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ラグビー コラム 2025年3月21日

創部4年で初出場の早稲田佐賀、アンストラクチャーからのアタックで優勝候補に挑む。全国高校選抜ラグビー大会

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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初出場の早稲田佐賀(写真提供:早稲田佐賀ラグビー部)

今年も3月23日(日)から31日(月)、埼玉・熊谷ラグビー場を中心に、春の高校ラグビー王者を決める「第26回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会」が開催される。

全国9ブロックの予選を勝ち抜いたチームを中心に32校が出場する。初出場は実行委員推薦枠で出場する山梨学院(山梨)と、九州新人大会のBパートで3位に入った早稲田佐賀(佐賀)の2校だ。

全国高校選抜ラグビーフットボール大会

早稲田佐賀ラグビー部は新人戦の県予選決勝で、佐賀工業に0-59で敗れたが、九州大会では、Aパート準決勝こそ筑紫(福岡)に40-45で敗れたものの、3位決定戦で花園常連校の鹿児島実業(鹿児島)に59-14と快勝し、初めて自力で15人制の全国大会に出場を決めた。

佐賀県唐津市に2010年に創設された早稲田佐賀は、男女共学で中学の1学年の定員は120名。高校の1学年の定員は240名の中高一貫校で、50%ほどが早稲田大学に推薦で進学しており、今年の4月の高校1年生からは60%に上がるという。

県外出身の生徒も多く、早稲田大学を創設した大隈重信の幼名にちなんだ「八太郎館」という寮が併設されており、7割ほどの生徒が寮生活を送っており、ラグビー部員も8割は寮生だ。

第26回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会 1回戦 くまぴあグラウンド

2021年、高校にラグビー部が創部された。監督には東福岡、早稲田大学でキャプテンを務め、コカ・コーラレッドスパークスでもプレーした山下昂大監督(35歳)が就いた。東福岡時代から教員を志し、早稲田大学では体育教師の教員免許を取得したが、現在は学校職員として働きつつ、指導している。

山下監督(写真提供:早稲田佐賀ラグビー部)

「職員の仕事と監督はの両立は大変な部分もありますが、毎日、生徒の成長が見られて楽しい。選抜初出場はうれしいですが、彼らが目標としているのは花園出場です。あくまでも通過点として、その中で、踏むべきステップをしっかり踏むことができています」と山下監督。

BK(バックス)コーチ兼部長には、福岡県の教員を歴任した藤山英心氏がおり、練習グラウンドを九州電力から借りている関係もあり、スポットコーチには九州電力OBの田中宗法氏、監督の高校の先輩・仲西良太氏、監督の大学の後輩の黒木健人氏の3人、監督も含めて元トップリーガー4人がコーチをしている。

しかし、県内に花園に43大会連続53回出場の佐賀工業がおり、全国大会出場までは簡単な道のりではなかった。

福岡や佐賀から通いの生徒もおり、朝練習は行っていない。また、平日は7限まで授業があり、ホームルームと掃除を終えて、学校から3kmのグラウンドまで自転車で移動するため、17時から練習を開始している。

そして、寮の門限が19時のため、しっかりと練習する時間は1時間半ほどが限度だという。ただ、土曜日はしっかりと練習する時間が確保でき、日曜日をオフに充てている。

きっかり15人で臨んだ1年目の花園予選は鳥栖工業に14-39で敗れて、2年目は佐賀工業に0-195と大敗した。それでも山下監督は、「毎年、本気のチャレンジをしていかないと、その差は縮まらないと思っているので、その挑戦にこだわり続けている」と前を向いた。

一昨年は花園ベスト4に入った佐賀工業にチャレンジしたが0-106と大敗。しかし夏に7人制の全国大会に初出場した昨年、新人戦では佐賀工業相手に初トライを挙げて、花園予選では12-48と善戦し、成長への階段を登っていることを証明した。

