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サイクルロードレース コラム 2026年8月28日

ポガチャル、あわやのコースアウトも3勝目。危険を示唆したマスが総合2位に|ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 レースレポート:第6ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ブエルタ・ア・エスパーニャ

マスとの一騎打ちに勝利し大会3勝目、ポガチャル

第81回ブエルタ・ア・エスパーニャは8月27日、アルコセブレ〜カステジョン間の177kmで第6ステージが行なわれ、首位のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)が3分32秒遅れの総合3位エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム)との一騎打ちを制した。ポガチャルは今大会3勝目、大会通算6勝目。最後の下り坂の危険性をポガチャルに伝えたマスは、勝負に敗れたものの総合2位に浮上した。

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最後の峠はダート。下りは超デンジャラス

第6ステージは4つの峠が設定されていて、最難関とは言えないが立派な山岳コースだ。40.6km地点にカテゴリー2級のプエルト・デラ・セラテラ、66.3km地点にカテゴリー3級のコル・デラ・バンデレタ、129km地点にカテゴリー2級のアルト・デシエルト・デラス・パルマスがあり、157km地点に位置する最後のプエルト・エル・バルトロ(カテゴリー1級)は頂上まで3kmのところから合計1.9kmの砂利道区間と最大20%の勾配があり、カステジョンへの急な下りでフィニッシュする。

ステージ前半から激しいアタック合戦が繰り広げられた。2017年にステージ1勝しているNSNサイクリングチームのアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)は、今シーズン限りで引退することをスタート時に表明していて、この日は勝負に出た。16km地点で飛び出すと、デカトロン・CMA CGM チームのレオ・ビジオー(フランス)が加わった。メイン集団からは2人に合流しようと激しいアタックが繰り広げられた。ピナレロ・Q36.5プロサイクリング チームのワルテル・カルツォーニ(イタリア)だけが最終的に追いつくことができたが、メイン集団は直後の33km地点に先頭の3人を捕らえた。

最初のプエルト・デラ・セラテラへの登りでアタッカーが抜け出そうとするが不発に。続くコル・デラ・バンデレタへの登りでNSNサイクリングチームのジョージ・ベネット(ニュージーランド)、ウノエックス・モビリティのアンドレアス・クロン(デンマーク)、チーム ピクニック・ポストNLのハイス・レイムライゼ(オランダ)が抜け出した。バーレーン・ヴィクトリアスのサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)も山頂直前で追いついてきた。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

先頭4人に追走が加わり、先頭集団が形成された

2つ目の峠を下った谷で逃げ集団ができ、さらに12人のアタッカーがこの先頭集団に加わった。カルロス・カナル(スペイン、モビスター チーム)、ワウト・ファンアールト(ベルギー、チーム ヴィスマ・リースアバイク)、トーマス・グローグ(英国、ピナレロ・Q36.5プロサイクリング チーム)、ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)、パトリック・コンラッド(オーストリア、リドル・トレック)、ラムセス・デブライネ(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)、ジャンマルコ・ガロフォリ(イタリア、スーダル・クイックステップ)、ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)、ハネス・ウィルクス(ドイツ、チューダー・プロサイクリングチーム)、ホセ・ディアス(スペイン、ブルゴス・ブルペレットBH)、ラルス・クラップス(ベルギー、ロット・アンテルマルシェ)、ウルコ・ベラーデ(スペイン、エキポ ケルンファルマ)だ。

ポガチャルが危険な下りでミスコース!

この中で総合成績が最も上位なのはベルギーのヤングライダー賞対象選手デブライネで、ポガチャルから4分44秒遅れの12位でこの日をスタートしている。ポガチャルを擁するUAEチームエミレーツ・XRGが第1集団を追うメイン集団のペースを握った。中間スプリントポイントはファンアールトが先行してポイント賞の20点を取ったが、アルト・デシエルト・デラス・パルマスの上りでファンアールトが逃げ集団から脱落。大きな牽引力を失ったことで先頭とメイン集団の差は2分40秒を超えることはなかった。

レースはやはり最後のプエルト・エル・バルトロで大きな展開を迎える。デブライネが先頭でペースを上げ、砂利道区間に単独で進入。その後ろではポガチャルがライバルを引き離す。ポガチャルは頂上まで3kmの地点でデブライネを捕まえ、振り切る。レースの先頭に躍り出たポガチャルが残り24kmで独走を開始したのだ。取り残されたライバル選手たちの追走集団からマスが飛び出し、頂上直前でポガチャルに追いつき、頂上をわずかの差ながらトップで通過した。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

1級山岳プエルト・エル・バルトロの未舗装区間の上り

「頂上では本当に驚いた」と、この瞬間の胸中をレース後にポガチャルが語っている。
「エンリクがロケットのように私を追い抜いていったんだ。チーム無線で私が後続に40秒差をつけていることは聞いていて、エンリクの名前は全く出てこなかった。追い抜かれた時は少しショックだった」

3分21秒遅れの総合2位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、3分57秒遅れの総合7位フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロン・CMA CGM チーム)、そしてデブライネが30秒差で峠を通過してダウンヒルを開始した。

