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野球 コラム 2025年6月18日

投手・大谷翔平は燃えていた

MLBコラム by 山田 結軌
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試合直前、ブルペンで国家斉唱を聞く大谷

右腕を掲げ、叫んだ。

大谷翔平投手(30)は、6月16日のパドレス戦で663日ぶりに投手復帰。1回無死1・3塁でマチャドは浅めのセンターフライを放った。パヘスが本塁へ、ワンバウンドで好返球。

アウトかセーフか。タイミングはわずかに三走・タティスが滑り込んだ左足が先にホームベースをかすめた。だがその瞬間、大谷はアウトのジェスチャーで三塁側ダッグアウトにチャレンジを要求した。勝負に集中し、闘争心が燃えたぎった表情だった。

「そうですね。野手よりは緊張しました」

試合後の会見。米メディアから緊張したか?と聞かれると、そう答えた。2023年8月23日以来となる、メジャーマウンド。1イニングとはいえ、チームの勝敗への責任が大きい先発投手を務める。

しかも相手は同地区最大のライバル、パドレス。1番からタティス、アラエス、マチャドらオールスター級の選手が並ぶ打線は、大谷が仮に万全な状態だとしても手強いことに変わりない。

「なるべく95、96(マイル=約153~154.5キロ)くらい(に力をセーブして)投げたいな、とは思っていたんですけど、やっぱり試合のレベルでマウンドに上がると、(球速が)上がってしまう」。

アドレナリンで自然と出力は上がり、球速はMAXで100.2マイル(161.3キロ)をマーク。投手・大谷は、まるで別人格。打席に向かう際は、にこやかに球審や相手ベンチにあいさつをするが、表情からは緊張感と高まる気合いが読み取れた。

大谷の復帰をチーム全体でサポートした。ブルペンには山本由伸(26)も激励に訪れて、ハイタッチで送り出した。1回の投球が始まると、レフトポール横のブルペンではリリーフ投手陣がフェンスに張り付いて、エールを送った。

先発前にブルペン投球する大谷

1回の投球が終わると、その裏の攻撃では「1番」に入っているため、ベンチに座らずダッグアウト前で打撃用のプロテクターを装着して、打席に向かった。

山本がドリンクを入れたカップを持って、水分補給を促した。1イニングで28球を要し、一塁のベースカバーやホーム後ろの送球カバーにも必死に走った。

「本当に感謝しかないというか、ここまで2回目の手術で執刀医の方もそうですし、トレーナーの方もそうですし、ずっとサポートしてもらって、ここまでこられたので今日は結果関係なく、そういう人たちにすごく感謝の気持ちというか、それをマウンドで出せたのがよかったと思います」

メジャーでの二刀流、第2章。前半戦では、登板後の回復が順調ならば週に1度の先発マウンドを予定し、球数やイニング数を増やしていく。

もう1度、パワーピッチャーとしてメジャーのマウンドに戻る。二刀流をやる。それが大谷翔平のプライドであり、アイデンティティだ。完全復活へ、確かな第一歩を踏み出した。

文/写真:山田結軌(MLBジャーナリスト)

山田結軌(やまだ・ゆうき)

山田 結軌

1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツに2007年4月入社、阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。2025年2月に18年間務めたサンケイスポーツを退社しフリーに転身。

X(旧:Twitter)
@YamadaMLB

Instagram
yukiyamada_mlb

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