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サイクル ロードレース コラム 2017年7月21日

喜びと悲しみがないまぜになった日々

ツール・ド・フランス by 寺尾 真紀
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革命記念日の翌日、第14ステージは、ブラニャックからロデズへの起伏のあるステージ。パンチャー向けのこのステージでは、マイヨ・ヴェールのキッテルが中間スプリントポイント奪取に出た。アップダウンが始まると、そこからはBMCとチーム サンウェブが中心にレースを牽引していく。風と分断に翻弄されたレースの最終盤は、2015年にサガンとアーヴェルマートが接戦を演じたサン・ピエール坂。9.6%の急こう配の手前で、まずベルギー・チャンピオンのオリヴァー・ネイサンが飛び出し、フィリップ・ジルベールが続く。すかさずヴァンアーヴェルマートが飛び出し、力強く先行する。しかし、右後方から加速したマシューズがアーヴェルマートの前に回り込み、そのまま先頭でフィニッシュラインを越えた。

ゴール直後、うれしさで何度もこぶしを突き出し、叫び声を上げたマシューズは、インタビューでこんな言葉を残した。

「これだけ時間や努力や気持ちを注いでいるから、勝ちたいという気持ちが強くなりすぎて、プレッシャーになってしまう。そうすると、ミスをしてしまう。そういう悪循環があったんだ。この勝利は、そのプレッシャーをようやく取り除いてくれると思う」

もう一つのうれしい顔は、マイヨ・ジョーヌを取り戻したフルームだった。フィナーレでアルが遅れたのを見て取り、無我夢中でラインまでもがいたのだ。

「無線から、『行け、行け、行け! そのままゴールまで行くんだ!(Go, go, go, keep pushing all the way to the line!!)』というクヴィアトコウスキーの叫び声が聞こえてきた。その声が、出せるだけの力を出させてくれたんだ」

ポディウムのフルームの笑顔は、普段のおすまし笑顔ではなく、顔がまん丸になって目がなくなる、特別なときの笑顔だった。

休息日ではないのに、チームバスエリアには休息日のようなリラックスした雰囲気が漂っていた。多くのチームホテルが自転車で帰れる至近距離だったから、それでかもしれない。翌日の山岳を乗り越えれば休息日、という安心感がどこかにあるのかもしれない。



チームスカイのスタッフは、朗らかな笑顔で何か冗談を言い合っている。
チームサンウェブの面々はみんなで連れだって自転車に乗り、チームバスをあとにした。ジョン・デゲンコルプは、トレックのチームバスの階段に座って、インタビューを受けている。質問は聞こえなかったが、彼の答えだけが聞こえてきた。

「いつか勝てると信じて、一日、一日やっていくしかない」

そう、勝ちたい気持ちは誰もが同じだ。

喜びと悲しみがないまぜになった毎日が、あと7日、まだパリまで続いていくのだ。

☐ ツール・ド・フランス 2017
ツール・ド・フランス2017 7月1日(土)~7月23日(日)
全21ステージ独占生中継!

代替画像

寺尾 真紀

東京生まれ。オックスフォード大学クライストチャーチ・カレッジ卒業。実験心理学専攻。デンマーク大使館在籍中、2010年春のティレーノ・アドリアティコからロードレースの取材をスタートした。ツールはこれまで5回取材を行っている。UCI選手代理人資格保持。趣味は読書。Twitter @makiterao

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