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ラグビー コラム 2025年1月16日

リーグワン、脳に対する衝撃から選手を守る『スマートマウスガード』の説明会を実施

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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『iMG』(スマートマウスガード)

1月15日(水)、一般社団法人ジャパンラグビーリーグワンが、脳しんとうに関する『Head Injury Assessment(HIA)プロトコル』に導入した、『iMG』(Instrumented Mouthguard/センサーを搭載したスマートマウスガード)についてのメディア向けの説明会を開いた。

登壇したのは、ワールドラグビーのサイエンス&メディカルマネージャーのリンジー・スターリング氏だ。

『iMG』は2024年1月以降、シックスネーションズや、スーパーラグビーなどのプロやテストマッチ、世界のエリートレベル全ての大会に導入されており、リーグワンで、22大会目にあたるという。

『iMG』が導入されている大会

『iMG』は250ポンド(約49,000円)で、費用はすべてワールドラグビーが負担しており、今後2年間もワールドラグビーが継続して費用を負担する。

2024-25シーズンのリーグワンから、『HIAプロトコル』において、マッチドクターによる目視による脳しんとうの確認だけでなく、『iMG』を使用し、『HIA1評価』の指標のひとつとして導入されている。

選手が着用する『iMG』が、事前に設定された閾値(基準値)を超える衝撃を感知した場合、サイドラインにいる医療スタッフ(マッチデー・ドクターなど)にアラートが送信され、マッチオフィシャルは当該選手を、オフフィールドでの『HIA1評価』のために退場させる、というもの。

既存の『HIAプロトコル』に取って代わるものではなく、追加の安全対策として実施されている。

『iMG』には、マウスガードの端にセンサーが埋め込まれており、選手が受けた衝撃の大きさや方向、回数などをリアルタイムで計測し記録することができる。従来のマウスガードと同様、歯や顎を保護する役割も果たしつつ、脳しんとうの評価に役立つデータも提供する。

ラグビーのエリートレベルの試合では、500回ほどコンタクトが起きており、270回はタックルが絡んでいる。そして、脳しんとうは4試合で3件ほど起きるという。ラグビーでの研究はまだ進んでいないが、アメリカンフットボールなどの研究結果では、脳への繰り返しの衝撃は痴ほう症の原因の1つになっているとのこと。

「脳への継続的な衝撃が選手のキャリアを通じて、マイナスな影響を与えていると考えている」(スターリング氏)。

2年ほど前まで、選手への脳の衝撃がどれだけあるか知る方法はなかったが、『iMG』がそれを可能にしたという。2年ほどのテストの末に、精度が高いということでプリベント・バイオメトリクス社の『iMG』が昨年からエリートレベルで導入されたというわけだ。

横軸が重力加速度、縦軸がラジアン毎秒

センサーによって、タックルや地面にたたきつけられた衝撃の大きさ、角速度の変化率を計測することができ、衝撃を受けた時にかかる重力加速度の『g』と、『rad/s2』(ラジアン毎秒)で計測される角加速度の両方が基準の数値(男子:75g&4500rad/s2、女子:65g&4100rad/s2)に達すると、マッチデー・ドクターのiPadにアラートが送られるというシステムとなっている。

つまり表の右上にあたる衝撃が感知されるとHIAプロトコルの対象となるというわけだ。現在まで8000人が着用し、100万以上のデータが収集できているという。

リーグワンでもディビジョン1・2の第3節までの24試合で、スマートマウスガードが使用されて、各試合で23人中18名ほどが着用し、HIAは1試合で1件出るかどうかの中、スマートマウスガードは、2.5試合で1件アラートが出たという(選手1人あたり46.2試合で1件アラートを経験することになる)。

『iMG』着用の意義をスターリング氏は、「プレイヤーが大丈夫そうに見えても、データとして衝撃を受けていればアラートが鳴ります。HIAはドクターが目視していた。そこにプラスして、目視できない情報を感知するために使用しています」と話した。

ドクターなどによる目視だけでなく、データを基準として、より脳に対する衝撃から選手を守ることにつながるというわけだ。

試合中はもちろんのこと、トレーニングに関してもより脳への衝撃が少ないドリルなどが判明する可能性や、データが蓄積すればポジションや個人に応じて、基準データを作ることも可能となるかもしれないという。

また、現在はプロを中心としたエリートレベルだけの使用だが、スマートマウスガードが普及して、安価になればユースレベルでの使用も考慮していく。リーグワンや代表レベルの選手を脳への衝撃から守り、より安全にプレーするという観点から『iMG』は今後も一役買っていくことになりそうだ。

文:斉藤健仁

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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