人気ランキング

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム一覧

サイクル ロードレース コラム 2025年5月11日

若きTT王者、21歳ターリングがジロで初めての栄冠!|ジロ・デ・イタリア2025 レースレポート:第2ステージ

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
  • Line
ジョシュア・ターリングが自身初のグランツール区間勝利を果たす

ジョシュア・ターリングが自身初のグランツール区間勝利を果たす

「自分に向いていた」と表現した通り、全長13.7kmの個人タイムトライアルを、ジョシュア・ターリングがトップタイムの16分07秒86で駆け抜けた。「必ずしも自分向きではなかった」と語るプリモシュ・ログリッチを、わずか0.24秒差でかわし、21歳で自身初のグランツール区間勝利に歓喜した。2位のログリッチは、総合ではマッズ・ピーダスンをほんの1秒上回り、2日目にして早くもマリア・ローザに袖を通した。

「本当に、本当に、スペシャルな勝利だ。自信にもなるし、次のTT機会が楽しみ。最高のスタートを切ることができたね」(ターリング)

自転車好きコミュニティサイト(無料)のお知らせ

  • 優勝者を予想する「サイクル誰クル?」のほか、メンバー同士が好きなテーマで話せる「トークルーム」、投稿された写真の中から辻啓氏が毎月優秀作品を数点セレクトする「写真部」、飯島誠氏によるオンラインライドイベントを開催する「宅トレ部」などコンテンツが盛りだくさん。

    サイクルビレッジ | J SPORTS【公式】

    優勝者を予想する「サイクル誰クル?」のほか、メンバー同士が好きなテーマで話せる「トークルーム」、投稿された写真の中から辻啓氏が毎月優秀作品を数点セレクトする「写真部」、飯島誠氏によるオンラインライドイベントを開催する「宅トレ部」などコンテンツが盛りだくさん。

最初から最後まで完璧にコントロール

平地あり、上りあり、下りあり。アルバニアの首都ティラーナに描かれた短い市街地コースには、直線も多かったが、同時に全部で13のコーナーも待ち受けていた。このスピードとテクニックを要するコースを、独走スペシャリストのターリングは、誰よりも速い時速50.958km/hで攻略した。

「シーズン最初の目標だったクラシックを終えた後、すぐに今日のステージに向けて気持ちを切り替えた。このTTを楽しみにしていたんだ。だってコーナーが多くて、難しいコースは、まさしく僕向きだったから」(ターリング)

スタートから8km、4級山岳の頂上に設けられた中間計測地点では、遅れを最小限に食い止めた。首位のタイムを叩き出したログリッチに対して、5秒04遅れの5位通過。

一方で8km地点からフィニッシュまでの5.7kmの区間に関しては、実は、同じイギリス・トラック代表の先輩イーサン・ヘイターが最速タイムを記録している。ただターリングは0.45秒差の2位で、きっちりとまとめ上げた。

TTのスペシャリスト・ターリングは得意なコースで実力を発揮

TTのスペシャリスト・ターリングは得意なコースで実力を発揮

逆にログリッチは後半だけなら5秒73遅れ。また中間計測でログリッチとコンマ差のセンセーションを作り出したマティアス・ヴァチェクは、やはりこの下りと平地で構成された第2パートでタイムを失っている。

「序盤はスムーズにこなせたし、上りはなかなかハードだったけど、上手くコントロールできた。最終盤は、下見した時の感触よりも、はるかに難しいように感じた。だからしっかり意識しながら走ったけど、ものすごくキツかった」(ターリング)

J SPORTS オンデマンド番組情報

ジロ最年少TT勝利、若き才能が開花

全体の124番目に出走したターリングは、暫定首位でフィニッシュラインに飛び込んだ後、1時間半近くもホットシートで待たされた。ログリッチのタイムには、最後までハラハラさせられた。

「ログリッチは間違いなく速いだろうと思っていたし、上りの頂上では、明らかに僕の予想タイムを上回っていた。だからフィニッシュ地点で待っているのは、本当にストレスがたまった」(ターリング)

最後から2番目に出走台に立ったワウト・ファンアールトのことも、大いに危険視していたはずだ。ところが昨夏のパリ五輪個人TT銅メダリストは――2秒差で4位に泣いたのは他でもないターリング――、どうやら本調子ではなかった。「パワーが足りなかった」と、マリア・ローザまでの4秒差を埋めるどころか、逆に32秒差に遠ざかってしまった。

そして最終走者のピーダスンが、11秒83遅れでラインを越えた瞬間、ついにターリングの優勝が確定した。

ベテラン・ログリッチの快走に最後までハラハラしたというターリング

ベテラン・ログリッチの快走に最後までハラハラしたというターリング

ジュニアでTT世界チャンピオンになった翌年の2023年夏に、シニアの世界選手権TTで3位に飛び込んだターリングは、21歳2ヶ月25日で、ジロ史上最も若いタイムトライアル区間の勝者となった。五輪と世界選のTTタイトルを併せ持つあのレムコ・エヴェネプール(同じくジュニア世界TT制覇翌年にシニア世界TT2位)の、21歳5か月を上回る、早熟な記録だ。

