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帝京大学の時代が終わった。と、書き出して、すぐ、まさにいま、誤解を招くなあ、と思った。消去しようか。いや続ける。学生ラグビー史の真紅の巨人、帝京が弱く脆くなったという意味ではない。今季、全国制覇を遂げても同じことを記したい。
11月10日。早稲田との関東大学対抗戦の前半。スクラム起点の効果的なムーブ(サインプレー)で、強靭鋭利なランの光る15番、奥村翔がトライを記録した。カウンター攻撃後、裏への的確なキックで切り札の11番、尾﨑泰雅がインゴールを陥れる。自軍投入ラインアウトの捕球に失敗、しかし、こぼれ球の行方が味方して確保、意図せずショートサイドに攻略可能のスペースとタイミングが生じ、また尾﨑がスコア。直後、こんども尾﨑がインターセプトで走り切った。4トライのすべてが「サッと」や「あっさり」と表現できそうだった。
昨年度までの帝京なら、これで、対早稲田に限らず、どの大学との対戦であれ勝利できた。あっけなくトライを奪う力。それこそが群れを引き離す戦績を担保していた。でも、そうはならなかった。早稲田も球さえ手にすればトライを返せる。むしろ仕掛けと仕留めの連動性では、この午後は上回っていた。
帝京からの得失点で25ー17のハーフタイム。先にどちらがトライをものにするかを勝負の分かれ目と見た。帝京、攻める。ノックオン。すかさず早稲田が切り返して、背番号10 、岸岡智樹が空間察知能力と俊足を利してポスト下へ躍り込んだ。ここで心理的な優劣は入れ替わった。
後半29分、1点リードの帝京がトライ。23フェイズの猛攻、スクラムでのP獲得をはさんで、さらに11フェイズを重ね、怪力プロップ、細木康太郎が力攻めを実らせた。ゴール前で獲り切る。ここも帝京の隆盛の象徴だった。「今季も踏襲されている」の解釈も成り立つ。ただし手間がかかったし、なんならバックスでも外をアタックできる、という、ふてぶてしいような駆け引きの気配も薄かった。再び8点先行。それでもJ SPORTSの解説席で、早稲田はここから挽回する、と感じた。実は「たぶん勝つだろう」という言葉も頭をよぎった。
この感覚を言語化するためにコラムはあるのだが、なかなか難しい。過去の蓄積(こういう場合はたいがいこうなる)と現場の雰囲気、具体的には、芝の上にたちのぼる選手の自信や不安、それにいずこより落ちてくる「一滴のひらめき」の融合が予感を呼ぶ。
帝京は、反則を重ね、3点差に詰められ、最後の最後、早稲田の主将、4年後のワールドカップに出場して不思議のない9番、齋藤直人に劇的幕切れのトライを許した。32ー34。当該の対戦の星を落とすのは9年ぶりだった。
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