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東芝ブレイブルーパス 円陣
開幕から連敗スタートの東芝ブレイブルーパスにとっては、絶対に負けられない一戦。少なからず重圧はあったはずだ。しかしこの日は前節から先発8人を入れ替えたフレッシュな布陣が攻守に東芝らしさを発揮し、9トライを挙げる猛攻で三菱重工相模原ダイナボアーズを圧倒した。
引いて受けるのではなく自分たちから体を当てにいく。ひたむきに足をかいて一歩でも前に出る。東芝の意思は明快だった。ゲームキャプテンのFLリーチ マイケルやNO8山本浩輝、強力CTBコンビのジョニー・ファアウリとセタ・タマニバルらが立ち上がりから激しいヒットを連発し、三菱重工相模原に接点でプレッシャーをかけて主導権を引き寄せる。
前半5分にSOジャック・ストラトンのPGで先制し、12分にはゴール前のラックから波状攻撃でたたみかけてCTBタマニバルがこの日最初のトライをマーク。その後は自陣ゴール前に攻め込まれる場面もあったが、粘り強くタックルを続けて相手の攻撃を寸断し、20分にターンオーバーからの切り返しでSH高橋昴平が90m以上を走りきって17-0と突き放すと、ゲームの天秤は大きく傾く。さらに風上を利して陣地を進め、25分、36分と2トライを加えてハーフタイムまでに29-0とリードを広げた。
後半も東芝の勢いは止まらない。4分、敵陣30m付近のセンタースクラムをグイグイと押し込み、相手防御のギャップを突いたSOストラトンが一直線にインゴールへ。三菱重工相模原も10分にCTBマット・ヴァエガが個人技でトライを返したが、東芝は直後の14分にふたたびスクラムプッシュからWTB松延泰樹が大外を抜け出し、すかさず流れを取り戻す。
その後もCTBファアウリを筆頭に鋭く間合いを詰めるディフェンスで圧力を与え続け、三菱重工相模原のエラーを再三誘発。この日トップリーグデビューとなった途中出場のFL佐々木剛の2トライなどで得点を伸ばし、余裕を持ってフィニッシュした。
【ハイライト】三菱重工相模原 vs 東芝|トップリーグ 2021 第3節
終わってみれば58-7の完勝。主軸にケガが重なる中、絶対に落とせないプレッシャーをはねのけて勝たなければならない試合をきっちり勝ちきったことは、東芝にとって小さくはない意味があるだろう。セットプレーやモール、ディフェンスでの相手をのみ込むような推進力は、これぞ東芝と感じさせる迫力があった。「これまでやろうとしていたことが、試合でうまく表現できたことをうれしく思う」とトッド・ブラックアダーヘッドコーチが語ったように、チームの原点である強靭なフィジカルを前面に押し出し、自分たちの強みをもっとも発揮できる形を実感できたことは、今後の強豪との戦いにつながるはずだ。
東芝ブレイブルーパス トッド・ブラックアダーヘッドコーチ
三菱重工相模原は序盤の主導権争いで後手に回り、追いかける状況が続いて相手の長所が生きる展開に持ち込まれたことが最大の敗因となった。「スクラム、モール、接点で受けてしまって、思うようなアタックができなかった」とはFL小林訓也。わずかでも隙を作ればたちまちたたみかけられる国内最高峰リーグの厳しさを、あらためて痛感する試合だっただろう。
もっとも、スコアほど内容に圧倒的な差はなかったように映ったのも事実だ。この日も一人ひとりのポテンシャルの高さは随所に垣間見えた。こうした経験を糧に、一歩ずつチームとしてステップアップしていくことを期待したい。
この試合は、3月11日に震災から10年を迎える釜石の鵜住居復興スタジアムで開催される、特別な一戦でもあった。「震災から10年の節目で、この試合が地域のみなさんにとって大切な意味があることは認識していました。この地で試合ができたことを光栄に感じています」(東芝・ブラックアダーヘッドコーチ)。春が近づいていることを感じさせる陽気も手伝って、会場は勝敗を超えてここでラグビーが行われる喜びに満ちていた。いい一日だった。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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