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スポーツ界に訪れた転換期 | 町田樹のスポーツアカデミア 【Dialogue:研究者、スポーツを斬る】 ~ポスト・スポーツの先を見据えて~
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部バスケットのシュートエリア図
M:それは、ある意味ではデータがスポーツパフォーマンスの向上に資するという観点でも見えますし、それが行き過ぎると先生も「ポスト・スポーツ」の時代の中で問題提起されているように、データが戦術や何をすべきかを全て導き出し、アスリートはそれに追随するだけ、AIから言われたものに従順に反応していくということになる。つまり、「アスリートの主体性が、アスリート側からデータ側に移っていくのではないか」ということも問題提起されています。
Y:そうですね。スポーツの主人公が私であるのか、それとも事前のデータから、次はこういうアクションを起こした方がいいよ、というリスクマネジメントが最初に行われている状態でプレーをするのか。これは大きな違いがあって、そのことによって無駄がなくなったり、怪我が予防できたり、今までだとうまく得点に結びつかなかったようなことでも、もっと合理的に無駄なく点につながるという考え方からすると、スポーツを一つの競争って考えたらいいことなのかもしれないけれど、スポーツってやっぱり「遊び」(Deportareの語源から)だし、やっぱりどこかで芸術的な部分がある。感性、心の動き。美的な感覚であるとか。あらゆるものが動員されてはじめてスポーツの魅力って出てくる。果たしてスポーツという語源が持っていた遊び心が、そこに体現されるのかどうかというと、ちょっと違うのかなって思うんですよね。まさに時代の転換点で、どっちがいいというのは立ち位置によって変わってくると思います。ただ、それは本当にスポーツの未来にとってどうなのかとか、これからの長いスポーツの未来にとって、データを導入してアスリートたちがデータによって自分の体を作り変えていくということが本当にいいことなのかどうか。これはほとんど議論されていない。データをどうやって使っていこう、勝つためにどうやって使うといいのという議論をたくさん聞くんですけど、それがスポーツというカルチャーの過去と未来を橋渡しするという現在において、全くその議論が進んでいないから、そこは私たちの仕事。「両方の側面があるかもしれないよ」。そのことによって「スポーツは魅力を失うかもしれないよ」と。もしかしたらネガティブな方向だってあり得るかもしれないから、そういう慎重な議論をするようなフィールドが必要だろうなと思います。
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