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サイクルロードレース コラム 2026年4月23日

「ワンダーボーイ」ポール・セクサスが衝撃のユイの壁征服 史上最年少王者に!|Cycle*2026 ラ・フレーシュ・ワロンヌ:レビュー

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ラ・フレーシュ・ワロンヌ

19歳のポール・セクサスが初出場で史上最年少優勝!

怖いもの知らずの19歳が、90年の歴史を持つラ・フレーシュ・ワロンヌの史上最年少優勝者としてその名を刻んだ。彼の名は、ポール・セクサス(デカトロン・CMA CGM チーム)。19歳のフレンチマンは最大勾配26%のユイの壁を一番に駆け上がってみせ、新たな勲章をつかんだのだった。

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「チームのみんなに感謝したい。チームメートは200%の力を出し切って最後まで役目を果たしてくれたんだ。状況的に自分で何とかしないといけない局面もあったのだけれど、レースの大部分はチームに支えられた。最後の上りは感覚を大事にしながら、残り300mで勝負に出た。自分を信じて走ったことは間違いじゃなかったよ」(セクサス)

ユイの壁一本勝負、セオリー通りにレースが進む

丘陵地帯が舞台となるアルデンヌクラシックの2戦目に数えられるラ・フレーシュ・ワロンヌは、これがちょうど90回目。リエージュの北隣に位置するエルスタルの街を出発し200kmを走るが、その間に11カ所の登坂区間を越える。獲得標高は約3000mだが、重要なポイントとしてはコート・デレッフ(登坂距離2.1km、平均勾配5%)、コート・ド・シュラーヴ(1.3km、8.1%)、ミュール・ド・ユイ(ユイの壁、1.3km、9.6%)に集約される。中間地点を過ぎると、この3つの上りを含んだ周回コースを3周し、最後はミュール・ド・ユイ3回目の登坂で勝負が決まる。

レースは早い段階でのアタックから、6人が抜け出すことに成功。しばしレースをリードしていく。彼らを容認したメイン集団は、3分を切る程度のタイム差を維持しながら進行。デカトロン・CMA CGM チーム、UAEチームエミレーツ・XRG、リドル・トレックなどがアシストを1名ずつ出し合ってコントロールを続ける。

中盤戦に入ると、いよいよユイを基点とする周回コースへ。フィニッシュまで80kmを切り、1回目のユイの壁登坂へ。メイン集団では、過去3度優勝しているジュリアン・アラフィリップ(チューダー・プロサイクリングチーム)が遅れたが、レースそのものの形勢に変化は見られない。

ラ・フレーシュ・ワロンヌ

6人の先頭グループがレースを牽引していく

残り距離が減るとともに、先頭グループとメイン集団との差は着実に縮小していく。この間、過去に上位進出経験のあるトビアス・ヨハンネセン(ウノエックス・モビリティ)とフィン・フィッシャー=ブラック(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が落車したが、集団はペースを保ったまま進む。一方の先頭グループもまだまだ逃げ続ける意志が強い様子。丘越えのたびに力の差を見せつけているのがアンドレアス・レックネスン(ウノエックス・モビリティ)。2回目のユイ登坂では、レックネスンとヤルディ・ファンデルリー(EFエデュケーション・イージーポスト)が他を引き離して2人逃げとした。

最終周回に入ってほどなくして、一度遅れた2選手がレックネスンたちに追いつき、先頭グループは4人に。その後ろでは、30秒ほどのタイム差でメイン集団が迫っている。この頃には集団は数チームがトレインを組んでポジション確保を始めており、先行するライダーたちを捕まえるのは時間の問題だ。集団後方では、これまた優勝経験者のマルク・ヒルシ(チューダー・プロサイクリングチーム)が落車し戦線離脱。直後には優勝候補のケヴィン・ヴォークラン(イネオス・グレナディアーズ)がメカトラに見舞われ、チームメートのバイクを受け取って大急ぎで集団に戻っている。

セクサスはユイの壁で一度も先頭を譲らず

フィニッシュまで20kmを切り、3回目のコート・デレッフを上り始めたところでレックネスンが一緒に逃げてきた選手たちを引き離し単独先頭に。そこから10kmほどは約20秒差を保ってリードし続けるが、集団ではデカトロンやチーム ジェイコ・アルウラー、チーム ヴィスマ・リースアバイクが前を固めてユイの壁を見据えた動きへ。残り7kmで迎えたコート・ド・シュラーヴでついにレックネスンを捕らえ、いよいよ最終登坂を残すのみとなった。

