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粘りの正体とは何か。ひとつは「成功例」だ。気持ちの切れないチーム、先輩、先人を見る。知る。これがないと危機や困難に士気を保てない。常勝クラブ、そこに至らなくとも栄冠を知る部が比較的、粘り強い理由だと思う。プライドにも近い。
さらに「自意識」。独善でも「私は切れない」と信じ込む。根拠は過去の成功のもたらす自信、そうした経験のない場合は厳格な鍛錬でつかむ「よりどころ」だ。これだけ走った。これだけタックルのダミーを倒した。これだけスクラムを組んだ。というような。
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ただし「切れない」と信じる部員が15人並んだだけではチームは切れる。日常に「切れることを許さぬ環境」がなくてはならない。ラグビーが上手でも切れる人間は軽蔑される。上手でなくとも切れなければ尊敬される。そのことが酸素として練習やミーティングの場を覆う。新人の入部初日に雰囲気は充満しており、そうでなくてはならぬと意識する。それが環境だ。
軽率な瞬間を鋭く友に責められる。体を張らなければ、いかなる才能であれ、結局は修羅場に友を泣かせるのだから、いまのうちに降格させる。毎日の緊張が決戦の天秤をわがほうへ傾ける。
粘りとは「友と友のあいだ」の濃度と密度である。友とはまさにチームの友。ラグビーが集団の球技である以上、あらゆる攻防は単身では完結しない。ひとりソフトなタックルで抜かれたとしても、その前の友の支えは関係している。
だからフィットネスの醸成も「友と友」を離れないほうがよい。個別の持久力の記録を伸ばし、管理するだけでは、各人の限界を突破できない。
2008年、かつてのオールブラックスの怪物WTB、ジョナ・ロムーがこう話した。直接耳にして少し驚いた。
「ニュージーランドにも罰走のような練習はありました。何十回もグラウンドを往復させられる。タイムを切れなければ回数は増す。もう足は動かない。頭は下がる。でも、ふと両脇を見ると仲間も同じように走っている。こいつらが一緒なら乗り切れると思える。窮地に立たされれば人間の本当の姿もわかります」
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