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若きTT王者、21歳ターリングがジロで初めての栄冠!|ジロ・デ・イタリア2025 レースレポート:第2ステージ
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかジョシュア・ターリングが自身初のグランツール区間勝利を果たす
「自分に向いていた」と表現した通り、全長13.7kmの個人タイムトライアルを、ジョシュア・ターリングがトップタイムの16分07秒86で駆け抜けた。「必ずしも自分向きではなかった」と語るプリモシュ・ログリッチを、わずか0.24秒差でかわし、21歳で自身初のグランツール区間勝利に歓喜した。2位のログリッチは、総合ではマッズ・ピーダスンをほんの1秒上回り、2日目にして早くもマリア・ローザに袖を通した。
「本当に、本当に、スペシャルな勝利だ。自信にもなるし、次のTT機会が楽しみ。最高のスタートを切ることができたね」(ターリング)
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最初から最後まで完璧にコントロール
平地あり、上りあり、下りあり。アルバニアの首都ティラーナに描かれた短い市街地コースには、直線も多かったが、同時に全部で13のコーナーも待ち受けていた。このスピードとテクニックを要するコースを、独走スペシャリストのターリングは、誰よりも速い時速50.958km/hで攻略した。
「シーズン最初の目標だったクラシックを終えた後、すぐに今日のステージに向けて気持ちを切り替えた。このTTを楽しみにしていたんだ。だってコーナーが多くて、難しいコースは、まさしく僕向きだったから」(ターリング)
スタートから8km、4級山岳の頂上に設けられた中間計測地点では、遅れを最小限に食い止めた。首位のタイムを叩き出したログリッチに対して、5秒04遅れの5位通過。
一方で8km地点からフィニッシュまでの5.7kmの区間に関しては、実は、同じイギリス・トラック代表の先輩イーサン・ヘイターが最速タイムを記録している。ただターリングは0.45秒差の2位で、きっちりとまとめ上げた。
TTのスペシャリスト・ターリングは得意なコースで実力を発揮
逆にログリッチは後半だけなら5秒73遅れ。また中間計測でログリッチとコンマ差のセンセーションを作り出したマティアス・ヴァチェクは、やはりこの下りと平地で構成された第2パートでタイムを失っている。
「序盤はスムーズにこなせたし、上りはなかなかハードだったけど、上手くコントロールできた。最終盤は、下見した時の感触よりも、はるかに難しいように感じた。だからしっかり意識しながら走ったけど、ものすごくキツかった」(ターリング)
ジロ最年少TT勝利、若き才能が開花
全体の124番目に出走したターリングは、暫定首位でフィニッシュラインに飛び込んだ後、1時間半近くもホットシートで待たされた。ログリッチのタイムには、最後までハラハラさせられた。
「ログリッチは間違いなく速いだろうと思っていたし、上りの頂上では、明らかに僕の予想タイムを上回っていた。だからフィニッシュ地点で待っているのは、本当にストレスがたまった」(ターリング)
最後から2番目に出走台に立ったワウト・ファンアールトのことも、大いに危険視していたはずだ。ところが昨夏のパリ五輪個人TT銅メダリストは――2秒差で4位に泣いたのは他でもないターリング――、どうやら本調子ではなかった。「パワーが足りなかった」と、マリア・ローザまでの4秒差を埋めるどころか、逆に32秒差に遠ざかってしまった。
そして最終走者のピーダスンが、11秒83遅れでラインを越えた瞬間、ついにターリングの優勝が確定した。
ベテラン・ログリッチの快走に最後までハラハラしたというターリング
ジュニアでTT世界チャンピオンになった翌年の2023年夏に、シニアの世界選手権TTで3位に飛び込んだターリングは、21歳2ヶ月25日で、ジロ史上最も若いタイムトライアル区間の勝者となった。五輪と世界選のTTタイトルを併せ持つあのレムコ・エヴェネプール(同じくジュニア世界TT制覇翌年にシニア世界TT2位)の、21歳5か月を上回る、早熟な記録だ。