この下り坂は狭くて予測不可能な急コーナーの連続だ。ポガチャルの先を走るマスが右手で「スピードを抑えていこう」という合図を送る。ポガチャルもそれを確認したはずだが、下り坂の1つでカーブを曲がり損ね、コースアウトしてしまった。道路脇の不整地に突っ込んだが落車することはなく、ヒヤリとする程度で済み、すぐにマスに追いついた。残り10km地点で、3人の追走選手はタイム差を15秒まで縮めたが、3分45秒遅れの総合5位でヤングライダー賞トップのオスカー・オンリー(英国、ネットカンパニー・イネオス)は1分以上遅れてしまった。

マスとポガチャルはラスト1kmまで協力し合った。その後ろでは3人の追走者が総合6位のリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)と総合14位のアロルド・テハダ(コロンビア、XDS・アスタナ チーム)に追いつかれた。マスとポガチャルはステージ優勝を目指して最後は1対1のスプリント勝負を展開し、ポガチャルが先着した。デブライネは46秒遅れの3位に入った。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

フィニッシュ地点までマスとポガチャルは協調しながら向かう

こうしてマスを破ったポガチャルはこの大会で3度目のステージ優勝を果たした。グランツールデビューで世界を驚かせた2019ブエルタ・ア・エスパーニャでも3勝しているが、今大会はモナコでの第1ステージで勝利し、初日から総合1位のマイヨ・ロホを着用し、絶対的な強さを見せつけている。2019年の最初の勝利は第9ステージで、3勝目は第20ステージ。ところが今回は、最初の6ステージ(うち1ステージは悪天候でレース中止)のうち3つで勝利。これは2007年のオスカル・フレイレ(スペイン)以来の偉業だという。

ポガチャルは強いけど、調子を上げてベストを尽くしたい

「逃げ集団をそのまま行かせる計画だったが、逃げ集団が形成されるまでに2時間近くかかってしまったので、結局ステージの半分ほどをチームでコントロールするしかなかった。ジョアン・アルメイダとケヴィン・ヴェルマークが素晴らしい働きをして集団をまとめてくれたおかげで、ジェイ・ヴァインとパブロ・トレスが後半の登りで先頭に立ち、私に完璧なアタックのチャンスを与えてくれたので、ステージ優勝を狙うことができた」とポガチャル。

「マスは下り坂のことを熟知しているだろうと思っていたので、向かい風の中、最後の10kmを彼と一緒に走れたのはありがたかった。ボトルの水はもうなかった。スプリントで勝てると確信していた。マスが全力で走ってくれたことに感謝したし、私もゴールまで全力で走った。とにかくマスに脱帽。素晴らしいレースだった」

これまで長い距離を残して独走状態に持ち込んだポガチャルに追いつける選手はほとんどいなかったが、残り24kmの地点で全員を振り切ったポガチャルに最後の山頂の直前で追い抜いたのがこの日のマスだ。ポガチャルは最後のダウンヒルで危うく落車しそうになったが間一髪でリカバーした。この日最も力強いクライマー2人がフィニッシュまで協力したのだから、首位ポガチャルを除く総合成績に変動が生じたのは当然だ。ボーナスタイムも獲得したマスは3分34秒遅れの総合2位となり、4分21秒遅れで3位に後退したログリッチを上回った。

「ポガチャルは強いが、勝てるチャンスがあれば貪欲に狙いにいく」とマス。
「現状はポガチャルが頭一つ抜けているが、自分たちも一歩一歩調子を上げてベストを尽くす。もちろん今日も勝ちたかったが、スプリントではポガチャルが一枚上手だった。それでもチームとしていい動きができている。総合2位に順位を上げることができたし、コンディションがいいので非常に満足している」

ヤングライダー賞トップのオンリーはこの日1分38秒遅れの8位集団の最後尾、区間12位でなんとかゴール。総合成績は5分37秒遅れの7位と2つ順位を落とした。この日活躍したデブライネが区間3位のボーナスタイムも獲得し、ヤングライダー賞争いで3秒差に詰め寄ってきた。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

地中海が眼下に広がるロケーション

「かなりきつかった。砂利道が思ったより長かった。おそらくここで少しペースを上げすぎたせいで、頂上付近でその代償を払ったんだと思う。下りは自分のペースで進んだ。正直なところ、ゴールまでの向かい風の中では一人で走りたくなかったから、マティアス・スケルモース(リドル・トレック)とセップ・クス(チーム ヴィスマ・リースアバイク)のグループが追いついてきたときはかなり安心した。彼らと一緒に引っ張ろうとしたんだけど、途中で痙攣が始まってしまって、どうにもならなかった」とオンリー。

「デブライネは実力のあるライダーなので驚かない。でもまだ2週間以上残っているので、最終的に3秒差になるようなことはないと思う。確か僕たちは同い年だったと思う。ジュニア時代に彼とレースをしたのを覚えている。ドーフィネでは一緒に逃げ集団に入り、彼はステージ2位だったと思う。実力のあるライダーであることは知っていたけど、今日の走りはスゴかった」とライバルをたたえた。

第6ステージを終えて個人総合、ポイント賞と山岳賞のトップはポガチャルが守っている。第7ステージは本格的な山岳ルート。5つの峠が控え、山頂フィニッシュとなる。「ステージはテルエル県を経由してアラゴン州に入り、最終登坂の前にカテゴリー2級のサン・ラファエル峠が待ち構えている。ゴールは有力選手間の実力差を決定づける可能性が高い」と大会ディレクターのフェルナンド・エスカルティン氏。

文:山口和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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