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サイクルロードレース コラム 2026年8月26日

タデイ・ポガチャル、すべてが始まった場所へ赤い王者として帰り着く|ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 レースレポート:第4ステージ

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ブエルタ・ア・エスパーニャ

50.3kmの独走勝利で今大会2勝目、ポガチャル

王者の威を示す一撃。50.3kmもの独走勝利。赤い衣を身にまとったタデイ・ポガチャルは、すべてを一瞬で断ち切り、今大会ステージ2勝目を悠々と手に入れた。

ステージ2位には2分39秒もの大差をつけた。総合2位に対するリードも、早くも3分21秒に広がった。スペインに入国する前に、スペイン一周の「ラ・ロホ」争いは、完全に決着がついてしまったのかもしれない。

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「先のことなんて誰にも分からない。ただ、こうして良いリードを築けたから、それをコントロールしていくために、毎日ベストを尽くすだけ。どうにもできないことが起こったら、コントロールしようがない。とにかく僕らは戦い続けなきゃならない。厳しい展開にもなるだろう。でも僕らのチームは本当に強い。準備は万端だ」(ポガチャル)

孤立する前に、ポガチャルは自らの脚でひとりになった

アンドラの空は晴れていた。フランスの山で予定されていた今大会最初の山岳ステージは、激しい雹に見舞われ、レース半ばで中止に追い込まれた。舞台をピレネー山脈の小国へ移したプロトンは、前日の消化不良を晴らすべく、104.8kmの超短距離走を猛スピードで走り出した。

ポガチャルのライバルたちは、戦う前から勝負を諦めていたわけではない。

ヴィスマ・リースアバイクは、逃げに複数滑り込む作戦に出た。スタート直後から上り始めた1級山岳エンバリラで、黄色いジャージが代わる代わる飛び出す。やがて出来上がった大きな逃げに、大量4人を送り込んだ。現パリ〜ルーベ王者ワウト・ファンアールトや、第2ステージのスプリント勝者マシュー・ブレナンも、難関山岳で果敢に逃げを牽引した。

タイム差が1分に広がると、今度はデカトロン・CMA CGMが動いた。メイン集団の先頭で隊列を組み上げ、凄まじいテンポを刻んだのだ。ジロ・デ・イタリア総合2位のフェリクス・ガルを筆頭に、大会最高標高2407m地点まで、がむしゃらなまでの加速を続ける。勢いのままに長い下りへ突入すると、あっさり逃げを飲み込んだ。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

アンドラでは天候に恵まれた

UAEチームエミレーツ・XRGは、序盤のアタック合戦ですでにアシストを数人使い果たしていた。本来なら最終補佐役のジョアン・アルメイダも、メカトラをきっかけに集団から脱落。そのうえデカトロンの猛攻にさらされ、エンバリラ山頂にたどり着いた時点で、ポガチャルの脇にはわずか2人のアシストしか残っていなかった。

それでも続く1級山岳ベイシャリスで、UAEは再び制御を試みる。ブエルタで2年連続山岳賞に輝いたジェイ・ヴァインが、集団先頭でペースを上げた。しかし、やはりデカトロンが、主導権を奪い返す。

「最初の上りからすでにペースが速くて、2つ目の上りでは、麓から全力で踏んでいた。デカトロン勢の背後につけるよう、ジェイが僕を前に行かせてくれた時、思ったんだ。総合争いのライバル全員を相手に、孤立させられたくはない、と。そうなると、みんなで僕を倒しにかかってくるだろうから」(ポガチャル)

だからポガチャルは、自らひとりになる方を選んだ。思い切って前へ飛び出した。行く手には、いまだ1級山岳2つと3級山岳が立ちはだかる。フィニッシュまで、まだ50.3kmも残っていた。

すべてが始まった場所へ、赤い王者として帰り着く

突如として前方へと躍り出た赤ジャージの後輪に、ガルだけが素早く飛び乗った。5月のイタリアで、総合覇者ヨナス・ヴィンゲゴーハンセンのアタックに唯一反応できたのも、このオーストリア人ピュアクライマーだった。その時に得た教訓がある。「相手のペースに巻き込まれて、燃え尽きてはならない」。ガルはすぐさま自分のペースへと切り替えた。

ポガチャルは完全なる独走態勢に入った。今年のストラーデ・ビアンケでは、79kmもの独走勝利を飾っている。2024年秋には、初めての虹色ジャージに向かって残り100kmでアタックし、ラスト50kmをひとりで走り切った。ただ、今回は、グランツールなのだ。いまだ4日目でしかなく、明日も、2週間先も、レースは続く。

