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80分で決着つかず
12月13日(日)、東京・秩父宮ラグビー場で、ラグビー大学選手権3回戦の2試合が行われた。第2試合は流通経済大学(関東大学リーグ戦2位)と筑波大学(関東大学対抗戦5位)と、ともにキャンパスと練習場が茨城県にある「茨城ダービー」となった。
流通経済大学はリーグ戦の最終戦から大きくメンバーを変えてきた。FW(フォワード)第1列こそ同じメンバーだったが、左LO(ロック)に今年度初先発の平井寿太郎(4年)を起用、LOタマ・カペネ(3年)とコンビを組んだ。そして、NO8(ナンバーエイト)でプレーしていた南太陽(2年)が左FL(フランカー)に回り、NO8はシオネ・リクアタが先発した。
BK(バックス)はSH(スクラムハーフ)野村悠(3年)、SO(スタンドオフ)柳田翔吾(2年)、CTB(センター)は土居大吾(2年)と中川彪流(4年)。ハーフ団、CTBコンビを流通経済大柏出身者で固めてきた。
一方、先週の対抗戦最終戦で快勝した筑波大学は、FW2人、BK1人のメンバー交替。FWがどれだけセットプレー、接点でファイトし、WTB(ウィング)仁熊秀斗(4年)、植村陽彦(2年)の2人、先週ハットトリックを達成したFB(フルバック)松永貫汰(3年)にボールを集めることができるかが焦点だった。
先制したのは筑波大学だった。前半3分、スクラムで相手がアーリープッシュの反則をすると、すぐにリスタートし、オープンサイドに展開。WTB植村が抜け出してトライ。副将SO山田雅也(4年)がゴールを決め、7点を先制する。
接点で上回っていた流通経済大学も20分、ゴール前でFWにこだわり、27次攻撃の末、最後はLOタマ・カペネ(3年)が右端に飛び込み、FB河野竣太(3年)がゴールを決めて、7-7の同点に追いつく。
グラバーキックを蹴る流経大CTB中川
さらに30分、流通経済大学はCTB(センター)中川彪流(4年)のグラバーキックに反応したFB河野が自ら足にかけた後、インゴールでボール押さえて12-7とリードする。
筑波大学も負けておらず、自陣からのアタックから主将CTB岡崎航大(4年)が抜けだし、SH鈴村淳史(3年)につないで、最後はWTB仁熊が中央に押さえて、14-12と逆転して前半を折り返した。
後半も拮抗した展開が続き、後半11分、筑波大学がゴール前スクラムを押し込み、SH鈴村淳史(3年)がブラインドサイドを突いてトライを挙げて19-12とリードを広げる。
流通経済大学も14分、SO土居がライン際のスペースにグラバーキック。LOカペネが拾い上げてタックルを受けながらもWTBイノケ・ブルア(3年)にオフロードパスを通し、そのままブルアが中央に持ち込んで19-19の同点に追いつく。
その後、流通経済大学が相手陣でプレーする時間帯が続くが、筑波大学もディフェンスで粘り、SO山田のキックで陣地を戻すという展開が続き、電光掲示板は動かない。
流通経済大学は試合終了間際、相手の反則からゴール前でラインアウトのチャンスを得る。しかし、ラインアウトでミスし、筑波大学も自陣からボールをつないで攻め込む。しかし、最後はお互いにノックオンをしてしまい、試合はそのまま19-19の引き分けでノーサイドを迎えた。
「準々決勝出場権あり」の紙を引いた流経大FL坂本主将
トライ数もゴール数もまったく同じということで、試合後にピッチサイドで次戦への出場権をかけて抽選が行われた。流通経済大学は主将FL坂本侑翼(4年)、筑波大は主将CTB岡崎が試合途中で負傷交代してしまったため、副将SO山田が代表として参加した。
じゃんけんと予備抽選で勝った筑波大学の副将SO山田は筑波大学の陣地にあった封筒を引く。流通経済大学の主将FL坂本は残った封筒を引いた。「よしっ!」という声とともに「準々決勝進出権あり」と書かれた紙を開いたのは流通経済大学のスキッパーだった。結果、流通経済大学が準々決勝へ駒を進めた。
勝負には引き分けたが、準々決勝に進出できなかった筑波大学の嶋崎達也監督は「本当に最後までやろうとしたことをやり切った。4年生中心に引っ張ってくれて、シーズン通してやりたかったプレーを最後に出し切ってくれた。抽選なのでしょうがない、よくやったと言いたい」と選手たちを称えた。
ラグビー 全国大学選手権 20/21 3回戦
【ハイライト】流通経済大学 vs. 筑波大学
筑波大の岡崎主将は「FWが善戦してくれ、BKがトライまで持っていけた部分もあったが、何回かチャンスを逃してしまい、こういう試合にしてしまった。最後まで選手があきらめず頑張ってくれたので、悔いはない」と前を向いた。
筑波大学は、コロナ禍で7月いっぱいまで大学構内にあるグラウンドが使えず、現在でも構内での対外試合は禁止されているという。そこで8月、同じ茨城県にある流通経済大学に合同練習をしてもらったという。
嶋崎監督は「(8月に流通経済大学さんに)2回もグラウンドと身体を貸していただいて、シーズンをスタートできた。それがなければ、この場にも立っていられなかったかもしれない。感謝していますし、正々堂々とやれた。流通経済大学さんあっての僕らだったので本当に感謝しています」と謝辞を述べた。
抽選後、健闘をたたえ合う
抽選の結果により、4年前の大学選手権での引き分けとは違い、準々決勝進出を決めた流通経済大学の内山達二監督は「(大学選手権の)初めての試合では最高のゲームをしたのではないかと思います」と話した。
また、内山監督は8月に筑波大学を招いて合同練習したことに関して聞かれると「(筑波大学とは)同じ茨城県ということで、一緒に練習している仲です。筑波大学はコロナで、(他のチームが)構内に入れない中、我々が協力できるのであれば、そういう関係でいますし、それがラグビーだと思うので、一緒に何度か練習しました」と話した。
FL坂本主将は「自分たちがやってきたことと、仲間を信じて試合に臨みました。拮抗すると予想していましたが、引き分けになるとは思っていなかった。筑波大学の圧力、選手権の圧力で自分たちに対するプレッシャーあって、思うようにいかない部分あった」と次戦に向けて反省点を口にした。
引き分け抽選の末、昨年度に続きベスト8に進出を決めた流通経済大学。12月19日(土)の準々決勝は大阪・東大阪市花園ラグビー場で、昨年度も準々決勝で対戦し、28-58で敗れた天理大学(関西大学リーグ1位)と対戦する。
坂本主将は「天理大学戦でも茨城の代表として筑波大学さんの思いも背負ってプレーしたい」と意気込んだ。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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