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ボーデン・バレット、ベン・スミス、マイケル・フーパー、グレイグ・レイドロー…世界のスーパースターたちがトップリーグに参戦する理由
ラグビーレポート by 斉藤 健仁すでに練習試合に出場し存在感を見せたFBスミス
来年1月16日(土)に開幕する最後のトップリーグまで残り2ヶ月ほどになった11月4日(水)、2018年度のトップリーグ王者である神戸製鋼がオールブラックスで50キャップ以上を誇り、スーパーラグビーだけでなく、ワールドカップ優勝経験もあるSO(スタンドオフ)アーロン・クルーデン、FB(フルバック)ベン・スミスの入団会見を行った。
司令塔として期待が大きいSOクルーデン
神戸製鋼は2018年度の優勝に貢献した、オールブラックス経験のあるSH(スクラムハーフ)アンドリュー・エリスと世界的SOダン・カーターらがチームを去ったが、それと同等の実力者が加入したというわけだ。神戸製鋼以外にも、今シーズンは他のチームにも海外から続々と代表クラスの世界的な選手が加入している。
もともと2003年に始まった日本のトップリーグには、元ニュージーランド代表SOトニー・ブラウン(元パナソニック)、元オーストラリア代表ジョージ・スミス、SHジョージ・グレーガン(ともに元サントリー)、SOベリック・バーンズ(元パナソニック、リコー)、世界最優秀選手にも輝いた元南アフリカ代表FL(フランカー)スカルク・バーガー(いずれもサントリー)など、多くの世界のトッププレイヤーが在籍してきた。
日本を代表する企業がチームを支えている日本のトップリーグは、以前から魅力的な移籍市場の1つとして世界のラグビー界でも認知されていた。
イングランドやフランスといった欧州のプロリーグは、金銭面だけを考えれば日本のトップリーグよりも条件が上かもしれないが、それ以上に、特に南半球のニュージーランドやオーストラリアから近く、治安も良い日本は、選手の家族にとっても良い環境として好まれていることが、日本を選ぶ理由の1つになっている。
さらにトップリーグは過密日程ではなく、スーパーラグビーと違い、移動時間や距離も短い。日本のラグビーはフィジカルよりもフィットネスやスピードを重視する傾向にあることもあり、ベテランの外国人選手にとっては肉体的負担が比較的少ないことも人気の要因となっていた。
スミスやクルーデンのように、代表を引退したのちに来日するケースもあるが、現役オールブラックスも来日する場合がある。
ニュージーランドは、オールブラックスになるためにはニュージーランド協会と契約し、自国のクラブでプレーしなければいけないという決まりがある。だが、もともとは研究者などの長期休暇という意味の「サバティカル」(sabbatical)という、ニュージーランド協会と契約を保持したまま、リフレッシュや金銭的な理由で1年ほど海外でのプレーを認めるという制度がある。
まさしく神戸製鋼でプレーしたオールブラックスのSOダン・カーターが2008年にこの制度を使ってフランス・ペルピニャンでプレーしたことが走りだ。
サントリーに加入するボーデン・バレット
2019年度のトップリーグで、パナソニックに在籍したLO(ロック)サム・ホワイトロック、2020年度も引き続き神戸製鋼でプレーするLOブロディ・レタリック、サントリーに加入するオールブラックスの司令塔SO/FB(フルバック)ボーデン・バレット、さらにNTTドコモへ入団することの決まったSH(スクラムハーフ)TJ・ペレナラもサバティカルを利用して日本へやってくる。
オーストラリアもニュージーランド同様、ワラビーズになるにはオーストラリア国内のスーパーラグビーでプレーすることが条件となっているが、「サバティカル」が認められるようになった。
2019年度までパナソニックでプレーしていたFLデービッド・ポーコックも2016年にチームに加わったが、2019年のワールドカップ出場のために、2018年、2019年はブランビーズでもプレーしていた。
1月のトップリーグからトヨタ自動車に加入するワラビーズ、そしてオーストラリア代表キャプテンであるFL(フランカー)マイケル・フーパーもサバティカルを利用し日本でプレーするが、少し事情が異なる。
これはオーストラリアラグビー協会の財政問題が大きく影響している。もともとの財政難に加え、コロナ禍の影響でオーストラリア協会の懐事情はさらに厳しくなり、協会も所属のワラターズもフーパーの約1億4千万円と現地で報道されているサラリーが払えなくなってしまったようだ。
苦肉の策として、フーパーのスーパーラグビーの不参加を容認し、オーストラリア代表としてはそのまま招集できるという条件で海外移籍を認めたことで、トップリーグでプレーすることになったといわけだ。
他にも欧州でプレーする選手の噂や、2019年のオーストラリア国内最優秀選手のWTB(ウィング)マリカ・コロインベテも日本でのプレーも噂されるなど、さらなるオーストラリア代表選手の海外移籍の可能性もあるという。
南アフリカは、ニュージーランドやオーストラリアのようなルールはなかったこともあり、現在もヨーロッパを含め、国外でプレーしているスプリングボクスの選手が多い。トップリーグにもスカルク・バーガーを始め、過去にも多くの選手が在籍していた。