とはいえ、7月のツール6日目にも、全長43kmの独走を成功させている。トゥルマレ山頂を単独で越え、2位ヴィンゲゴーに2分38秒差をつけて山頂フィニッシュを制した。もちろん、そのまま3週目の最終日まで調子を落とさず、史上最多タイ5枚目のマイヨ・ジョーヌを持ち帰った。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

孤立する前に独走を選んだポガチャル

今回は、わずか1kmで20秒引き離した。2つ目の山頂を通過する頃には、余裕は約1分半に広がった。ポガチャルは淡々とテンポよく走り続けた。3つ目の山頂では、リードは3分以上に開いていた。

さすがに最終峠では少し足取りが重くなった。下りでより慎重にハンドルを操る姿も見られた。それでもフィニッシュ手前300mで最後の水分補給を行う余裕と冷静さは、失っていなかった。

人生初めてのグランツールとなった2019年のブエルタで、すでに区間3勝を挙げ──記念すべき1勝目は、ここアンドラだった──、今年も初日の個人タイムトライアルで早々に1勝しているポガチャルが、マイヨ・ロホ姿で初めて手にしたステージ勝利。グランツールの区間は37に増え、キャリア通算では129勝目に達した。

「どの距離から仕掛けたとか、どの場所で勝ったとか、そういうことにはそれほどこだわっていない。僕にとっては、どの勝利も『最高』のものなんだ。でも、ここアンドラで上げた初めての勝利の日のことは、きっといつまでも忘れることはできないだろう。たくさんの素敵な思い出が詰まってる。だから、アンドラでこうして再び勝つことができて……しかも赤いジャージ姿で勝てたなんて、本当に素敵だ」(ポガチャル)

ポガチャル以外は僅差の激戦、総合2位にログリッチが浮上

ポガチャルから遅れること2分39秒、2位集団がフィニッシュに飛び込んだ。総合2位との差は一気に3分21秒へ。開幕から4日目、実際に走行した日数は3日、総走行距離はわずか316.3km。過去6度グランツールを制したポガチャルといえども、これほど早い段階で分単位の差をつけたことはない。

この日登場した4つの山岳のうち3つを首位通過し、初めて「青玉」の岳ジャージにも袖を通した。独走中に谷間の中間ポイントを首位通過し、当然フィニッシュでもポイント満点を収集。マイヨ・ベルデも悠々とキープした。まさにポガチャルの一強状態。一方で2位以下の座を巡る争いは、肉体と精神の壮絶な消耗戦となった。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

2位争いは熾烈を極めた

ポガチャルが前方へと遠ざかっていき、残された者たちがひとつにまとまると、再びデカトロンが集団の先頭に立つ。グレゴール・ミュールベルガーが強烈なペースを強い、残り34km、2位集団は9人に絞られた。

そこからは分裂と再結合を繰り返す。まずはガルが先攻し、昨年のツールで最後まで新人賞を争ったオスカル・オンリーが追随する。2kmほど先で、ブエルタ総合4勝プリモシュ・ログリッチも合流を成功させる。ブエルタ表彰台4度のエンリク・マスと、3年前のブエルタ総合覇者セップ・クスも、流れに加わった。

背後では、7年前のジロ王者リチャル・カラパスが、必死の追走を続けていた。後輪にマティアス・スケルモース 、ヤルノ・ウィダー、そしてミュールベルガーが張り付いていたが、誰1人として協力しようとはしない。

対する前の5人も、駆け引きばかりを繰り返し、スピードは一向に上がらない。その後の下りの先の、残り13km前後で、9人は再び集結した。

最後の上りで、またしてもミュールベルガーが鞭を入れる。たまらずスケルモースが後退した。さらにガルが畳みかける。そこまで最後尾で全員の様子を密かに窺っていたログリッチも、加速で応じた。ここでカラパスが、ついに力尽きた。

勝負は6人のスプリントへ。チーム総出で積極的に動いてきたガルが、ここでも真っ先に仕掛けた。しかし2年前のジロU23版総合覇者にして、ネオプロ20歳のウィダーが、ライン手前ぎりぎりで追い抜いた。同タイムでオンリー、クス、マス、ログリッチの順で続いた。

この2位集団から18秒遅れでカラパスは1日を終え、そこから20秒遅れてスケルモースとミュールベルガーがフィニッシュ。ヴァインはさらに20秒遅れだった。

ポガチャルから3分21秒遅れの総合2位には、ログリッチが浮上した。総合9位までには、この日2位争いを演じたエース級が順当に並び、総合2位から総合10位ヴァインまでの差はたったの50秒。ポガチャルとの差は大きく開いたものの、2位以下はひどく混沌としている。

「グランツールにおいては、勝負は終わったなどと絶対に言うことはできない。たとえ20分のリードがあったとしてもだ。もちろん僕は良いリードがつけられたし、不満などない。ただ、グラナダまでの道のりは、まだまだ長い」(ポガチャル)

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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