部員は2年生14人、1年生が18人で、佐賀県出身者は2人。それぞれマネージャーが2人ずつおり、選手は30名に満たないため、15対15の練習はできない。

2年生はワセダクラブから4人、江東ラグビースクール、鎌倉ラグビースクールなど、関東出身者がチームの中軸を担い、1年生は福岡出身が5人と比較的多い。その一方で28人の選手のうち、テニス部だった長身LO(ロック)山田遼汰(1年)ら、5人は早稲田佐賀中学校では他の部活をやっていて、ほぼ初心者だったという。

左から山崎主将、田原副将、吉廻副将

副将の1人で、埼玉県さいたま市出身で、運動量が武器のPR(プロップ)田原定征(2年、江東RS)は、「山下監督に誘われて、早稲田佐賀に体験に来てみたら雰囲気良かったので入部した」と話す。今後は早稲田大学の基幹理工学部への入学を志望しているという。

山下監督は帆柱ラグビースクール時代から、社会人まで25年間、競技を続けてきたが、「ラグビーの楽しさ、奥深さを指導してもらった」と話す。

その上で、「日本代表もそうかもしれないが、我々は大きくない、個としては小さくて弱いことを認識した上で、弱い個が15人の塊になって、大きい相手に勝とうというのがチーム作りの前提にある」と話す。

さらに監督は、「局地的に考えれば、2対1、3対2といった数的有利は作り出せる。その時に正しい状況判断をして、スペースのある正しい場所にボールを運べばゲインが取れる。その状況を偶発的ではなく必然的に起こすよう、毎回の練習でいろんな形で模索しながらやっている」と話した。

練習時間が限られているため、状況判断、スキルの練習に特化していることもあり、早稲田佐賀の強みはBKを中心とした展開力で、特にアンストラクチャーからのアタックを武器としている。

監督は「ボールをしっかり継続して、キープできれば良いランナーもいるし、状況判断は毎日練習しているので、攻撃力はある」と言えば、BKの中心選手で副将の1人、CTB(センター)吉廻温真(2年/ワセダクラブ)は「BKは全国の強豪とやり合えると思うので、圧倒したい」と意気込んだ。

BKの展開力で全国に挑む(写真提供:早稲田佐賀ラグビー部)

吉廻以外にもSH(スクラムハーフ)栗原樹、SO(スタンドオフ)折出敬資、WTB(ウイング)佐藤光希、CTB山下心平(1年)がBKの中軸だ。

今季のスローガンは、1期生が考えて、山下監督はクラブとして大事にしている言葉を採用した。それは「織」と英語の「Origin(原点、起源)」の造語である「織gin」(オリジン)だ。

山下監督は「縦と横の糸が織りなって布を作るように、という意味と、今の2年生は3学年が始めて揃った代の1年生で、花園に行く初代のチームになってほしい、1期生とは違った意味の原点になってほしいという意味を込めた」と語る。

また、キャプテンのNO8(ナンバーエイト)山崎圭介(2年/ワセダクラブ)は「『織ginは』は1期生の方が作った言葉。花園出場の目標が、まだ叶っていないので、自分たちの代で叶えて、みんなの思いを背負って花園にいきたい」と語気を強めた。

選抜大会の初戦(3月23日)は、花園2連覇中で関東新人も制した優勝候補の一角、桐蔭学園(神奈川)となった。

選手時代も選抜大会に出場し、指揮官として初挑戦となる山下監督は、「僕自身もそうだが、初戦が桐蔭学園と決まったときから、選手たちは日本一のチームと対戦できるとポジティブな気持ち」。

「自信のあるアンストラクチャーからのアタック、BKの攻撃がどのくらい通用するか楽しみだし、2試合以上できるのでしっかりチャレンジしてほしい」。

山崎キャプテンも「相手がどこでも自分たちのプレーをして、1試合でも多くプレーしたい。アタックだけでなく、ディフェンスも得意としているので、名が知られている強豪を前で止めたい」と腕を撫した。

「打倒・佐賀工業」、そして「初の花園出場」を掲げる早稲田佐賀ラグビー部、初めて全国の舞台で、日々の練習で培ってきた展開ラグビーを披露する。そして、強豪との真剣勝負を通して、秋への進化の大きな糧とできるか。

文/写真:斉藤健仁、写真提供:早稲田佐賀ラグビー部

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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