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スキー コラム 2014年1月10日

レジェンド葛西、ジャンプ週間総合5位に! = スキージャンプW杯・バートミッテルンドルフ/オーストリア プレビュー

鳥人たちの賛歌 W杯スキージャンプ by 岩瀬 孝文
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欧州中にカミカゼカサイとしてその名が轟く葛西紀明(土屋ホーム)が奮闘した。
大観衆すべてが称賛の拍手を送ってやまない、しかも上位に食い込む飛距離をたたき出す。

伝統の4ヒルズトーナメント(日本での通称:ジャンプ週間)、開幕戦のオーベルスドルフで6位に始まり、ガルミッシュ-パルテンキルヘン6位、インスブルック7位、ビショフスホーフェン5位のシングル順位を続けた。そして個人総合で第5位に入ってきた。
驚異の41歳である。

しかも7回目の五輪出場を決めた。
「家族に自分のジャンプシーンを見せたいので、次の五輪(平昌)も狙います」
と、8回目をも視野に置く意気軒昂さをみせてくれた。

テクニック的にみればジャンプの後半に低く鋭く伸びていくシルエットが際立っていた。
前年までは、そこでどんと落ちていた印象もあったが、それが少しの向かい風で、ぐいと飛距離を伸ばしていき、突き進む。
これは今シーズン、成功している改良型ジャンプスーツ影響だけではあるまい。
あのフィンランドの新しいテクニックをアレンジして取り入れている様子もありなのだ。

同時に土屋ホームスキー部では、女子で新人の伊藤有希選手も五輪出場を決めている。 サマーシーズンからの体力養成トレーニングで、葛西監督は練習のお手本を示しながら、じっくりとこの伊藤選手の指導にあたってもいた。
そこでみられた自身のフィードバックもあり、それらがすべてプラスに転じていた。

さて、ジャンプ週間では新鋭のディートハルト(オーストリア)が4試合中2度の優勝を決めて栄えある個人総合優勝。
さらに転倒で左手にケガを負ったモルゲンシュテルンも優勝に肉薄する大健闘をみせた このディートハルトに関しては連戦の疲労もあり、続くクルム・バドミッテンドルフでのフライングW杯をキャンセル。その代わりにはフライングジャンプが得意な名手マルティン・コッホを送り込むことになった。
というように若手から中堅までオーストリアチームは選手層が厚い。
しかも地元クルムでの試合、チーム全体の各選手が虎視眈々とチャンスをうかがっている。それも強さの秘訣、オーストリアの相乗効果となっている。

日本チームは伊東大貴(雪印メグミルク)と風邪による体調不良でビショフスホーフェンを欠場した竹内択(北野建設)が帰国。
残る葛西選手が、新型ジャンプスーツの恩恵を活かした素晴らしいジャンプでリードする。そこに長身ロングジャンパーの渡瀬雄太(雪印メグミルク)が猛然とラッシュをみせてきそうだ。 予選免除枠の10位以内を何としても守りたい葛西選手。
さらには帰国後の札幌W杯での勝利がおおいに期待できそう。しかも、地元大倉山シャンツェラージヒルにおいて堂々の2連勝を飾る。そういう筋書きだ!
大声援と勢いを持って五輪へ、そのストーリーメイクといこう。

第3戦インスブルックで優勝した気鋭のコイブランタや上昇機運がみられる注目のアホネンなどに復調のきざしがみられたフィンランド勢、ヤコブセンやバーダルにファンネメルなど一発屋が秘める伝統のノルウェー、若手が台頭してきたポーランドのストッフらに、プレフツのスロベニアも相変わらずのパワフルさがある。
気になるのは名門ドイツチームの伸び悩みだ。一応フロイントは好調だが若きベリンガー、ヴァンク、フライタグの飛距離が出てこない。ベテランのノイマーが奮闘しているのが救いではあるが。

そういった欧州強豪チームの一角を崩しつつ、2014五輪の表彰台とメダルを目指すため、まずはコンスタントにひとけたに入っていきたいJPNチームだ。

●2014冬季五輪ジャンプ日本代表8選手

『男子5人』
葛西 紀明(土屋ホーム)7回目
竹内 択(北野建設)
伊東 大貴(雪印メグミルク)
渡瀬 雄太(雪印メグミルク)初出場
清水 礼留飛(雪印メグミルク)初出場

『女子3人』
高梨 沙羅(クラレ)
伊藤 有希(土屋ホーム)
山田優梨菜(白馬高)

〔写真1〕転倒によるケガもなんのその気迫を持って上位につけてきたモルゲンシュテルン(オーストリア)
〔写真2〕左から上昇機運著しい伊藤有希(土屋ホーム)、W杯4連勝で新記録14勝に王手をかけている高梨沙羅(クラレ)、LH3位の表彰台に立った伊東大貴(雪印メグミルク)、混合団体でアンカーを務めた竹内択(北野建設)の五輪代表メンバー
(クリックで写真拡大)

〔写真3〕実力派のバーダル(フロイント)にフロイント(ドイツ)右
〔写真4〕海外の子供達にも夢と希望そして勇気を与えている葛西紀明(土屋ホーム)はいつも心を込めてサインに応じる
(クリックで写真拡大)

〔写真5〕W杯の最前線に復帰してきた強者アホネン(フィンランド)

Photo & Text by 岩瀬孝文

岩瀬 孝文

ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。

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