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スキー コラム 2022年3月15日

W杯個人総合覇者への道 │ スキージャンプ2021/2022

鳥人たちの賛歌 W杯スキージャンプ by 岩瀬 孝文
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疲労の中迎えたフライング世界選手権

ラハティ大会でグラネルと優勝を分かち合った小林陵侑

なにか先週末にジャンプの大会があったはずだ…よくよく考えてみたら、それはW杯ではなくノルウェーのビケルスンで開催されたフライング世界選手権だった。

北京冬季五輪から日本国内を経由せず、欧州へ直接戻った日本チームは、正直もう疲れ果てていた。W杯の終盤戦において、あの3連シャンツェで名高いラハティ(フィンランド)を飛び抜け、今シーズンはやや地味なたたずまいに見えるRAW AIRのリレハンメル(ノルウェー)1試合とオスロ・ホルメンコーレン(ノルウェー)2試合をこなしながら、ビケルスン世界選手権でフライング2試合へと突入したのだ。

果たしてここで全力投球してよいものか?

長いシーズンを過ごしながら、蓄積する疲労とメンタルを回復させつつ迎えるW杯シーズン最終盤。残すはフライングヒルのオーベルスドルフ(ドイツ)2試合、プラニツァ(スロベニア)個人2試合と団体戦1試合である。

それゆえ、ビケルスン世界選手権は10位前後くらいの程よい成績にて、体力と精神面で立て直しをはかりながらW杯へと向かう。いわばエース小林陵侑(土屋ホーム)を勝たせるという思い切ったチーム戦略を講じてみてもまったく良いのである。

もちろん戦うにはすべての試合に全パワーを投じて、全勝を目指していこうとの欲張りなファンもいるはずだが、そこは冷静に考えてみてほしい。もはや体力が持ちにくくなってきているW杯の後半戦なのだ。ならば、W杯個人制覇のためにワンクッションを置いてみるのもありといえるのではないだろうか。

「寿司が好きですね~、ノルウェーも好きな国のひとつですよ」
小林陵侑はしばしジャンプを忘れてノルウェーの公共放送局であるNRKのインタビューにたわいなく応えていた。
五輪後にゆっくりできる暇もなく、すぐさま欧州へと移動。
そこで味噌ラーメンや天ぷらそばが食べたい、寿司はフィンランドやノルウェーにもあるけど納豆ご飯も思い切りほおばりたい!欧州の濃厚さはないけど繊細で味わいある雪印メグミルクの美味なヨーグルトを何個も食べたいなどなど考えていただろう。

間違いなくハイレベルな闘いとなるシーズンエンド

2018-19年シーズン以来となる個人総合が見えてきた小林陵侑

さて、今週末に楽しみなのが、オーベルスドルフ(ドイツ)のフライングヒルW杯だ。
せり上がるランディングバーンの周りに観客席と放送席が立ち並びオーソドックスで歴史あるオールドスタイルなジャンプ台。無論クーリングシステムは設置されている。あのラージヒルの台からは平場にあるクロスカントリースキーコースを横目に20分程歩いて、うっそうと茂る木々の裏手に回っていくと、ドーンとその台はそびえ立っている。これこそが伝統のフライング台だと、見た瞬間に胸が熱くなってくるのだ。

そして最終シリーズはプラニツァ(スロベニア)のフライングW杯。小林陵侑はかつて252mという偉大なるバッケンレコードを記録。それは更新できるであろうが、個人総合優勝を見据えて適度な飛距離をマークするパターンで、確実にW杯個人総合を取りに行くことも考えられる。ここは春先の暖かさの中、ビールやらシュナップス三昧の春爛漫なファンがたくさんいて、好調の地元スロベニア勢を後押しする。そこで表彰台中央に立ってしまうのも実に格好いい。

W杯個人4試合を残して首位イエロービブの小林陵侑は現在1,478ポイント。それに続く2位のガイガー(ドイツ)が1,420ポイントというマッチレース状況。その差は僅かに58ポイント。どちらもフライングジャンプには強く、互いに有数の飛躍技術を持つ歴戦の雄である。まさしくハイレベルな闘いが予想される。

佐藤幸椰の飛翔にも期待したい

そして、ここにきて絶好調、小柄ながら前進のばねを上手に使って伸びていくクラフト(オーストリア)の存在も気になってくる。上位2人に割って入ることが可能なクラフトのジャンプは果たしてどちらに優位に働くのであろうか。
さらには勢いあふれるスロベニアチームの大御所ペテルを筆頭に弟のセネ、ティミ、アンツェらが、ここぞとばかりに束になって襲いかかってくるだろう。ただ小林陵侑は、欧州勢に負けないぞと跳ね除け、果敢に飛距離を伸ばしてくるに違いない。そしてそこには、いぶし銀的存在の佐藤幸椰(雪印メグミルク)が、おや、わたしを忘れては困るとシニカルな笑みでぶっ飛んでくる構図が見えてきたりする。それはなかなか楽しめるシーンだ。

プラニツァW杯の名物である、地元民謡曲(プラニツァ音頭)に合わせて飛び跳ねる巨大な鳥のぬいぐるみテレコムバード(鳥ぴょん)は、きっと今シーズンも我らが小林陵侑に肩入れをしてくれるはずだ。

3月後半の暖かさの中おおらかに試合を見つめて、ヒーロー陵侑に一喜一憂したい。そしてチームの帰国後には『おめでとう、長期間の欧州遠征ご苦労さま』と、こころ静かに声をかけたい。

そして、長年に渡り日本チームをリードしたソチ五輪メダリストの伊東大貴(雪印メグミルク)は今シーズン一杯で引退となる。3月19日午後にその会見がセッティングされ、有終のラストジャンプとなるのは札幌大倉山伊藤杯ファイナル。日の丸を背負って飛び続けた彼の雄姿を目に焼き付けたい。

文・岩瀬 孝文

岩瀬 孝文

ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。

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