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ラグビー コラム 2019年11月5日

南アフリカの優勝、日本代表の躍進 ラグビーワールドカップ2019が教えてくれたこと

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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アンソニー・ワトソン

決勝トーナメントも好ゲームが相次いだ。三連覇を狙ったニュージーランド(オールブラックス)は、準々決勝でアイルランドに快勝したが、準決勝でイングランドの激しく前に出るディフェンスに苦しみ、最終的には3位で大会を終えた。王者を下したイングランドは決勝で南アフリカの強力スクラムを軸にした圧力に屈する。2試合連続でベストのパフォーマンスをするチームはなかった。唯一、南アフリカは波が少なく、一戦ごとに成長した。

ラシー・エラスムス監督は、2018年まで南アフリカラグビー協会全体の強化責任者を務めていたが、成績不振にあえぐ15人制の男子代表を立て直すため、2018年3月に監督に就任。シンプルなプランを徹底することで短期間にチーム力をあげた。優勝まで導いた手腕は高く評価され、決勝戦の翌日行われたワールドラグビーの表彰式では、2019年の最優秀コーチに選ばれた。南アフリカは最優秀チームにも輝いている。

ラシー・エラスムス、シヤ・コリシ

表彰後の記者会見で、チーム作りについて問われたエラスムス監督は言った。「成功しているチームは、プレーヤーが意思決定に積極的にかかわっています。南アフリカは、全員が関わっていくシステムができたからこそ勝てたのだと思います」。その言葉が日本代表の躍進と重なった。黒人初のキャプテンとして南アフリカを率いたシヤ・コリシ主将は、エラスムス監督を次のように評した。「いつも私たちに発言権を与えてくれました。それが彼の素晴らしいリーダーシップを示しています。私たちを冷静にさせ、力を結集させてくれました。私がキャプテンになったとき、『フィールドでパフォーマンスするのが君の仕事だ。他のことは私に任せろ』と役割をシンプルにしてくれました」。

南アフリカ代表

アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃後も、人種問題を抱える南アフリカの代表チームが、多様な人種、民族からなるチームで優勝した。南アフリカの人々にどれほど勇気を与えたか計り知れない。競技規則の冒頭に示されてる【ラグビー憲章】には、5つのキーワードがある。その一つ「結束」には、こう記されている。『ラグビーは、生涯続く友情、絆、チームワーク、そして、文化的、地理的、政治的、宗教的な相違を超えた忠誠心へとつながる一体的な精神をもたらす』。日本のみならず、世界の多くの人々が、ラグビー精神に共感したはずだ。このスピリットが他のスポーツにも影響を与え、広がっていくことを切に願う。

個人的に印象に残っているシーンがある。日本代表対スコットランド代表戦で、堀江翔太が相手選手と頭がぶつかって出血したときのことだ。ハイタックルの反則ではないかとブーイングが起こったが、タックルしたスコットランドのジョニー・グレイは、堀江が倒れた瞬間に堀江の体に手をやり、「彼は怪我をしている」と手をあげて試合を止めようとしていた。激しいスポーツだからこそ相手を思いやる。ラグビーが大切にする精神だ。南アフリカのテンダイ・ムタワリラは、日本代表戦後、危険なタックルをあびせてしまった稲垣啓太を訪れ、謝罪し、抱き合った。サモアの選手たちはアイルランドのバンディ・アキに危険なタックルを受けながら、彼が出場停止にならないように声をあげた。

ラグビー日本代表

RWC2019は、ラグビーのみならず、人として大切なことを伝えた気がする。悪いことをしたら謝る。きちんと謝罪されたら許す。応援してくれた人、試合ができる舞台を整えてくれた人に感謝する。困っている人に手を差し伸べる。互いの価値観を認め合い、相手の立場を尊重し、共に歩む。観る者を純粋な気持ちにさせてくれる大会が終わった。だから、寂しさが募るのかもしれない。ラグビー界が今後しなければいけないのは、日本代表を強化する機能的な仕組み、ファンを楽しませる場を作ることだが、それよりも大切なのは、今大会で多くの人を感動させたスピリットを発信し続けることだろう。

ラグビーワールドカップ2019 エンディング

© Rugby World Cup Limited 2019

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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