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サッカー フットサル コラム 2023年4月14日

日立台が赤く染まった日~ある実況者のホームゲーム~(再掲載)

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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実は千葉戦を終えた後、山崎はあるグループにLINEでメッセージを送っている。そのグループとは熊本の中継スタッフ。千葉戦と水戸戦に関わってくれたスタッフへの感謝はもちろん十分に感じているが、『先に復帰してすみません。早くみんなでワーワー言いながら中継したいです』というメッセージを送信した。「そうしたら、みんなも『早く中継したい』『私もです』と。だから、いつもの解説の方と、いつものフロアディレクターさんと、いつものリポーターと、いつものカメラマンと、いつもの音声さんと、いつものアシスタントと、いつもの場所でワーワー言って、熊本の人たちがゴール裏にいてというのが、やっぱり自分が帰る場所だし、熊本の人たちにとって『Jリーグに戻ってきたんだ』ということだと思いますね」と山崎は言葉を紡いだ。

照明はとっくに消えている。誰もいなくなった日立台の記者席で長い時間に渡って話してくれた山崎へ最後に聞いてみた。「こういうことがあって、改めて『ロアッソの実況をできるのは俺しかいない』と思いますか?」と。少し考えて、山崎はこう言った。「『俺しかいないよ』とはあまり思わないですけど、残り定年退職まであと20年という中で、この地域のクラブが熊本の人たちと一緒に力を届けたり、届けられたり、パワーを交換しながら、どうやって復興していくのかという姿を伝えていくのが、たぶん今後20年のアナウンサーとしての仕事だと思っています。地震があったから良かったなんて決して思わないですけど、自分には10年分と地震があった後も取材をさせてもらっている蓄積がありますからね。僕がアナウンサーとして心掛けているのは『料理があったらお皿になりましょう』『絵があったら額縁になりましょう』『お酒があったらグラスになりましょう』『花があったら花瓶になりましょう』と。別に僕の顔とか名前とかはどうでも良くて、その起こっていることをちゃんと伝えるということなんですよ。そうすれば見ている人や聞いている人にとって『自分も頑張ろう』という力になるかもしれないので、だから僕はスポーツアナウンサーをやっているんです。大きくて重たい荷物を背負ったなと思いますけど、そういう仕事を今後もちゃんとやっていこうと思っています」。

熊本の地にロアッソのホームゲームが帰って来ることを、全国のサッカーファミリーが待っている。どんどん自分だけの“ホーム”を増やし、どんどん全国各地に友人を増やしていく山崎をうらやましく思っているであろう、熊本の中継スタッフたちもその日が来ることを待っている。そして、自分のあずかり知らない所で勝手に他のスタジアムと比較され、きっと少し機嫌を損ねているに違いない“うまスタの7階”が、山崎の帰ってくる日を誰よりも待ち侘びているに違いない。

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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