人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

フィギュア スケート コラム 2017年11月8日

アイスダンス上級編

木戸先生直伝!今からでも間に合うアイスダンス観戦講座 by 木戸 章之
  • Line

③ 視覚的な“魅せ方”の心得

 アイスダンス、フィギュアスケートに限らず、採点競技というものは人が見て採点する競技である。従って、“何をやっているか”も大切であるが、“やっているものがどのように見えるか”というのも大切である。細々としたステップをひたすら踏み続けるものと、比較的密度の低い部分と密度の濃い部分を使い分けるもの、どちらが見ていて映えるか、それが選手自身の技量とどれくらい合っているのか合っていないのか、どこを強く見せどの部分を比較的弱くするかなど、考えなければならない。
 男性と女性の役割の違いも考えなければならない。男性と女性は体型も筋力も柔軟性もそれぞれで変わってくる。アイスダンスの原理(原論)としては男性がリードし、女性がそのリードについてくるというのがある。男性は女性のフレームとして女性は男性のリードの中で華やかに動くという原則をお互いが理解しているかどうかも重要である。たまに、男性がやたら滅多ら踊り、女性が男性に実にスキルフルにフォローしてゆくカップルもいるが、やはりアイスダンスの原理からすると不自然になってしまうのである。
 自らがやっている感覚と見ている立場の印象では感覚がかなり違ってくる。自分を客観化し、見ている人たちがどのように感じるのかを意識して滑る必要があるのだ。一方で、競技スポーツであり、ルールに基づいてエレメンツの基礎点が決まり、細かく設定された採点基準に基づいて点数をつけられてゆくことも忘れてはならない。ルールに厳格すぎて人に魅せているということを忘れてもダメだが、ショーマンシップだけでもこの競技はやっていけない。技術内容と魅せ方の両立、このバランス感覚もアイスダンスには必要である。


④ パートナーとうまくやっていくための協調性

 アイスダンスは異性であるパートナーと組んで競技をするという面で、他の競技スポーツとは違った独特の資質を求められる。女性とうまくやっていくこと、男性とうまくやっていくこと、というのは“話を合わせる”ことのみでやれるものではない(おそらくどの分野においても同じようなものであろうが)。もう一つ、アイスダンス界(フィギュア界全体に言えることでもある)の特徴として極端な男女比がある。男性が極端に少なく、女性の方が圧倒的に多いのである。アイスダンス界では男性の壮絶な獲得合戦となってしまう。すでに組んでいるカップルの男性に対しても“美味しい”話を持ちかけて奪おうとする女性も中にはいるほどである。したがって、カップルとしての結束力をしっかり持てることも必要で、特に男性の場合はあまり外向的ではなく、身内との結束を大切にする男性の方がアイスダンスをする上でのパートナーシップを作りやすいのではないかと思われる。
したがって、比較的理屈でものを考える事のできる、どちらかといえば内向的な人の方がアイスダンスに向いているのではないかと私は考える。

これら四つの資質を総合すると、細かいことにこだわる事のできる、多少内向的で辛抱強い性格の人がアイスダンスに向いているということができる。さらに簡単な言い方をすれば、しつこいオタクのコミュ障が一番アイスダンスに向いているとも言える。

実はこのことについては突拍子もない話でもなく、世界的に見たとき、国際大会レベルのアイスダンス選手には、おとなしいが気の強い、知的好奇心が高く割と学校の成績も良い子たちが多いのである。私自身、現役時代、一緒にトレーニングしていた他の国の選手と食事を共にしたり一緒に酒飲んだりすると、トレーニングの話題に始まり、筋力や持久力の鍛え方、生理学的な話、脳の話などを細かく行うことが極めて多かった(師匠の悪口や、ヨーロッパ人が多かったこともありアメリカを茶化す悪い冗談も多かったが(笑))。アイスダンサーは比較的オタク気質な人間が集まりやすいのである。

アイスダンスの歴史と世界の勢力図 

かつてアイスダンス界はイギリスの独壇場であった。当時のアイスダンスは社交ダンスを氷の上に移植してきたようなダンスが主であった。それが崩れたのは1976年のインスブルックオリンピックにアイスダンスが正式競技として導入されることが決まってからのことである。当時のソビエトが、オリンピック競技になった途端にアイスダンスの強化を始めたのである。1970年にパホモワ&ゴルシコフ組が世界選手権で優勝(最終的には6回優勝した)して以来、長い長いソ連の天下に入るのである。社会主義政権下であったソビエトは国ぐるみでスポーツの強化に取り組んでいたのだがその一環として、フィギュアスケートにも相当の力の入れようであったと聞く。ボリショイバレエの振り付け師が振り付けを担当し、陸上、氷上の各練習でもトップレベルのコーチがつきっきりであったようである。そんな中でモイセーワ&ミネンコフ組やリニチュク&カルポノソフ組などの高い技術を持つアイスダンスカップルが生まれたのである。
 このような時代の真っ只中、1970年代の後半にイギリスから1組のカップルが出場した。トービル&ディーン組である。保険会社のOLと警察官をやりながら選手を続けていたこの組は、カップルとしての恐ろしいほどのユニゾンと天性の柔らかい下半身、フリーダンスにおける斬新な振り付けを武器に一気に世界の階段を駆け上がり、1981年から世界選手権4連覇、サラエボオリンピック優勝(フリーダンスではラヴェルのボレロを使い芸術点で全員から6点満点をもらうという恐ろしい伝説をつけた)という金字塔をうちたてた。  トービル&ディーン組の引退後もベステミアノワ&ブーキン組やクリモワ&ポノマレンコ組など、アイスダンス関係者の記憶に永遠に残るような素晴らしいカップルを生み出すこととなる。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
フィギュア スケートを応援しよう!

フィギュア スケートの放送・配信ページへ