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東福岡
準々決勝進出をかけた3回戦。黒のタオルを掲げる東福岡と、水色のタオルを掲げる清風の応援団。スタンドからの大声援が響く中、第1セットは激闘が繰り広げられた。
インターハイ2026 全国高等学校総合体育大会バレーボール競技大会
先行したのは清風だったが、東福岡は5-7と2点を追う状況で矢島航晴(3年)に代わり、池田海夢(3年)を投入。対戦相手や自チームのローテーションに応じて、様々な布陣で臨む東福岡にとっては日常の策ではあるのだが、これが奏功し8-7と逆転。ライトから放たれた比嘉晃跳主将(3年)の鋭いスパイクが、この試合で初のリードをもたらした。
日本代表でも活躍する永露元稀(ウルフドッグス名古屋)や、金子聖輝、柳北悠李(ともに広島サンダーズ)など、SVリーグにも多くのOBがいる東福岡で背番号「1」を背負うキャプテン――。
比嘉晃跳主将(東福岡)
プレーだけでなく、常勝軍団の精神的支柱でもある主将がさすがの1本、と唸らせたが、実は比嘉の状態は万全と呼ぶには程遠い。むしろそれどころから「6割の状態だった」と明かしたのは、藤元聡一監督だ。
「足首を骨折して、6月3日に手術して、7月5日に退院したばかり。入院中からとにかくありとあらゆるリハビリを、専門家の指導を仰いで、それこそ200種類近く様々なリハビリを試してきましたが、やはりこのタイミングではまだ届かなかった。
もちろん、選手の将来があることですから、本来ならばあと1か月ぐらいはゆっくりと時間をかけてリハビリをさせたかったのですが、状態もよくなり、医師からもできる、と許可が下りた。本人は出たいという気持ちを強く持っていたので、本当にちょっとずつ、全く動かないところから少しずつ可動域を広げて、ここまでたどり着きましたが、まだまだ厳しいというのが現実でした」
予選リーグから決勝トーナメントまで、真夏の大会では考えられないダブルヘッダーも含めた4日間で戦うというハードスケジュールを強いられる中、前日(6日)の2回戦では、九州大会の再戦となる大村工業(長崎)と対戦した。激闘、熱闘の末、フルセットで東福岡が勝利したが、当然ながら身体に残るダメージは大きい。
ブロックに飛ぶ比嘉晃跳主将
翌朝9時半から始まる3回戦でも、サーブレシーブやスパイク、一見すれば比嘉が普段通りのプレーをしているように見えても、藤元監督の目には「6割」と言うように、普段とは大きく違っていた。そして序盤に逆転した清風との第1セットでも、中盤、終盤に連続失点を喫し、競り合った末に23-25で失った。
「あのセットを取れなかったのが大きかった」と言いながらも、藤元監督は比嘉の状態がよくないことを見抜いていた。
「このまま、ごまかしたとしても次のセットは厳しい。(状態が)悪いだろうな、と。インターハイ予選の時はまだ(骨折は)わからなかったのですが、その時点で負傷して痛みはあったので3割程度。打数も3本しかなかったので、意地だけで勝った。でも本番ではそうはいきませんでした」
接戦を落としたことでダメージはさらに大きくのしかかり、第2セットは14-25、セットカウント0-2で敗れ、東福岡の夏が終わった。
インターハイ、春高を合わせれば数多くの優勝回数があるだけでなく、ベスト4以上への進出回数も多い東福岡は、『強豪』や『常勝軍団』と呼ばれるチームだ。世代を代表するエースを擁するわけではなくても、それぞれが役割に応じたポジションを担い、時にトリッキーで変則的な戦術も組み込みながら相手を撹乱するが、自チームがすべきことにブレはない。
個性的な戦い方は対戦する相手からは「本当に厄介で、できれば対戦したくない相手」と称賛も含めて言わしめるチームであるだけでなく、2回戦の大村工業戦のように、見る者も巻き込むような気迫と熱のこもったプレーで勝利する。抜群で独特の勝負強さも併せ持つ。
昨年のインターハイでも準決勝進出を果たし、優勝した鎮西をフルセットまで追い込んだ。だが、それから約3か月後、春高出場をかけた福岡大会では決勝で福岡大大濠に敗れ、春高出場を逃し、新チームになってからの新人大会でも敗れた。
しかもエースで主将、チームにとってまぎれもなく軸であり柱となる選手の負傷も重なる。まさに危機的状況である中、敗れた悔しさをそのままで終わらせるのではなく、いかに糧としたのか。藤元監督が選手に対して求めたものは、これまでと変わらず一貫していた。
春高に向け、リスタートする東福岡
「百聞は一見に如かず、ではないですが、これまで先輩たちの覚悟や勝つ姿を見て来た。私が生徒たちに対して『こうやって取り組めば魂が宿るんだ』と口で言ってもなかなか説明できるものではないですし、練習も1日3時間と限られている。その中で1分1秒に対していかに頭を使って、心の使い方をして、隙のない行動、振る舞いができるか。結局は、その積み重ねがバレーボールにもつながるものだと思うんです」
比嘉が手術、リハビリでチームを離れる間、2枚エースの吉塚栄大(3年)に加え、藤元監督が攻撃の柱として成長を求めたのは、ミドルブロッカーでブロード攻撃を得意とする矢島だったが、なかなか調子が上がらず、それも「今回の結果につながった1つの要因だった」という。
インターハイは終わったが、また春高がやってくる。1年前と同じ悔しさを味わわないために、ここから何ができるか。試合直後、藤元監督は選手を集め檄を飛ばした。
「富士山登頂にたとえて、嵐が来ても、吹雪が来ても、岩場に出くわしても大丈夫な靴や防寒具をどれだけ持っていたつもりでも、登頂する直前に『あ、この靴じゃダメだった』では準備をしていたとは言い切れないんです。今まで優勝、ベスト4になった時、目標に届いた時と比べて今回は準備不足が否めなかった。だから、ここから何とかしていかなければいけないんだ、と選手たちには伝えました」
その言葉に含まれた思いをどう受け取ったのか。比嘉はこう言った。
「本気さが足りなかった、と。その言葉を聞いて、僕も手術をしてから入院していた間にもっとできたことがあったと思うし、もっと本気でやっておけばよかった、と後悔した。ライト側からの攻撃に関しては少し通せたし、先生からも『自信を持て』と言われたんですけど、勝つためにはライトだけじゃ通用しないので、バックアタックもレフトも、どこからでも打てるようにならないといけない。
これからの1日、1分、1秒、すべての時を日本一になるためにどうやってつなげていくのか。どういう選択をしていくのか。もっと必死に、本気で日本一になるために。また全員で1からつくり直したいです」
インターハイを終え、夏が過ぎれば秋が来て、またあっという間に次の戦いが待っている。万全の準備をして山を登る、その日に向けて。明日からではなく、今からが東福岡の新たな始まりだ。
文/写真:田中夕子
田中 夕子
神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。WEB媒体、スポーツ専門誌を中心に寄稿し、著書に「日本男子バレー 勇者たちの奇跡」(文藝春秋)、「高校バレーは頭脳が9割」(日本文化出版)。「夢を泳ぐ」「頂を目指して」(徳間書店)、「絆があれば何度でもやり直せる」、凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること」(カンゼン)など、指導者、アスリートの著書では構成を担当
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