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バレーボール コラム 2026年8月6日

初の全国大会の舞台。武相の歓喜、首里の涙。インターハイ男子バレー

バレーボールコラム by 田中 夕子
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初勝利を挙げた武相(神奈川)

全国大会初出場。予選リーグ初戦に勝利し、決勝トーナメント進出を果たした武相(神奈川)の西村大馳主将(3年)は声を弾ませた。

「会場の雰囲気や、相手の応援の大きさ。県大会とは全然違って、呼吸ができないぐらいでした。ここでできるんだ、とワクワクしました」

インターハイ2026 全国高等学校総合体育大会バレーボール競技大会

中学、高校の一貫指導を掲げ、かつて釜利谷高校で全国制覇を成し遂げ、順天堂大学も率いた名将、蔦宗浩二前監督が、「6年計画」での強化、育成に着手してきた。先に中学が全国出場を果たし、少しずつ成果が形になって表れているのと実感し始めた昨年12月21日に蔦宗前監督が急逝。蔦宗前監督の順天堂大学時代の教え子である、細中久利寿コーチが新監督に就任。神奈川大会を制し、初の全国大会への切符を手に入れた。

細中監督(武相)

細中監督は、2014年から17年までウルフドッグス名古屋の前身である豊田合成トレフェルサに在籍。英会話教室の統括や小学校教諭など、さまざまな職を経てコーチに就任したユニークな経歴でもあるが、「指導自体や蔦宗先生が取り組んできた強化と育成を合わせた一貫指導は変わらない」と言う通り、バレーボールのスキル練習に加え、身体づくりに重きを置いたウェイトトレーニングの導入。食事や睡眠の重要性も選手に説き、練習時間も「学校が休みの日も練習試合や試合がなければ、基本的には半日で終わるようにして、身体を休める重要性も選手に伝えてきた」と言う。

インターハイ2026 全国高等学校総合体育大会バレーボール競技大会

中高一貫で強化を打ち出してから入学を希望する選手たちの中には、将来SVリーグでプレーしたいという選手もいるが、指導者を希望する選手も多数を占める。そのためにも「技術はもちろん、身体づくりの基礎から学ぶことは大切」と細中監督は言い、並行してスキル練習の中でも「考える」ことを求め、全体練習後の自主練習では創意工夫を求めてきた、と微笑を浮かべる。

「スパイク練習をするにしても、単純にトスを上げて打つような練習は禁止。事前に『こういうプレーができるようになりたいからこの練習をしたい』と考えたメニューを指導者に提出するのが決まりなので、こちらが思いもしないような練習を考えてくることもあるし、試合でも練習では一度も見たことがないような攻撃を出してくるので、僕も見ていて面白いです」

中高一貫とはいえ、すべてを内部進学に限るわけではない。別の中学から高校で入学してくる選手もいるが、細中監督は「むしろ外から入ってくる選手たちの爆発力や自由さが融合して、さらに伸びる。いいことしかない」と胸を張る。

ゲームキャプテンの熊田吏稀(武相)

全国初舞台となったインターハイの初戦でも、ツーセッターでトスを上げ、スパイクも打つゲームキャプテンの熊田吏稀(2年)は武相中から高校に上がったが、エースとして得点を量産した大津涼玖(2年)は白山中から武相高校を選び進学した。

「融合」という面で言えば、選手たちだけでなく蔦宗前監督の教えと、細中監督からの指導もまさに『融合』していると熊田が明かす。

「蔦宗先生には攻撃力を上げるためには、シンプルに『とにかく打て』と教わってきました。久利寿先生も同じように打つことの大事さを言われますが、プラスして、『個々の能力を極めろ』と細かいところも指摘される。全国大会に初めて出場して、どちらも大事だな、と実感できたので、これからはもっと思いきり打つことも大事にしながら、能力も極めて、全国で上位に勝ち進むチームになることが目標です」

全国大会に出場するだけでも快挙であり、初勝利を挙げた選手たちからは笑みがこぼれる一方、同じく初出場の首里(沖縄)は予選リーグで聖隷クリストファー(静岡)、一関修紅(岩手)に敗れ、涙を呑んだ。

安仁屋葉乙(首里)

攻守の要である安仁屋葉乙(のぶと)主将(3年)は「自分が力を出し切れなくて、チームに迷惑をかけてしまった」と肩を落としたが、同校OBである新田大樹監督は「選手たちはよくやった。自分が監督として勝ち切らせてあげられなかったので、自分に足りないことが多かった」と労う。

実は首里の初出場は、過去をたどると一度、全国出場の権利を得ていたが叶わなかった歴史がある。沖縄大会の優勝は63年ぶり。だが、当時は沖縄返還前で全国大会へ派遣される種目が限られ、男子バレーはその中に入っていなかった。

同校のOBを含めた関係者にとっては、まさに悲願達成となった全国大会初出場。少しでも長くその場所でプレーすべく奮闘し、敗れた悔しさに選手たちは涙したが、実は涙の理由はそれだけではない。

新垣涼介(首里)

文武両道を掲げ、県外への遠征が限られる沖縄、全国大会出場から遠ざかっていた首里では、バレーボールでの推薦で大学進学を果たす選手は少ない。インターハイに出場するチームの多くが、次は『春高』を目標として進むが、首里の3年生は全員が春高を目指すわけではなく、インターハイ限りで部を離れ、大学受験に向けて勉強へシフトしていく選手もいる。一関修紅戦でもブロック、スパイクで得点を重ねたミドルブロッカーの新垣涼介(3年)もその1人だ。

「めっちゃ悔しい」と目を赤くした新垣は、首里で仲間と共に歩んできた時間を振り返り、「感謝しかない」と涙を拭う。

「今回インターハイに出たチームの中で、僕たちの実力は下のほうだったかもしれないけれど、チーム全員の絆で勝ってきた。全国で勝つことができなかったのは本当に悔しいし、僕はこれが最後ですけど、これからも戦う仲間がいる。仲間とのつながり、バレーボールの面白さ、これからもみんなで支えながらつくってほしいし、僕の思いも残る仲間に託します」

初出場の首里(沖縄)

63年ぶりの快挙は、きっとこれからに受け継がれていく。負けた悔しさもこれからを生きる力に、どうか胸を張って次の目標へ進んでほしい、と心から願うばかりだ。

暑い京都で、熱い戦いが始まった。勝っても負けても、それぞれの抱く思いや、ここまでの過程。すべてが、この先につながっていくはずだ。

文/写真:田中夕子

田中夕子

田中 夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。WEB媒体、スポーツ専門誌を中心に寄稿し、著書に「日本男子バレー 勇者たちの奇跡」(文藝春秋)、「高校バレーは頭脳が9割」(日本文化出版)。「夢を泳ぐ」「頂を目指して」(徳間書店)、「絆があれば何度でもやり直せる」、凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること」(カンゼン)など、指導者、アスリートの著書では構成を担当

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