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【スーパーバイク世界選手権 第8戦ラグナセカ プレビュー】~コークスクリューを制圧するのはカワサキかヤマハか?
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ「FIMスーパーバイク世界選手権」はアメリカ合衆国へ。第8戦はカリフォルニア州のラグナセカにある「WeatherTech Raceway Laguna Seca」での開催です。ラグナセカはこれまで日本の自動車メーカー、マツダがネーミングライツを持ち「Mazda Raceway」として知られていましたが、今年から自動車のフロアマットなどのメーカー「ウェザーテック」が冠スポンサーになっています。毎年恒例のアメリカラウンドとして6月22日(金)~24日(日)に開催されるレースの模様をJ SPORTSでは6月25日(月)にオンエア。また、J SPORTSオンデマンドでも配信します。
さて、このアメリカラウンドはジェットコースターのように急激に下る名物セクション「コークスクリュー」を持つ、ライダーの勇気が試されるコースとしてよく知られています。MotoGPでも数多くの名勝負がありました。しかし、近年MotoGPはテキサス州オースチンに舞台を移していますので、ラグナセカはヨーロッパベースのレースシリーズとしては「スーパーバイク世界選手権」の名物コースとなっています。
シーズン中にやってくるフライアウェイ戦であり、特異な環境ということもあり、このレースでは過去15年の歴史で多くのウイナーが誕生しています。そのウイナーに名を刻んでいるのがトム・サイクス(カワサキ)、チャズ・デイビス(ドゥカティ)、ジョナサン・レイ(カワサキ)らのライダー達。その内、サイクスとデイビスは過去にそれぞれ3勝ずつあげています。実は過去3勝というのが歴代でも最高の勝利数で、これは現役中にラグナセカ・マイスターとしてこのコースで盤石の強さを見せることが難しいことを意味します。そういう意味では誰が勝つか分からない面白さがあると言えるでしょう。逆に言うと、サイクス、デイビスの2人は4勝目、5勝目の記録に達することができるチャンスでもあるわけです。
前戦チェコ・ブルノでもまたヤマハが速さを発揮しました。マイケル・ファンデルマーク (ヤマハ)のドニントン2連勝に続き、今度はブルノのレース2でアレックス・ロウズ(ヤマハ)が優勝。ファンデルマーク も続き、1-2フィニッシュを成し遂げました。波に乗った2人は夏の「鈴鹿8耐」への参戦も決まりました。ヤマハにとって良い流れが来ているだけでなく、昨年までは優勝に至るまであと何歩も足りなかったYZF-R1のポテンシャルがいよいよ本物になってきたと言えます。
このヤマハの躍進が今後シーズンとしてどう影響してくるのかにも大いに注目が集まりますが、残り6ラウンドでヤマハが完全にドゥカティを上回っている状況はランキング首位のジョナサン・レイ(カワサキ)にとっては非常に良い状況と言えるかもしれません。現在ランキング首位のジョナサン・レイ(カワサキ)=270点、2位のチャズ・デイビス(ドゥカティ)=205点、3位のマイケル・ファンデルマーク (ヤマハ)=196点という状況ですから、レイが大きくシリーズポイントでリードを築いている状況。現時点での直接ライバルとなるデイビスをヤマハが抑えてくれれば、まだまだ余裕を持って後半を戦うことができます。
ただ、ラグナセカ、ミサノ(イタリア)と続くレースではレイもファンデルマークも可能な限りのポイントを稼いでおきたいところでしょう。というのもミサノの後、彼らは鈴鹿8耐に参戦するという大仕事が待っているからです。カワサキ、ヤマハそれぞれのワークス体制とも言える熾烈な戦いが予想されており、こなすべきメニューが多く、走り込みが必要になってきます。その分、怪我のリスクも高まりますから。8月に「スーパーバイク世界選手権」のレースが無いので時間の余裕はありますが、シーズンという意味ではラグナセカとミサノは彼らにとって間違いなく重要度の高いレースと言えます。
2017年のレース1のウイナーはチャズ・デイビス(ドゥカティ)、レース2はジョナサン・レイ(カワサキ)、ポールポジションはトム・サイクス(カワサキ)という結果になりましたが、ここにヤマハの2人がどう入り込んでくるかが今回のレースの最大の注目ポイント。ちなみにマイケル・ファンデルマーク (ヤマハ)はホンダ時代の2016年に4位がベスト、アレックス・ロウズ(ヤマハ)は2016年のヤマハ初年度に5位がベストになっています。ここ最近はラグナセカでは英国人ライダーが優勝を続けているという状況もありますから、オランダ人のファンデルマークは優勝を飾ることができるでしょうか。
地元アメリカ人ライダーとしてはジェイク・ガニエ(ホンダ)とパトリック・ジェイコブセン(ホンダ)が参戦。2人とも今季はシングルフィニッシュを達成できていないという不調ぶりですので、ここは地元マジックで今季ベストを狙って欲しいところでもあります。またワイルドカード参戦でAMAスーパーバイクのジョシュ・へリン(ヤマハ)が参戦します。
昨年以上の混戦、接戦が続く「スーパーバイク世界選手権」がラグナセカのコースでどんなバトルを展開するか?一団となってコークスクリューを駆け下りてくる姿にも期待したいアメリカ戦です。
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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