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サイクルロードレース コラム 2026年5月14日

大雨でプロトンは混乱 アリエタが落車とミスコース乗り越え逆転勝利、マリア・ローザはエウラリオへ|ジロ・デ・イタリア2026 レースレポート:第5ステージ

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ジロ・デ・イタリア

状況は二転三転し最後はイゴール・アリエタが区間勝利を掴んだ

スタート直後に降り出した大雨が選手たちの動きにブレーキをかけ、203kmの長丁場を一層苦しいものにした。そんな中、攻めの姿勢を崩さず突き進んだ2選手がステージ優勝争い。ジロ出場2回目のイゴール・アリエタ(UAEチームエミレーツ・XRG)は、最終盤での落車とミスコースを乗り切って、フィニッシュ手前でアフォンソ・エウラリオ(バーレーン・ヴィクトリアス)を逆転。グランツール初勝利を挙げた。一方のエウラリオには、マリア・ローザが舞い込んでいる。

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スタート直後からの大雨は最後まで止まず

イタリア半島を北上している大会前半戦。第5ステージは、プラーイア・ア・マーレからポテンツァまでの203kmの長距離ルート。途中で2つのカテゴリー山岳が待ち受け、丘陵コースにカテゴライズされたこともあって総合成績に関係しない逃げが許されるのでは……との見方もあった。

ただ、レース前のそんな予想を忘れてしまうほどに、レースを取り巻く状況は複雑になっていく。

リアルスタートから10kmもいかないうちに、強い雨が降り出した。道路に水が浮くほどの大雨は、選手たちの体を不必要に冷やし、足回りをスリッピーに変えていく。そうした中でも、逃げることに意欲的な選手たちが仕掛けていく。総合タイム差4秒で2位につけるヤン・クリステン(UAEチームエミレーツ・XRG)が前線に位置したことで、集団は一層活発に。一時的ながら30人ほどが集団を切り離す局面があるなど慌ただしい。30km地点を過ぎたところで5人がうまく抜け出すと、さらに7人が合流。総勢12人の先頭グループがレースをリードしていくことになった。

先頭グループには、総合タイム差10秒に位置するエイネル・ルビオ(モビスター チーム)や前日の勝者ジョナタン・ナルバエス(UAEチームエミレーツ・XRG)が乗り込んだ。それも関係してか、メイン集団は1分を切る程度のタイム差でしばらく追随したが、リーダーチームのリドル・トレックが集団牽引を始めたのを機にその差は拡大傾向へ。ダレン・ラファーティー(EFエデュケーション・イージーポスト)だけが追う意思を見せ、やがて先頭グループ合流に成功している。

ジロ・デ・イタリア

サンダーストームがレースを覆う

一度は1分台まで縮まった先頭と集団とのタイム差は、強まるばかりの雨に集団が苦心したこともあり再拡大。ある者はバイクを止め着替えをし、ある者はレインウエアを重ね着し、とにかく走り続けるためにあらゆる策を講じる。徐々に、このレースが先を行く選手たちのものになるムードが高まっていく。

そんな中、先頭グループでは2級山岳を目前にアリエタがペースアップ。フィニッシュまでは62kmを残しているが、他選手を引き離して単独リードに持ち込んだ。

「どこで仕掛けるべきかの判断が難しかった。きっと上りで誰かがアタックするだろうと思って、早めに前に出ておこうと思ったんだ」(アリエタ)

その見立ては当たり、直後の2級の上りでエウラリオが追いついた。このステージを決定づける2人逃げとなった。

相次ぐ落車にミスコース、優勝争いは思わぬ方向へ

先頭が2人になった時点で、メイン集団とのタイム差は1分54秒。その集団でも動きはあって、3選手が追走を試みている。その前では、逃げ残りの選手たちがパラパラと位置しているが、いずれもアリエタとエウラリオへの合流を目指している点で共通している。

ただ、流れは先頭の2人から移っていくことはなかった。メイン集団は、2級の上りで多くのチームがアシストを失っており、前を追う空気感が薄れている。マリア・ローザで出走しているジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)がみずから引っ張る様子も見られるが、そう長くは続かない。タイム差もいつしか7分まで広がっている。前を行く2人の逃げ切りは濃厚になった。

この間、174.2km地点に設置されたレッドブルKMはエウラリオが1位で通過。どこまで2人で行くかが見ものだったが、フィニッシュ前13.6kmで状勢は一変。連続コーナーでアリエタがタイヤを滑らせ落車してしまった。下り基調だったこともあり、エウラリオは待たずに先を急ぐ判断をした。

