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サイクル ロードレース コラム 2025年5月12日

僅か1秒に泣いたピーダスンが執念のマリア・ローザ奪還!アルバニア最終日はスプリント決着|ジロ・デ・イタリア2025 レースレポート:第3ステージ

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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前日に惜しくも1秒差で奪われたマリア・ローザをピーダスンが奪還

リドル・トレックがレースを完全なる支配下に置き、スプリントエースのマッズ・ピーダスンが、最高の形でフィニッシュを決めた。アルバニアで過ごす3日間の締めくくりに、区間2勝目を挙げ、わずか1日で総合首位の座を奪還。マリア・ローザを羽織り、堂々とジロの母国イタリアへと乗り込む。

「チーム全員が計画遂行のために全力で取り組んでくれたし、彼らが目指しているものを手に入れるためにも、僕も全力を尽くさなければならなかった。こうして僕らは再び勝利をつかみ、ピンクを取り戻した。本当に最高だ」(ピーダスン)

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逃げを完璧にコントロール

スタートと同時に作業が開始した。あまりに大量の選手が逃げ出してしまわぬように、リドルは精力的に状況制御に努めた。マリア・チクラミーノ姿のピーダスン本人さえも、プロトン前方で存在感を見せた。

「ある時点で30人くらいが飛び出しを仕掛けているのが見えた。そういう状況では流れに乗ってしまうほうが楽なんだ。それに僕だってチームメイトを助けなきゃならない。もしも僕の目の前の2人が飛び出しても、僕は動かず、彼らだけが前に行く。そんなふうに流れに身を任せた」(ピーダスン)

第1ステージに続き、印象に残る逃げを披露したトネッリ

ついには前日のタイムトライアルを圧倒したジョシュア・ターリングが、自慢の推進力で、3人を引き連れ抜け出した。さらに逃げ職人のドリース・デボントと、すでに第1ステージでも逃げたアレッサンドロ・トネッリも、奮闘の果てに、先頭集団へのブリッジを成功させる。

こうして6人の逃げが形成されると、リドルはすぐさまタイム差コントロールに乗り出した。ほんの1秒差でピンクジャージを着ていたプリモシュ・ログリッチと、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエの仲間たちもまた、集団前方で隊列を組み上げた。

昨秋のブエルタでは、大会6日目にあえてマイヨ・ロホを手放したログリッチだが、その際ベン・オコーナーに5分近くも総合リードを与えてしまった。ようやく遅れを回収できたのは、なんと閉幕の2日前。だから今回、たとえジャージを一時的に他人に譲り渡すとしても、「もう少し差は少ないほうがいいなぁ」というのがログリッチの本音だった。

2つのチームが主導するプロトンは、逃げる6人を、常に射程圏内に留めおいた。最大で3分ほどしか余裕を許さず、起伏の険しい後半に差し掛かると、ひとりずつ確実に回収していった。

逃げの中で唯一、トネッリだけが、目に見える成果を持ち帰った。「中間ポイント賞」総合首位を射止め、「フーガ賞」の総距離を首位196kmに伸ばし、改めて敢闘賞にもノミネートされた。

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山で限界に挑んだ

ステージ半ばに潜んだ無印の上りさえ、スプリンターにとっては試練だった。しかも続く2級山岳では、山頂まで9kmを残して、ロレンツォ・フォルトゥナートとペリョ・ビルバオが大胆なアタックを打った。

リドルはあくまで焦らず、急ぎすぎず。ピーダスンが問題なく耐えられるテンポを淡々と刻んだ。また山岳エースのジュリオ・チッコーネ自らが集団前方で睨みを効かせ、新たな攻撃を許さない。前の強豪2人にも、決して1分以上を与えなかった。

そもそもフォルトゥナートの第一目標は、「逃げに乗らずに最大限の山岳ポイントを積み上げること」。第1ステージでも10ポイントを獲得した。この日も素早く逃げの残党に追いつき、追い越し、2級山頂で最大15ポイントを加算。2021年大会で魔の山ゾンコランを制したクライマーは、狙い通り、グランツールで初めての山岳ジャージを手に入れた。

残り38km地点で山頂を越えた後は、プロトン屈指の名ダウンヒラーのビルバオと共に、区間勝利のチャンスも模索した。ただ「小柄なクライマー2人で逃げ切れる距離ではない」と悟り、2人は先行を断念。残り18kmで静かにメイン集団に吸収された。

