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【FIA フォーミュラE世界選手権 2022第7&8戦・ベルリン:プレビュー】ドイツメーカーのプライドをかけた戦い
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ前戦モナコで表彰台を飾った3人(中央:ストフェル・バンドーン)
多数の自動車メーカーが参戦する電気自動車レース「フォーミュラE」のシーズン8(2021年〜2022年)は大激戦となっています。F1とほぼ同じコースを走ったモナコに続き、2022年5月14日、15日に開催される第7戦、第8戦の舞台はフォーミュラEの定番コースとなっているベルリンのテンペルホーフ空港跡地のサーキットです。
「J SPORTS」では第7、8戦の模様を放送。今回はそのプレビューをお届けしましょう。
今回の舞台はドイツ、ベルリンということで、「メルセデス」、「ポルシェ」にとっては母国開催の重要な1戦です。近年、フォーミュラEには数多くのドイツ自動車メーカーがワークス参戦をしていましたが、「アウディ」と「BMW」がワークス活動から撤退。「アウディ」はエンヴィジョンレーシングに、「BMW」はアンドレッティ・オートスポーツにそれぞれパワートレイン供給という形で残ってはいますが、両チーム共に今季未勝利。やはりデータ解析能力と日々のアップデートが行われる自動車メーカーのワークス体制に比べてハンディキャップがあるのは致し方ないという感じです。
そんな自動車メーカーの関心を呼び込むべく、大幅にパワーアップされ、時速300kmの戦いを生み出す次世代マシン「Gen3」が先日発表されました。来季から使用される共通シャシーと新パワートレイン規定は多くのドライバーからスピードアップに対し、ポジティブな期待のコメントが寄せられています。
「日産」は運営体制の母体であるe.damsを買収し、完全なフルワークス体制で新しいシーズンに挑むことを発表しましたし、来季からは新たにイタリアの「マセラッティ」がフォーミュラEに参戦します。
ただ、「メルセデス」は昨年、今季限りでのフォーミュラEからの撤退を発表していますし、自動車メーカーのフォーミュラEに対するアプローチは近年、激変しているのが現状です。
その「メルセデス」が前戦のモナコでは優勝を飾りました。激しいトップ争いからライバルのトラブルにも助けられ、ストフェル・バンドーン(メルセデス)が今季初優勝を獲得。メルセデスとしても開幕戦サウジアラビア以来の優勝となりました。
ベルリンのコースレイアウト
これで単独のランキング首位はストフェル・バンドーン(メルセデス)=81点となり、ランキング2位にジャン・エリック・ベルニュ(DSテチータ)=75点、ランキング3位にミッチ・エバンス(ジャガー)=72点とポイントリーダーがまた変わることになりました。今季限りで撤退ということで最後の母国レースとなる「メルセデス」はチームランキングでも首位につけた状態でベルリンの戦いに挑みます。
一方、「ポルシェ」は前戦モナコではパスカル・ウェーレイン(ポルシェ)がトップを走行しながらローズヘアピン手前でストップ。アンドレ・ロッテラー(ポルシェ)と2台共にリタイア、無得点に終わるというウィークエンドになり、メルセデスとは非常に対称的な結果で母国ラウンドを迎えることになりました。
ポルシェは来年以降、WECなどのスポーツカーレースにも復帰する予定ですし、将来的にはF1への参戦も噂されています。メルセデスがF1で苦戦する一方で、未来のモータースポーツ活動を推し進めているポルシェ。ドイツ・ベルリンの戦いは両社のプライドをかけた戦いが楽しめそうです。
その舞台となるベルリンのテンペルホーフ空港・市街地サーキットは、元ベルリン国際空港の跡地を利用したコースです。2021年の開催はありませんでしたが、コロナ禍でレースが相次いでキャンセルされた2020年はレイアウトを変更しながら一気に6レースを開催したこともありました。
ランキング首位のストフェル・バンドーン(メルセデス)も、ランキング2位のジャン・エリック・ベルニュ(DSテチータ)も2020年の連続レースで優勝を飾っており、元F1ドライバーの2人はベルリンでのレースでも軸になっていく存在でしょう。
ベルリンで強いチームはDSテチータで、2020年は6戦中3勝をマークしています。フランスのDSオートモービルのワークスチームであるDSテチータですが、ジャン・エリック・ベルニュ(DSテチータ)含め今季はまだ勝利がありません。同チームはシーズン開幕のサウジアラビアこそ低調な成績に終わったものの、それ以降は徐々に復調してきているので、母国ドイツのメーカーを撃破できるか注目です。
今回は土日の2レース制で行われ、5月14日(土)=第7戦が左回り、5月15日(日)=第8戦が右回りの異なるレイアウトで行われるのも興味深いところ。土日のそれぞれのレースで勢力図が変わる可能性もあり、優勝をかけた争いはもちろんですが、年間チャンピオンを考えれば、ベルリンでいかに多くのポイントを重ねられるかが今後の鍵になるでしょう。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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