外れたチェーンに手間取り、バイクごと交換したアリエタは懸命の追走。なかなか30秒ほどの差が縮まらないが、フィニッシュまで6.5kmのところで今度はエウラリオが落車。これでアリエタが追いついて、再び2人のステージ優勝争いへ。雨に濡れたテクニカルな下りを慎重に、さらに慎重にクリアしていくが、残り2kmの分岐でアリエタがミスコース。これで勝負あったかに思われた。

ジロ・デ・イタリア

互いを称え合う美しい瞬間

「フィニッシュまで一緒に行こうとエウラリオとは話していたのだけれど、互いに落車し、僕はコーナーでもミスしてしまった。これで完全に協調が乱れてしまったね。でも、このまま終わらせるわけには行かないと思って、最後の最後までベストを尽くしたよ。エウラリオも苦しんでいたから、何とかなるんじゃないかと信じ続けていたんだ」(アリエタ)

アリエタは追っている間もタイヤを滑らせたが、どうにかリカバーしてエウラリオに迫る。そして、最終コーナーを抜けて残り100m。エウラリオに追いついたアリエタは、一呼吸おいて踏み込むと一気の逆転。エウラリオに抵抗する脚は残っていなかった。

23歳のアリエタにとっては初のグランツール勝利。前日のナルバエスに続き、UAE勢がステージをモノにした。

状況が変わったことで、チャレンジする機会がめぐってきた

2000年代にアシストマンとして活躍したホセルイス氏を父に持つ2世選手。クライミング能力は父を超えるとも言われ、今季はイツリア・バスクカントリーで個人総合8位に入るなど、ビッグイベントでのリザルトも手にし始めていた。そしてジロで、キャリア最高の勝利。

「もともとはアシストとしてこの3週間を走るつもりだった。でも状況が変わったことで、チャレンジする機会がめぐってきたんだ。昨日のナルバエスにはたくさんの勇気をもらったよ。ブルガリアでレースを終えてしまったチームメートからも励ましてもらっていた。たったひとつのコーナーで、それまでの努力が水の泡になるほど悔しいことはないよね。だからこそ、今日は諦めるわけにはいかなかったんだ」(アリエタ)

アリエタの歓喜の横では、エウラリオも満足そうな表情を浮かべていた。フィニッシュした直後こそ寒さと苦しさが先に来たが、マリア・ローザが舞い込んできたことをすぐに理解した。実は彼にとって、このジロは来年以降の契約内容にかかわる大事な3週間なのだという。

「負けたけどマリア・ローザ、何だか不思議な気分だよ(笑)。アリエタも僕も全力を尽くしたから、落ち込む必要はないよね。マリア・ローザを着られるし本当にハッピーだよ。

ジロ・デ・イタリア

区間勝利は逃したもののマリア・ローザを手に入れたアフォンソ・エウラリオ

チームからは、今大会2勝を挙げてほしいと言われている。そうすれば、契約を1年延長してくれるというんだ。今日勝てれば、あとひとつだったんだけどね……マリア・ローザを着て走ることで、条件が変わるかもしれないね」(エウラリオ)

自国ポルトガルでは、みずからのことを知る人が少しずつ増えてきていることを感じている。今大会は当初ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ・XRG)が出場を予定していたが、体調不良で取りやめ。ポルトガルのファンはこの先、エウラリオへの期待を高めていくことだろう。

「そうなるとうれしいね。僕のことを知ってくれる人が増えていると思うのだけれど、マリア・ローザでもっと見てくれるようになるんじゃないかな。みんなのためにもジャージを着続けたいね」(エウラリオ)

結局、メイン集団はアリエタから7分13秒差でのフィニッシュ。チッコーネは当然マリア・ローザを手放すことになったし、総合系ライダーたちの多くがエウラリオと6分以上の開きを有する形になった。

チッコーネを擁するリドル・トレックとしては、そもそも総合エースがデレク・ジー=ウエストである時点で、このステージにおけるマリア・ローザの優先度はさして高くはなかったという。想定の範囲内、ということだろうか。

総合系ライダーを配備するチームは、先々の山岳に向けてどんな作戦を組んでいくだろうか。リーダーになったエウラリオも本来はクライマー系の脚質。そう簡単には崩れないのではないか。戦いはこれからである。

その前に。第6ステージは美しき南都ナポリへ。スプリンターが主役を張って、華やかな街に一層の彩りを与える。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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