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サイクルロードレース コラム 2026年7月19日

ポガチャル4勝目で総合2位ヴィンゲゴーとの差を開く。フランス期待のセクサスが区間3位で純白ジャージ獲得|ツール・ド・フランス2026 レースレポート:第14ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ツール・ド・フランス

今大会区間4勝目!タデイ・ポガチャル

UAEチームエミレーツ・XRGタデイ・ポガチャル(スロベニア)が7月18日にミュルーズ〜ル・マルクシュタイン・フェルラン間の距離155.3kmで行われたツール・ド・フランス第14ステージで独走勝利。今大会4勝目、大会通算25勝目を挙げた。デカトロン・CMA CGM チームのポール・セクサス(フランス)が38秒遅れの区間3位に入り、ヤングライダー賞のトップに躍り出た。

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ポガチャルは3年前、ここでほろ苦い勝利を修めた

ドイツとスイスの文化と歴史が交錯するフランス最東部での戦い。フランス5大山岳のひとつ、ヴォージュ山系の4つの峠が待ち構える。アルザス地方の工業都市ミュルーズを出発し、まずは36.6km地点をピークとするカテゴリー1級の山岳ポイント、グラン・バロンを上る。「バロン」とはバルーン(風船)の意味で、丸みをおびた形容の山岳につけられる。

ここから下り基調となり、38.1km地点でアーグ峠を通過するのだが、この峠は最後のカテゴリー1級の山岳ポイントとして再登場する。43.9km地点でゴール地点のル・マルクシュタイン・フェルランをいったん通過。ここから大きな周回コースとなるのがこのステージの特徴だ。71.3km地点にカテゴリー2級のパジュ峠、94.4km地点にアルザス地方の象徴であるカテゴリー1級のバロン・ダルザスが出現する。

実はこのコースには、2026年のルートのハイライトのひとつが隠されている。それが最後となる4番目の山岳、アーグ峠。自転車道に改造された森林トレイルがコースに採用されたのだ。11.2kmにわたって平均勾配7.3%の上り坂が続き、途中には急勾配の箇所もある。頂上を通過すればゴールまではわずか6kmだ。

2023ツール・ド・フランス第20ステージもル・マルクシュタイン・フェルランがゴールだった。このとき優勝したのはポガチャルだ。ただしポガチャルは総合順位でヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、チーム ヴィスマ・リースアバイク)に7分以上の大差をつけられていて、総合2位として一矢を報いるだけの勝利だった。

ツール・ド・フランス

マイヨ・ブランはフアン・アユソからポール・セクサスへ

アップダウンの連続するそんなタフなレースは、スタートするとさまざまな思惑を持つアタッカーが積極的に動いた。レース開始からときおり土砂降りとなり、天候も気まぐれだった。レースが始まってすぐの12.6km地点に中間スプリントポイントが設定されていたので、ヤスペル・フィリプセン(ベルギー)を擁するアルペシン・プレミアテックが集団を支配。1着通過のフィリプセンはポイント賞の25点を獲得し、2着20点のマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)に迫ったが、最終的にこの日はピーダスンがそのままポイント賞のリーダージャージ、マイヨ・ヴェールを守りきった。

スプリントポイントを通過後まもなく、集団はグラン・バロンの麓に到達し、逃げ集団を巡る激しい争いが繰り広げられた。EFエデュケーション・イージーポストのベン・ヒーリー(アイルランド)は登りの早い段階でアタックを仕掛け、逃げ集団の原動力となった。チームメートのリチャル・カラパス(エクアドル)、アレックス・ボーダン(フランス)、ゲオルグ・シュタインハウザー(ドイツ)を含む約30選手が先頭集団に加わった。

前日に総合4位に浮上したピナレロ・Q36.5プロサイクリング チームのトーマス・ピドコック(英国)も積極的で、チーム ヴィスマ・リースアバイクはマッテオ・ジョーゲンソン(米国)、ブリュノ・アルミライユ(フランス)、ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー)を先頭集団に送り込んだ。結果的にはピドコックは前日の疲れが露呈して脱落。終わってみれば総合9位に後退してしまった。

パレパントルとカラパスが山岳賞を取りに行く

これまでのツール・ド・フランスの山岳でステージ優勝を果たした実力者もこの日は動き始めた。スーダル・クイックステップのヴァランタン・パレパントル(フランス)がカラパスを抑えてこの日最初の山頂を制覇。2つ目の山岳賞ポイント、パジュ峠も1着パレパントル、2着カラパス。さらに3つ目のバロン・ダルザスも1着パレパントル、2着カラパス。パレパントルは山岳賞の合計で43点となり、この時点では山岳賞1位のポガチャルを1点上回った。最終的にはポガチャルが4つ目のアーグ峠を1着通過して10点を獲得したので、パレパントルは逆転されてしまうのだが、3位38点のカラパスを含めてこれから連続する山岳ステージで赤玉デザインの山岳賞ジャージ、マイヨ・ア・ポワ・ルージュを狙ってくるのは必至だ。

ツール・ド・フランス

カラパスとパレパントルが山岳ポイントをめぐる熾烈な争い

先頭ではヒーリーが全力を出して引っ張り、カラパスがステージ優勝を争う最高のチャンスを作った。ウノエックス・モビリティは双子のトビアスとアンデシュのヨハンネセン(ノルウェー)が第1集団にいて、最後のアーグ峠を登り始める。これに対してデカトロン・CMA CGM チームは総合順位を守るために後続集団のペースを上げ、さらにヴィンゲゴーが加速し、山頂まで2.5kmの地点で逃げを潰した。