一方で山頂間際では、トーマス・ピドコックが攻撃に転じたことも。しかしチッコーネと新人賞ジャージのマティアス・ヴァチェクが素早く後輪に張り付き、力づくで飛び出しを阻止した。

むしろ、この流れに乗じたUAEチームエミレーツ・XRGの加速が、ピーダスン最大の危機だった。集団の中ほどまでずるずると後退してしまった。幸いにも、山頂は目の前。下りですぐに定位置を取り戻した。

「僕自身にも疑う気持ちがあった。事前にステージをチェックした時、僕にとっては限界ギリギリの山だと理解した。もしも上りで本気の戦いが巻き起こったら、僕は後方へと弾き飛ばされていただろう。下りで追いつくことが可能だったかもしれないけど、それでも上りでは脱落していたはずだ。今日の僕は、間違いなく、限界だった」(ピーダスン)

ピーダスンは、自身の限界ギリギリの山を仲間の助けを得つつ登頂

ピーダスン同様、一部のスプリンターは、勝負への望みを繋ぎ止めた。例えばコービン・ストロングは一旦は上りで完全に遅れながらも、下りと平地を経て、無事に80人ほどの集団へ復帰した。

チッコーネが列車牽引!

高い山から、海辺に下りてきた一行は、強い風とうねる道に極限までナーバスになった。すでに山道で山羊に襲われていた上に、残り2kmでは、黒犬が集団の目の前を横切るアクシデントさえ。

リーダーを何事もなくイタリアへ送り届けるために、あらゆる総合チームが、必死の位置取りを繰り広げた。終日コントロールに努めたボーラも、ピンク色のログリッチを連れて、巧みに最前列へと上がっていった。

それでもラスト3kmのアーチをくぐると、リドルの三両編成列車が、ごく自然に先頭へと走り出た。しかも普段なら集団スプリントに混ざることのないチッコーネが、残り800mまで、高速で先頭を牽引した。

「まさにチッコーネの性格や人柄を象徴する行動だよ。彼自身が別の野心を抱いているにもかかわらず、チームに貢献し、僕のリードアウトを務めてくれた。彼に恩返しできる日が楽しみでならない」(ピーダスン)

ピーダスンの区間優勝争いを最終発射台としてサポートしたヴァチェク

最終発射台の役目はヴァチェクが担った。背後ではピーダスンの後輪を巡って熾烈な争いが繰り広げられていたが、構わずぐんぐんとスピードを上げていく。

「ヴァチェクは本当に素晴らしい選手だし、彼には大きな未来が待っている。彼のような選手が僕のために走ってくれることを、心から誇りに思う」(ピーダスン)

第6ステージまではピンクでいたい

スプリント勝負を制し、区間勝利を飾ったピーダスン

残り200mで、ついにピーダスン自らがトップスピードに切り替えた。一瞬ストロングに並ばれかけたが、力強い伸びで突き放した。フィニッシュラインで雄叫びを上げ、チーム一丸となって1日中追いかけてきた2つの目標……区間2勝目と総合首位奪還とを一挙に達成した。

区間1位のボーナスタイム10秒を収集し、ログリッチとの関係は、1秒遅れから9秒リードへと逆転した。前夜たったの13.7km走っただけで脱いだマリア・ローザを、移動日を経た火曜日の第4ステージでは、ピーダスンは189kmにわたってたっぷりと満喫することになる。

「ロードステージで着られるのがとにかく嬉しい。第2ステージではそのために全力を尽くしたんだからね。今のところはいつまで守れるかは分からない。火曜日のスプリントも目標の一つだけど、たとえ火曜日にボーナスタイムがとれなくても、ジャージはキープできるはず。だから少なくとも水曜日までは守れるはず。いや、少なくとも木曜日までは着られたらいいな、と願っているんだ」(ピーダスン)

もちろんマリア・チクラミーノは、さらにしっかりと着込んだ。ヴァチェクのマリア・ビアンカは危なげなかったし、リドル・トレックはチーム総合首位の座もきっちり守った。

また総合勢は揃って無傷でステージを走り終えた。ログリッチは1つだけ順位を下げたが、総合ライバルとのタイム差自体には一切の変化はなかった。アルバニアでの3日間は華やかに幕を閉じた。機材は当夜に船で、選手たちは翌日・月曜日のお昼に飛行機で、対岸のイタリアへと渡る。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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