゲゴーの番手につけるが、個人総合での上位進出が期待されていたエンリク・マスモビスター チーム)やエガン・ベルナル(ネットカンパニー・イネオス)は遅れてしまう。集団から次々と選手たちが切り離されていくが、ヴィスマはダヴィデ・ピガンゾーリとセップ・クスを立てて、登坂ペースを一層上げていく。

200kmを超えた長き逃げは、フィニッシュ前6.5kmで終わりを迎える。マリア・ローザ候補たちによる直接対決のムードが高まっていくなか、エウラリオもヴィスマがつくるペースについていけなくなってきた。そして、タイミングを同じくして真打ちヴィンゲゴーが先頭に立った。

「僕が先頭に立てば、ペリツァーリやほかの数人がついてくるだろうと予想はしていた。だから段階的にスピードを上げて、差を広げようと考えたんだ。ペースアップのタイミング? ブロックハウスに入ってからあらゆる向きの風が吹いていたけど、自分がベストだと思うところでアタックしたよ」(ヴィンゲゴー)

ヴィンゲゴーに唯一食らいついたペリツァーリは、1kmほど進んだところでオールアウト気味にペースダウン。快調に飛ばすヴィンゲゴーを追っているのは、一定の速度で上り続けるフェリックス・ガル(デカトロン・CMA CGM チーム)だけ。

ジロ・デ・イタリア

ヴィンゲゴーのアタックに食らいつくペリツァーリ

ガルとの差を都度確認しながら上ったヴィンゲゴーは、最後まで先頭を譲らず一番にブロックハウスの頂上へ。バイクに、そして家族に向けたキスでウイニングセレブレーションを演じてみせた。

ヴィンゲゴー「最大のライバルはフェリックス・ガル」

ジロ初出場で、難関山岳を征服。これで晴れて、すべてのグランツールでステージ優勝を果たした。もっとも、ブロックハウスは1967年にエディ・メルクスがジロ初勝利を挙げた場所でもある。

「すごい比較だね。今日の自分の走りには満足しているよ。イタリアでこの上りが特別なものだとはかねがね知っていた。チームとしてもこのステージを勝ちたいと思っていて、狙い通りになったことがとてもうれしいよ」(ヴィンゲゴー)

このステージでのマリア・ローザ着用とはならなかったが、その走りは大会ナンバーワンの評判に違わないもの。ヴィスマが、そしてヴィンゲゴーが、今大会のプロトンの中心にいることが、改めて証明された。

「今日はチームとしてよいレースができた。タフなレースを乗り切れたのは、みんなのおかげ。この先のことはまだ分からないけど、もっと走りの精度は上げていけるんじゃないかな。最大のライバル? 今日の走りを見る限りはフェリックス・ガルだろうね。彼の力を考えれば、今日の結果にはまったく驚いていないよ」(ヴィンゲゴー)

ブロックハウスを記録的なスピードで駆け上がったヴィンゲゴーだが、実は最後の4kmのタイムだけ見ればガルが上回っている。グランツール個人総合トップ10の常連だけあって、派手さはなくとも大事なステージをしっかりまとめ上げるあたりはさすがである。

「ヴィンゲゴーのペースアップについていけなかったことが悔しい。自分のペースに切り替えたことが結果的には良かったので、レース内容には満足しているよ。ヴィンゲゴーは世界最高の選手。できるだけ彼に近づきたいけど、タイムトライアル(第10ステージ)が僕にとっては問題だね。この先も自分のパフォーマンスに集中していくよ」(ガル)

ジロ・デ・イタリア

一定ペースを保ち区間2位に入ったフェリックス・ガル

ヴィンゲゴーたちとは別のレースになってしまったけど、エウラリオも粘ってマリア・ローザはキープ。もっとも、このステージのチームオーダーは「マリア・ローザを守ること」。その意味では大成功である。

「最後の上りでものすごく苦しんだ。でも、チームのみんなが245kmすべてで完璧な仕事をしてくれたおかげでマリア・ローザを守ることができたんだ。ダミアーノ(カルーゾ)の最後のペーシングも感動的だった。このまましっかり走って、休息日明けまではジャージを持ち続けたいね」(エウラリオ)

ヴィンゲゴーのフィニッシュタイムが6時間9分15秒。ワンデーレースでも数える程度しか見ない数字には、ライダーはもとより関係者のリカバリーも大変だ。続く第8ステージが「恵みの1日」となればよかったのだけれど、どうにもそうはいかないよう。レース距離こそ156kmだが、後半にかけて丘陵地帯へ。いくつも潜む急坂とダウンヒルテクニックが求められるレイアウトで、ダメージを負った体には何とも過酷なセッティング。だけど、これもまたジロの洗礼として受け入れるしかないのである。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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