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9月14日(月)、日本ラグビー協会は、ラグビー日本代表の2020年秋シーズンの国際試合および、それに伴う代表活動を行わないことを決定。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当初予定していた時期にトレーニングを開始できなかったことから、選手の安全を守る観点で必要最低限の準備ができないと判断したという。
今回の結果を受けて、日本ラグビー代表のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)と日本ラグビー協会の岩渕健輔専務理事がオンラインで会見を開いた。
岩渕専務理事
まず、岩渕専務理事は「新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、日本ラグビーの各活動が中止を余儀なくされる中で、日本代表チームの活動に関しても、ジョセフHCと何度も検討を重ねてきました。
その過程で、6月、7月に予定されていた国内日本代表戦を中止せざるを得なくなりましたが、この秋の代表戦に関しては何とかしたいという前向きな検討をし、スタッフともども様々な選択肢を模索してきました。
世界トップレベルの代表チームとの試合に向けた準備として選手に課すトレーニングメニューはもちろん、国内のみならず国外での合宿の可否など、ギリギリまで検討をしましたが、想定した環境を作りだすことは難しく、必要最低限の準備が整わないことから、秋の代表活動を断念することになりました。
ファンの皆さまには、日本代表の試合を心待ちにされていたと思います。試合そのものは難しくとも、何らかの形での代表チーム、日本ラグビーの姿をお見せできる機会を創出できるよう努めます」と説明したが、苦渋の決断だったことがよくわかる。
続いてジョセフHCは「私もスタッフも、今年代表としてラグビーの試合ができないことをとても残念に思います。
日本代表に関してはもちろん試合がしたいですし、もちろん集合して一緒にラグビーや合宿をしたいですし、日本代表の強化を続けていきたいですが、それと同じぐらい、やはり選手の安全安心というのを確保してきたいという気持ちもあります」と話した後で、こう続けた。
ジョセフHC
「秋に欧州で行われるオータムネーションズカップに関して、日本代表チームがこれから強化をしていくにあたって、選手たちが必要とする経験を積むにあたっては非常に効果があったと考えますが(その大会に)参加しないということは残念です。
その一方で今年に関してポジティブな点もある。まず選手たちがワールドカップまで、だいぶタイトで忙しい日々を過ごしていた中で、少し一息ブレイクを取るという時間ができたということです。
例えば、リーチマイケルに関しては、手術を受けて、まさに今リカバリーに時間を費やしているところで、そういったケガの選手も多かった中で、1回立ち止まって一息つくということができるという点ではポジティブだというふうに考えています。
まとめとして申し上げると、やはり選手のウェルフェア、安全というのを第一に考えて、今回下した決定というのは正しかったと思っています」
今年、3月にトップリーグ中止後、日本代表としてのどんな活動をしていたかについても指揮官は説明した。
「トップリーグが、ああいった形でキャンセルになった後、50人プラスアルファ、リーチのように手術をしている選手ですとか、ケガの選手もいると思うのでも、そこらあたりを加味して、50人程度の選手を選び、トップリーグ終わってからのS&C(ストレングス&コンディションング)のプログラム等を提供し、フィットネステストに向けて万全の準備をしてもらっていた。
そういった状態で(選手たちが)集合し、テストマッチに向けた準備をして、ワールドカップの後、少しシンボリックになるようなテストマッチができればといったようなことを描いていた。
それができなくて残念であるという一方で、これは私自身と、私のコーチングチームみんなが感じていることですけれども、選手もコーチも、ワールドカップが終わってから非常にモチベーションも高く、コンディショニングを維持しようという気持ちが高かった。
そういった難しい中で選手たちがとても一生懸命取り組んでくれている、モチベーションも高いという姿をもう一度見られたっていうのはすごく、ポジティブな材料だったと思います」。
ジョセフHCは2019年ワールドカップで活躍した選手に続くような、2023年ワールドカップに向けた新しい戦力、若い選手たちの起用方法やそのバランスについても言及した。
「新しい選手を見つけていく、探していかなければいけない一方で、ワールドカップの経験値を持った選手の存在というのは非常に重要だと思っています。
経験を持った選手たちの存在も考えると、本当であればコロナ禍であろうとなかろうと、ベテランの経験を積んできた選手たちは少しブレイクを与えて、もう一度フレッシュに戻ってきてもらうといったことを考えてはいました。
例えば堀江(翔太)選手はワールドカップを3回経験して、経験値を持ったベストプレイヤーのひとりだと思っているのですが、そういった選手の存在というのが、やはり準備の上でも戦っていく上でも非常に大事になってきます。
ワールドカップに向けた最大のゴールに向けて細かいことをやって。(ベテランと若手の)両方を見ていうところになってくると思います。そういう意味ではこれまでと同様、トップリーグをこれからも注意深く見ていきたいと思っています。
今、ラグビーがまったくない状態なので、細かいことを、断定的なことを言うのは非常に難しいが、ざっくりと言って次に選ぶ日本代表の、例えば半分ぐらいが新しい選手であってもいい。そのくらい新しい選手を見ていかないと選手層の厚みというのが出てこないという風にも考えています。
なので、経験がある選手と新しい選手のバランスというところで、ただスコッド全体の中で、20人とか30、40人とかその時の状況で、しっかりと経験を持った選手がどのぐらいいるという数字を見ていきながら、ケガ人がいればちゃんとケガした選手に替われる選手がいるという状況を、2023年には持っていなければいけないと思っています」
最後に、日本代表指揮官は「次のワールドカップ2023年大会に向けて、時間はまだまだたっぷりあると思いますので、もっと強くなった日本代表をお見せできるようにしたいと思っていますし、まずは2021年頭に始まるトップリーグを皮切りに、また日本のラグビーが進んでいくことを楽しみにしていきたい」と先を見据えた。
日本代表として初めてワールドカップベスト8に入った翌年である今年、桜のジャージーの活躍が見られないことは残念でならない。ただ、ジョセフHCを含めて、スタッフ、選手たちはすでに前を向いている。
日本代表選手たちや将来の代表入りを目指す有望な選手たちは、各チームでトレーニングを積みつつ、トップリーグなどでジョセフHCにアピールすることが、2023年ワールドカップへとつながっていく。
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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