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野球 コラム 2019年1月22日

球場トレンドの歴史は繰り返す「人工芝が再流行?多目的化も?」

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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野球ファンの琴線に触れる佳作を多く残したW・P・キンセラの短編のひとつに、「天然芝の歓び」がある。1981年シーズン中の選手会ストライキ期間に、ファンが毎晩球場にこっそり侵入し少しずつ人工芝を剥がしてしまう。そして、長かったストが終わり、選手と観客が戻ってくると、フィールドは美しい天然芝に変わっていた、といういわば野球のおとぎ話だ。

来年オープンするレンジャーズの新球場「グローブ・ライフ・フィールド」(今季までの現球場はグローブ・ライフ・パーク。ネーミングライツ保有企業が同じためだが、チトややこしい)には、人工芝が敷かれる可能性があるようだ。すでに多くのメディアが伝えている。

また、ダイヤモンドバックスの本拠地チェイス・フィールドも、今季からその天然芝を人工芝に変更することが決まっている。この2球場に共通しているのは開閉式の屋根を持つということだ。人工芝採用(およびその可能性)の要因はここにある。

グローブ・ライフ・フィールドは、1994年にオープンした現球場(当時の名称はザ・ボールパーク・イン・アーリントン)のすぐ隣に建設中だ。まだ四半世紀しか経っていない球場に見切りをつけるのは何とももったいない印象があるが、これはファンが求める快適性がこの間さらに高まったためだ。真夏には灼熱地獄となるテキサスの気候に対応するには、エアコンディショニングとそれを可能にするルーフが不可避ということらしい。

そして、鋼鉄の格納式屋根を支えるにはノッポ構造は不利だ。おそらくそのためだろう。新球場のフィールド面はルーフまでの距離を確保するため、地面から70フィート(約21メートル)も掘り下げられた位置にあるという。ちなみに現球場のフィールドは地面から50フィート(約15メートル)だ。ここで問題が出てくる。地面より低くなればなるほど、日照面積が限られてくるのだ。これは天然芝の維持には深刻な問題だ。

チェイス・フィールドの場合も開閉式ドームを採用している理由は厳しい暑さ対策であることは同様だが、人工芝化には少々異なる事情も背後にあるようだ。

この球場も、芝の育成のために昼間はルーフを全開し試合前に閉めているのだが、真夏は殺人的暑さのフェニックスではルーフを閉めても館内を短時間で一気に冷やすのは困難で「お客様に不快な思いをさせてしまったこともある」からだという。もちろん、CS はとても大事なのだけれど、その急速冷却にはものスゴイ消費電力が必要なはずで、そのコスト対策という面もあるかもしれない。だとすると、同様に熱(と雨もだが)対策のための開閉式球場のマーリンズ・パークも同様の悩みを抱えているかもしれない。

また、昨年12月に計画がぽっしゃったことをお伝えしたレイズの新球場プランでも、屋根付き(ここは開かない)のため人工芝の採用が前提だった。

人工芝は、フットボールと兼用の多目的スタジアムの建設ラッシュにより1970年代に普及した。一時は先進性の代名詞のようにもてはやされたが、1992年のオリオールパーク・アット・カムデンヤーズのオープンが先鞭を付けた新古典式デザインの球場建設ブームによりどんどん減少し、いまではレイズのトロピカーナ・フィールドとブルージェイズのロジャースセンターだけとなった。しかし、品質の改良もあり再び復権し始めるか?という感じだ。

球場トレンドの「回帰」にはもうひとつある。それは多目的化だ。

1970年代の円形人工芝球場はフットボールとの兼用だったが、新古典主義のそれは野球専用がウリだった。「効率よりベースボール本来の楽しみ重視」ということで、スタジアムからボールパークへの転換だった。しかし、ここに来て違う意味で多目的化が進んでいる。球場にホテルや商業施設を併設させて、試合のない日もそのエリアでお金が落ちる運営形態が注目され始めたのだ。ボールパークは「モールパーク」化しつつあるのだ。

2017年オープンのブレーブスの新本拠地サントラスト・パークはその典型だ。2012年開場のマーリンズパークの場合も、チームの低迷による不入りで未だに実現していないが、隣接するパーキングビルには多くの商業施設を誘致する計画だった。また、ブッシュ・スタジアムの隣地(前球場が建っていた)にも2014年に「ベースボール・ビレッジ」という名の施設がオープンした。そして、結局はお蔵入りとなったが、レイズの新球場プランも同様だった。

確かに、フットボールとの本拠地球場の共用は、NFLのレイダースがアスレチックスと共用のオークランド・コロシアムからラスベガスに2020年までに完成する新球場に移転することで皆無となるが、以前とは異なる形態での野球場の多目的化は進んでいるのだ。やはり、歴史は繰り返す、ということか。

代替画像

豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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