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北ドイツに位置するクリンゲンタールがW杯スキージャンプ、今シーズン開幕戦の会場となる。
その近隣には、あの往年の名選手イエンス・バイスフロクがスポーツホテルを営み、住む街オーバービーゼンタールがある。この一帯は、旧東ドイツでチェコとの国境付近の谷間に彩られたエリアだ。
いまだ降雪に見舞われないクリンゲンタールは最新のアイストラックを導入したアプローチで、その効能に関する注目を大いに浴びることになる。
アイストラック&クーリングシステムでキラキラと輝きにあふれるアプローチと、ランディングバーンのみ人工雪が張り付けられ、それで試合自体の開催は可能であった。
そこでW杯開幕、いきなりの団体戦だ。
地元開催、俄然、張り切ってくるのがドイツチーム。
初優勝の地札幌が大好きなフロイント、ベリンガー、フライタク、故郷クリンゲンタールに家が建設中のヴァンク、ベテランのノイマーでまとまりはすこぶる良さそう。
かつてシュミットとハンナヴァルドの黄金期が懐かしくもあり、質実剛健のチームだ。
これに対抗してくるのはもちろん、オーストリア。
ロイツルのように強豪チームと駆け引きのできるベテランが控え、前年王者シュリーレンツァウアーが果敢に飛ばし、人望厚きコフラー、心機一転のモルゲンシュテルン、長距離ジャンパーのコッホ、若手一押しのフェットナーとクラフトが加わる。
このコフラーの新しいジャンプスーツだが、かねてから噂されていた、へそのあたりから長めに縫い付けられたフロントジッパーに秘密がありそう。限りなくフェアではあろうが、薄くて風が通るゼッケンの下、そこからエアがうまい具合に入り込み、飛距離が…などということは?
そして強者ノルウェーを忘れてはならない。
バーダル、ヤコブセン、ヒルデなど、もはや一発屋のバイキングはそこにはない。つねに2本まとめることができる、粗削りはどこ吹く風の強豪チームに成り得た。それも不思議だが、いまや落ち着きにあふれるノルウェー。ただし弱点は、諦めが早いこと、これは国民性なのかも。
新進の勢力では、スロベニアにポーランドがパワーにあふれている。
ストッフを軸に若手が育成されるポーランドは、マリシュの威光を受けるヴィスワの台で気鋭のコットらを鍛え上げる。
同様にスロベニアは、改修された新ジャンプ台のプラニツァをベースに夏場から猛練習を施した。そこで、ベテランにさしかかるクラニエツがテペシュを始め若いメンバーたちを巧みなまでにリードする。
このプラニツァは、女子ジャンプの今季最終戦ラージヒルが行われることが決定している。
さて、我らがジャパンチーム。
まず団体戦では3位表彰台を狙っていきたい。
レジェンド葛西紀明(土屋ホーム)が海外勢によるプレッシャーを払いのけ、竹内択(北野建設)、伊東大貴(雪印メグミルク)、清水礼留飛(雪印メグミルク)、長身ジャンパーの渡瀬雄太(雪印メグミルク)が一丸となる。
LH団体戦のメンバーは調子の良い選手から順番にピックアップする基本方針のジャパン。横川朝治ヘッドコーチと宮平秀治コーチが帯同する。オープニングからどんどん飛ばしていこう。
続く日曜日のクリンゲンタール個人戦は、いまだまったくの未知数にある。
サマーグランプリ個人総合優勝ベリンガーも雪のアプローチともなれば、勝手が違ってきそうだ。じっくりと前年王者のシュリーレンツァウアー、バーダル、ヤコブセンにコットやジラなど新鋭数名の仕上がりを確認したい。
そこで気になるのは何といっても満を持して復帰したアホネンの動向。彼の自信にリードされる故障明けのハポネンなど。そこでニエメラヘッドコーチとサルパランタコーチによる2トップ体制でスタートダッシュの波に乗れるか。
この後のW杯は、北欧クーサモ・ルカ(フィンランド)の冷え込む、LH飛ばせ台が控え、その先にいよいよ女子ジャンプの開幕となるリレハンメル(ノルウェー)で、魅惑の混合団体と個人戦が、荘厳なまでに待つ。
(Text & Photo by 岩瀬孝文)
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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