ユイの壁に向けては、デカトロンやレッドブル・ボーラ・ハンスグローエ、EFエデュケーション・イージーポストの隊列が代わる代わる集団先頭に姿を見せる。さらにバーレーン・ヴィクトリアス、ヴィスマ、UAEもポジションを上げて、それぞれのエースライダーを先頭付近へと送り出す。残りは1km。ユイの壁最終決戦だ。

ラ・フレーシュ・ワロンヌ

最終周回までは大きい集団で上る

上り始めるとともに前に出たのはセクサス。さらにベン・トゥレット(ヴィスマ・リースアバイク)、マウロ・シュミット(チーム ジェイコ・アルウラー)、ブノワ・コスヌフロワ(UAEチームエミレーツ・XRG)も並ぶ。公式には26%、一説には29%とも言われる最大勾配ポイントでセクサスが一歩前へ出る。

そして残り300m、セクサスが一気に踏み込んだ。真っ先にトゥレットが反応したが、残り150mでセクサスは2段階攻撃。後ろではシュミットががトゥレットをパスしセクサスを追いかけるが、届きそうにない。最後の最後までトップで駆け上がったセクサスは、フィニッシュラインを通過したところで右の拳を高く掲げた。

優勝候補筆頭のプレッシャーに打ち勝ったチーム

19歳と210日。ラ・フレーシュ・ワロンヌ史上最年少の優勝者の誕生だ。今大会を前に好調が伝えられ、優勝候補筆頭に推す声も急激に高まっていた中で、セクサスは評価に違わない走りを披露した。

「今日の走りには満足しているよ。史上最年少優勝? データや記録に残るのはうれしいけど、それ以上に重要なのは勝つこと。いま自分がやるべきは勝つことなんだ。チームリーダーとしての自覚はあるし、その点については年齢は関係ないと思っている。レースに出る以上は勝つ、その思いだけなんだ」(セクサス)

快進撃を続けるセクサスを盛り立てるデカトロン・CMA CGM チームだが、この日ばかりはアシスト陣のプレッシャーは相当なものだったよう。チームを指揮したジュリアン・ジュルディ氏が打ち明ける。

「チームバスの中は緊張感からか、張り詰めた空気が漂っていました。でも、私たちは優勝候補筆頭としてこのレースを走りたいと思っていました。それは私たちが望んでいたことです。ですからストレスがある中でも走らなければなりませんでした」(ジュリアン・ジュルディ氏)

セクサス自身も、決して簡単に勝ったレースではないと強調する。どこかのタイミングでホイールに強い衝撃がかかり、スポークが1本折れた状態で走り続けていたことに気が付いたのは最後のユイ登坂でのことだ。

ラ・フレーシュ・ワロンヌ

右の拳を高く掲げてフィニッシュ

「集団内でのポジション争いは100km以上あった。精神的に疲れるレースだった。ミュールに向けたトレーニングも普段とは違う内容だったから、レース本番でどうなるのか正直不安もあった。でも終わってみたら、すべてが正しいと分かった。この経験は間違いなく自信になるよ」(セクサス)

なお、2位にはシュミット、3位にはトゥレットが入線。ともに「目標をはるかに上回る走りができた」と喜んだ。表彰台では、勝ったセクサスを含めた3人が自身の走りへの祝福に笑顔を見せている。

セクサスなら“あの男たち”に勝てる!?

鮮やかにユイの壁をクリアしたセクサスには、次への期待が高まっている。

中3日で迎えるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでは、ラ・フレーシュ・ワロンヌをパスしたタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)とレムコ・エヴェネプール(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が満を持して参戦する。彼らが、セクサスの前に立ちはだかる…といった表現がしっくりくるかもしれない。

それでも、セクサスの躍動に沸くフランスのメディアや、目の肥えた識者はリエージュでも十二分にチャンスはあるとしている。「なぜなら、ポガチャルは初優勝まで4度も跳ね返されたミュール・ド・ユイを、セクサスは1回で勝ってみせたのだから」。レースが異なるので根拠にできるのかはさておき、大一番を楽しむ要素が増えるのは良いことである。実際のところ、今季だけですでに7勝を挙げており、レムコと世界最多勝で並んでいる。

「さすがに難しいよね。現実的に考えたら、ポガチャルに勝つレベルにはまったくもって届いていない。ただ、トップクラスのレベルは拮抗しているのは確かなので、勝てることもあれば、負けてしまうこともある。とにかく、完璧な準備をしてスタートラインにつくこと。パワーだけでは不十分で、ビデオ分析やレコン(試走)も大事なんだ」(セクサス)

まるで絶対王者のような、達観した姿勢と風格。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュは、「真のクラシック王者決定戦」にふさわしいメンツがそろうことになる。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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