特に2015年のワールドカップ以降は、日本のラグビーのレベルが上がっていること、そして南アフリカのラグビーの底上げの意味もあり、コーチ、選手ともに日本でプレーすることに積極的になってきている。
すでに日本でプレーしているFBウィリー・ルルー(元キヤノン、現トヨタ自動車)、CTB(センター)ジェシー・クリエル(キヤノン)ら以外に、2020年度には、昨年のワールドカップで大活躍したWTBマカゾレ・マピンピ(NTTドコモ)、LOフランコ・モスタート(元リコー、現Honda)らが加入する。
HOマークス、今季はクボタでプレー
昨季からNTTコミュニケーションズでプレーしていたHO(フッカー)マルコム・マークスも今度はクボタに移り、引き続き日本でのプレーを選択した。
元スコットランド代表SHレイドロー
また、日本でワールドカップが開催されて、大いに盛り上がりを見せた影響もあり、スコットランド代表で主将を務めたSHグレイグ・レイドロー(NTTコム)など、今シーズンは多くのヨーロッパからの選手も加入する。
昨年のワールドカップ準優勝のイングランド代表からLOジョージ・クルーズがパナソニックに加入し、他にも元イングランド代表SOアレックス・グッド(NEC)、元ウェールズ代表CTBハドレー・パークス(パナソニック)、SOオーウェン・ウィリアムズ(NTTドコモ)とそうそうたる顔ぶれだ。
なお、LOクルーズやSOグッドは所属していたサラセンズが、サラリーキャップの規定違反で来シーズンの2部降格が決まったことも、日本移籍を決めた要因になったようだ。
他にも、SO/CTBコリン・スレイド(三菱重工相模原)、FBマット・ダフィー(Honda)、CTBセタ・タマニバル(東芝)といったオールブラックス経験者や、FLリアム・ギル(NTTコム)やCTBジョー・トマネなど元オーストラリア代表が日本でプレーする。
2020年度、セカンドシリーズからトップリーグで戦うことになるかもしれないトップチャレンジのチームにも、代表経験のある選手がいる。近鉄には昨シーズンからSHウィル・ゲニア、SOクエイド・クーパーといった元オーストラリアのレジェンドが在籍しており、栗田工業には現役オーストリア代表のFLネド・ハニガンが新たに加わる。
いずれにせよ、2020年度、ラストシーズンのトップリーグは日本代表、元日本代表選手だけでなく、ワールドクラスの各国代表選手たちがスタジアムを大いに沸かすことになろう。
カーターは神戸製鋼を去ったが、LOレタリック(右)は今季もプレー
【トップリーグの主な各国代表選手】
※( )内は国と2020年11月9日現在のキャップ数
☆は新加入
★は2019年ワールドカップ出場
◆神戸製鋼コベルコスティーラーズ
・LOブロディ・レタリック(ニュージーランド/82)★
・SOアーロン・クルーデン(ニュージーランド/50)☆
・FBベン・スミス(ニュージーランド/84)☆★
◆サントリーサンゴリアス
・CTBサム・ケレビ(オーストラリア/33)★
・SOボーデン・バレット(ニュージーランド/87)☆★
◆ヤマハ発動機ジュビロ
・FLクワッガ・スミス(南アフリカ/6)★
◆トヨタ自動車ヴェルブリッツ
・NO8キアラン・リード(ニュージーランド/128)★
・FLマイケル・フーパー(オーストラリア/101)★☆
・FBウィリー・ルルー(南アフリカ/61)★
◆NTTコミュニケーショズシャインニングアークス
・FLリアム・ギル(オーストラリア/15)☆
・SHグレイグ・レイドロー(スコットランド/76)★☆
・SOクリスティアン・リアリーファノ(オーストラリア/22)★
◆パナソニック ワイルドナイツ
・LOジョージ・クルーズ(イングランド/45)★☆
・CTBハドレー・パークス(ウェールズ/29)★☆
◆クボタスピアーズ
・HOマルコム・マークス(南アフリカ/33)★☆
・SOバーナード・フォーリー(オーストラリア/70)★
・CTBライアン・クロッティ(ニュージーランド/48)★
◆リコーブラックラムズ
・CTBジョー・トマネ(オーストラリア/17)☆
◆Honda HEAT
・LOフランコ・モスタート(南アフリカ/39)★☆
・FBマット・ダフィー(ニュージーランド/2)☆
◆NECグリーンロケッツ
・FLジャック・ラム(サモア/35)★
・SO/FBアレックス・グッド(イングランド/21)☆
◆東芝ブレイブルーパス
・FLマット・トッド(ニュージーランド/25)★
・CTBセタ・タマニバル(ニュージーランド/3)☆
◆キヤノンイーグルス
・CTBジェシー・クリエル(南アフリカ/46)★
◆NTTドコモレッドハリケーンズ
・SHTJ・ペレナラ(ニュージーランド/67)★☆
・SOオーウェン・ウィリアムズ(ウェールズ/5)☆
・WTBマカゾレ・マピンピ(南アフリカ/14)★☆
◆三菱重工相模原ダイナボアーズ
・LOジャクソン・ヘモポ(ニュージーランド/5)
・SO/CTBコリン・スレイド(ニュージーランド/21)☆
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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