2023年大会のエヴェネプールがTT区間勝利と同時にマリア・ローザとマリア・ビアンカに身を包んだのだとしたら、残念ながらターリングに、特別なジャージに着替える機会は与えられなかった。前日の第1ステージで、苦しむチームリーダーのテイメン・アレンスマンと共に、早くも1分半以上を失っていたせいだ。総合のピンクはログリッチが、新人賞の白はヴァチェクがまとった。

「昨日だって僕は全力だったからこそ、あの結果を得られたわけだし、僕らは心から満足しているんだ」(ターリング)

明日のピンクと、ローマのピンク

ターリングとログリッチの区間優勝を巡るバトルも熱かったが、ログリッチとピーダスンのジャージ争奪戦もまた熾烈だった。もちろんグランツール総合5勝のログリッチは、今区間の終わりではなく、ただ3週間後にマリア・ローザを着ていることだけを考えていたという。

マリア・ローザを守るべく全力で挑むピーダスン

マリア・ローザを守るべく全力で挑むピーダスン

「できるだけタイムを失うことなく走り切れたらと考えていた。自分の好きなタイプのTTではなかったから、やるべきことをやるしかなかった。ひどく大変なレースだった。だから結果には驚いているし、本当に喜んでいる」(ログリッチ)

一方で生まれて初めてグランツール総合リーダージャージを着用したピーダスンは、とにかく1日でも長くマリア・ローザを守ろうと、無我夢中で走った。

前日のステージ優勝でピーダスンにはボーナスタイム10秒分の余裕があったが、すでに中間計測で、総合リードは0.13秒にまで減っていた(ログリッチから9.87秒遅れで通過)。決して最後まで諦めなかった。24時間前にすべてを蹴散らした最終ストレートでは、まるでスプリントのように、全力を振り絞った。結果は区間7位。母国デンマークで行われた2022年ツール初日TT(13.2km)の6位に次ぐ、スプリンターとしては誇るべき成績だった。

ただしストップウォッチは非情だ。東京五輪TT金メダリスト、ログリッチに対する遅れは11秒59。つまり総合成績には、「+1秒」と記された。ピーダスンはたった13.7kmでマリア・ローザを脱ぎ、翌第3ステージは代わりにマリア・チクラミーノで走る。

「素晴らしい奮闘だったかもしれないけど、僕は少なくともジャージを守るために戦った。だけど今日はそれが不可能だった。だから100%ハッピーとは言えない。でも、僕らはいまだ、挽回できる状況にある。ジャージを取り戻すために明日は全力を尽くす」(ピーダスン)

「いつが最後かなんて、決して分からない」

0.24秒差で区間勝利を逃し、1秒差で総合首位に立ったログリッチにとっては、人生8度目のマリア・ローザ表彰台。ちなみに前回2023年は、最終日前日に、ようやくピンクジャージを獲得した。最終日の1日だけだったけれど、ジロ総合覇者として、ローマをマリア・ローザ姿で駆け抜けた。

「今年もジャージのために戦うつもりだし、ローマでそれを手にしていたいと夢見てる。ただ結果うんぬんはもはや気にしていない。細かいことにストレスを感じる必要はないと言われてるんだ。重要なのは僕の体調がよく、調子も上々なこと」(ログリッチ)

ピーダスンのタイムを僅かに上回りログリッチが総合首位に

ピーダスンのタイムを僅かに上回りログリッチが総合首位に

総合首位の座をこのまま守っていくかどうかについては、ログリッチは明言を避ける。「どうやらマッズは絶好調だから」と、ピーダスンがマリア・ローザを取り戻しに来るだろうことは理解しているし、ジャージを失う苦しさも、ログリッチは身を持って知っている。

「一日一日をこなしていく。そして、ただ、楽しむだけ。いつが最後になるのかなんて、決して分からないんだから」(ログリッチ)

区間5位から7位まではリドル・トレックが並んだ。区間3位にジェイ・ヴァイン、8位にブランドン・マクナルティ、10位フアン・アユソと、UAEチームエミレーツ・XRGもトップ10に3選手を送り込んだ。「レースの展開次第でエースを決める」と噂のUAEは、総合でもマクナルティ4位・12秒遅れ、アユソ5位・16秒遅れ、イサーク・デルトロ6位・17秒遅れと好位置に実力者3人が並び、一方でアダム・イェーツは14位・36秒遅れと少々遅れを取った。

アントニオ・ティベーリはログリッチに対して25秒遅れ、サイモン・イェーツは33秒遅れ、リチャル・カラパスは37秒遅れ、ジュリオ・チッコーネは42秒遅れ。グランツール2日目にして、総合有力勢に早くも小さくないタイム差が生じたことになる。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