1kmも進まないうちに勾配は16%に達し、ここでアタックしたのがポガチャルだ。ヴィンゲゴーとセクサスが追い、頂上を通過してゴールへと続く緩やかな坂でポガチャルのアシスト役、イサーク・デルトロ(メキシコ)が差を詰めてきた。しかしポガチャルはそのまま単独でツール・ド・フランで25回目のステージ優勝を果たす。一方、デルトロはセクサスを抑えて2位になり、またしてもチームでワン・ツーフィニッシュ。セクサスは38秒遅れのステージ3位だったが、ボーナスタイム4秒を獲得。ヤングライダー賞のトップだったリドル・トレックのフアン・アユソ(スペイン)を総合成績でわずか3秒ながら逆転して、ツール・ド・フランスで初めて純白ジャージを獲得した。

史上最年少でリーダージャージを獲得したセクサス

開幕時から注目されていたセクサスは、これまで大きく遅れたステージがなく、この日の3位で、総合順位を1つ上げていよいよ5分19秒遅れの総合4位に。総合3位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とはわずか15秒差だ。

こうして純白のマイヨ・ブランを獲得するのだが、ツール・ド・フランスの歴史において象徴的な4賞ジャージ(マイヨ・ジョーヌ、マイヨ・ヴェール、マイヨ・ア・ポワ・ルージュ、マイヨ・ブラン)を着用した最年少の選手となった。

「信じられないような気分だ。このツール・ド・フランスはとてつもなく過酷なレースで、今日のステージも例外ではなかった。でも、僕はそういう展開を楽しんでいる。この結果を出すために、僕自身も懸命にトレーニングを積んできましたし、チーム全体が多大な尽力を重ねてくれた。今日は全員が素晴らしい仕事をして僕を支えてくれた。この2週間、毎日そうしてくれたように」。デカトロン・CMA CGM チームがセクサスのコメントを発表している。

ツール・ド・フランス

デルトロが区間2位、セクサスは区間3位

「マイヨ・ブランを着用し、表彰台を争える位置にいられることは本当に喜びでしかない。これからのレースに向けて大きな自信になるが、ツール・ド・フランスはまだ長く、やるべきことは山積みだ。まずは明日のプラトー・ド・ソレゾンへの美しいステージが待っている。そこでも今日と同じような走りができればと思っている」(セクサス)

マイヨ・ブランと言えば、大会史上単独最多4回の受賞歴があるポガチャルだが、最多タイとなる5度目のマイヨ・ジョーヌ獲得も現実味を帯びてきた。3年前の勝利は総合優勝争いに敗れた悔しさのほうが大きかったが、この日のル・マルクシュタイン・フェルランでマイヨ・ジョーヌを着用して制したポガチャルだけに、その時のうっぷんを晴らす快勝だ。

「今日は沿道に駆けつけてくれたファンに感謝の気持ちを伝えたい。丘の上にこれほど大勢の観客が集まっている光景は、忘れられないものになった。こんな光景は初めて見た。選手同士は互いに大きな敬意を抱いており、素晴らしいレースを繰り広げられたと思う。このようなレースができたことがうれしい」とポガチャル。

コースの終盤をポガチャルはよく知っていて、サイクリングをするには最高のコースだと語り、このステージは最初から目標にしていたという。

「デルトロが最高の状態ではないことは分かっていたので、最後の2kmでなにか動きがあるか様子を見ていたけど、デカトロン・CMA CGM チームが登りで本当に厳しいペースで走り、選手たちは一人ずつ脱落していった。私は調子がよかったので、最後の2kmで仕掛けてみようと思った。沿道の観衆の声援は頂上まで行くための大きな後押しになった。調子がよかったので、このチャンスを逃すまいと思っていた」

大会の記録をことごとく塗り替えていくポガチャル。7回のツール・ド・フランス出場でステージ優勝25回となり、ついにフランスのアンドレ・ルデュックと同じ記録となった。ポガチャルより上位にいるのは、英国のマーク・カヴェンディッシュ(35)、ベルギーのエディ・メルクス(34)、フランスのベルナール・イノー(28)の3人だけだ。

ツール・ド・フランス

大勢の観客がヴォージュ山地へと詰めかけた

翌15ステージは大会第2週のフィーナーレとなる山岳区間。第14ステージのゴールからかなり南下したジュラ地方をスタートし、ゴールはもうアルプスの一角。屹立した山岳が多くなり、風船のようななだらかさは見当たらない。136km地点にポイントとなりそうなラ・クロワゼット峠がある。選手たちはボルヌ山塊の村々を抜ける狭い道を登り、プラトー・ド・ソレゾンを目指す。距離11.3km、平均勾配9.1%のカテゴリー超級山岳がゴールだ。

「明日は少し難しいだろう。我々にとって厳しい一日になるだろうが、戦う準備はできているし、どうなるか見てみよう。明日は多くの選択肢があるだろう」とポガチャル。厳しい山岳をことごとく独走してしまうマイヨ・ジョーヌ。総合2位のライバルたちはどんな戦法で逆転をねらうのか? 山岳賞ジャージ争いも本格化し、その動きに総合上位選手がどう連動していくか? セクサス、アユソ、デルトロのマイヨ・ブラン争いも絡みつつ、総合3位までというシャンゼリゼの表彰台もにらみながら、翌15ステージは注目すべき点がたくさんありすぎる。

文:山口和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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