2023年大会のエヴェネプールがTT区間勝利と同時にマリア・ローザとマリア・ビアンカに身を包んだのだとしたら、残念ながらターリングに、特別なジャージに着替える機会は与えられなかった。前日の第1ステージで、苦しむチームリーダーのテイメン・アレンスマンと共に、早くも1分半以上を失っていたせいだ。総合のピンクはログリッチが、新人賞の白はヴァチェクがまとった。
「昨日だって僕は全力だったからこそ、あの結果を得られたわけだし、僕らは心から満足しているんだ」(ターリング)
明日のピンクと、ローマのピンク
ターリングとログリッチの区間優勝を巡るバトルも熱かったが、ログリッチとピーダスンのジャージ争奪戦もまた熾烈だった。もちろんグランツール総合5勝のログリッチは、今区間の終わりではなく、ただ3週間後にマリア・ローザを着ていることだけを考えていたという。
マリア・ローザを守るべく全力で挑むピーダスン
「できるだけタイムを失うことなく走り切れたらと考えていた。自分の好きなタイプのTTではなかったから、やるべきことをやるしかなかった。ひどく大変なレースだった。だから結果には驚いているし、本当に喜んでいる」(ログリッチ)
一方で生まれて初めてグランツール総合リーダージャージを着用したピーダスンは、とにかく1日でも長くマリア・ローザを守ろうと、無我夢中で走った。
前日のステージ優勝でピーダスンにはボーナスタイム10秒分の余裕があったが、すでに中間計測で、総合リードは0.13秒にまで減っていた(ログリッチから9.87秒遅れで通過)。決して最後まで諦めなかった。24時間前にすべてを蹴散らした最終ストレートでは、まるでスプリントのように、全力を振り絞った。結果は区間7位。母国デンマークで行われた2022年ツール初日TT(13.2km)の6位に次ぐ、スプリンターとしては誇るべき成績だった。
ただしストップウォッチは非情だ。東京五輪TT金メダリスト、ログリッチに対する遅れは11秒59。つまり総合成績には、「+1秒」と記された。ピーダスンはたった13.7kmでマリア・ローザを脱ぎ、翌第3ステージは代わりにマリア・チクラミーノで走る。
「素晴らしい奮闘だったかもしれないけど、僕は少なくともジャージを守るために戦った。だけど今日はそれが不可能だった。だから100%ハッピーとは言えない。でも、僕らはいまだ、挽回できる状況にある。ジャージを取り戻すために明日は全力を尽くす」(ピーダスン)
「いつが最後かなんて、決して分からない」
0.24秒差で区間勝利を逃し、1秒差で総合首位に立ったログリッチにとっては、人生8度目のマリア・ローザ表彰台。ちなみに前回2023年は、最終日前日に、ようやくピンクジャージを獲得した。最終日の1日だけだったけれど、ジロ総合覇者として、ローマをマリア・ローザ姿で駆け抜けた。
「今年もジャージのために戦うつもりだし、ローマでそれを手にしていたいと夢見てる。ただ結果うんぬんはもはや気にしていない。細かいことにストレスを感じる必要はないと言われてるんだ。重要なのは僕の体調がよく、調子も上々なこと」(ログリッチ)
ピーダスンのタイムを僅かに上回りログリッチが総合首位に
総合首位の座をこのまま守っていくかどうかについては、ログリッチは明言を避ける。「どうやらマッズは絶好調だから」と、ピーダスンがマリア・ローザを取り戻しに来るだろうことは理解しているし、ジャージを失う苦しさも、ログリッチは身を持って知っている。
「一日一日をこなしていく。そして、ただ、楽しむだけ。いつが最後になるのかなんて、決して分からないんだから」(ログリッチ)
区間5位から7位まではリドル・トレックが並んだ。区間3位にジェイ・ヴァイン、8位にブランドン・マクナルティ、10位フアン・アユソと、UAEチームエミレーツ・XRGもトップ10に3選手を送り込んだ。「レースの展開次第でエースを決める」と噂のUAEは、総合でもマクナルティ4位・12秒遅れ、アユソ5位・16秒遅れ、イサーク・デルトロ6位・17秒遅れと好位置に実力者3人が並び、一方でアダム・イェーツは14位・36秒遅れと少々遅れを取った。
アントニオ・ティベーリはログリッチに対して25秒遅れ、サイモン・イェーツは33秒遅れ、リチャル・カラパスは37秒遅れ、ジュリオ・チッコーネは42秒遅れ。グランツール2日目にして、総合有力勢に早くも小さくないタイム差が生じたことになる。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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