人気ランキング

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム一覧

サイクルロードレース コラム 2026年7月19日

「障壁」など関係なかったポガチャル ヴォージュの山道を制し、次に見据えるものとは|ツール・ド・フランス2026

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
  • Line
ツール・ド・フランス

試走もしてこのステージに備えていたポガチャル

その表情にすべてが表れていた。ツール・ド・フランス2026第14ステージ、コースに初めて採用された1級山岳コル・デュ・アーグの頂上手前1.5kmでアタックしたタデイ・ポガチャルUAEチームエミレーツ・XRG)は、勝負どころと踏んでいたこのポイントで“予定通り”に踏み込んだ。鬼気迫るその顔には、ここ一番で見せる集中力と本気で勝ちにいく姿勢が映っていた。今大会4勝目を挙げ、総合リードの拡大にも成功。「この先まだ何があるか分からない」と慎重な言葉を残すマイヨ・ジョーヌだけど、5度目の大会制覇へ大きな一歩となるのは間違いない。絶対王者の自信は、さらに深まっている。

J SPORTS オンデマンド番組情報

関連リンク

  • サイクルビレッジ | J SPORTS【公式】

    検索機能追加で探しやすくなりました。自転車乗るなら「サイクルビレッジwiki」、自転車乗り達のための情報交換、レース観戦やサイクリングの話題で楽しめる「トークルーム」、「写真部」はライドの思い出を共有、絶景を見に行きたくなること間違いなし!ほか「サイクル誰クル?」など人気コンテンツが盛りだくさん

ヴォージュ山脈でも勝利にこだわった

逃げを最後まで行かせるつもりはなかった。ヴォージュ山脈が舞台となったこの日、4つあるカテゴリー山岳のうち3つが標高1000m超の高峰を越えるルートは、自分たちにピッタリだと考えていた。ポガチャルが率いるUAEチームエミレーツ・XRGは、早い段階からメイン集団をコントールしながら、よりレースを厳しいものにしようとプランを立てた。

その通りに展開し、最終登坂のコル・デュ・アーグへ達する頃には集団の人数を35選手ほどまで絞り込んだ。

長距離牽引をこなしたアシスト陣が役割を終えると、ポガチャルとイサーク・デルトロでレースを締める。流れはいつもと同じだけれど、いかにしてレースをクローズするかは2人に託される。いや、むしろポガチャルにすべてが託されている。

「今日はとりわけ、逃げた選手たちが素晴らしかった。彼らがレースを一層高いレベルに引き上げてくれたし、僕たちは苦しめられた。でも僕が今日、ものすごく調子が良かったことは確かだった。だからどうしても勝ちたかった。チームメートが作ってくれたレースを締めくくるのが僕の役割。ファンの熱狂の中で最高の終わり方を演じられたことは、キャリアの中でも指折りの出来事になると思う」

ツール・ド・フランス

フィニッシュラインでは力強いガッツポーズも

大観衆の待つル・マルクシュタインへとやってくると、フィニッシュ前100mで勝利を確信し人差し指を掲げた。それこそが、第14ステージに賭けていた何よりの証拠だ。

ポガチャルの勝利まで紡いだコル・デュ・アーグのストーリー

フランス紙・レキップによれば、峠の名「アーグ(Haag)」とはゲルマン語起源で“天然の障壁”を意味するという。緑深い山岳地帯を表現しているとされ、実際に数年前まではほとんど切り拓かれていない山だった。上り口の町・サン=タマランの町長、シリル・アストは、「林業で使われる小道でしかなかった」と説明する。

未舗装で、冬になれば凍結する悪路。夏には観光客が多く訪れる街で、この道を、この山を活かせないかと人々は考えた。そうして導き出されたのが、サイクリングロードだった。決まってしまえば行動は早い。プロジェクトを立ち上げると、ツール・ド・フランスのレースディレクターであるクリスティアン・プリュドム氏に思い切ってメールを送った。

「この道を、ツール・ド・フランスのルートに組み込んでみませんか?」

送信の2時間後にはプリュドム氏からコンタクトがあったという。それが2021年4月のこと。

ツールへの機運が一気に高まると、道路整備に必要な資金はあっという間に集まった。開通したのは2023年。3年後、伝説的な瞬間を迎えようとまでは町の人々も思ってはいなかっただろう。

ツール2026開幕の100日前には、サン=タマランで記念イベントが行われた。そこに現れたのはまさかのポガチャル。実際はイベントに合わせて街を訪れていたわけではなく、コース試走が目的だった。声をかけると笑顔で応じたチャンピオンに、アスト町長は一瞬で魅せられてしまった。

100日前の試走が、あのアタックにつながっている。きっとポガチャルは、コースを確かめながら勝負すべきポイントを押さえていたのだろう。山を切り拓くことから始まったアーグのストーリー。ひとまずの結末は、「ポガチャルには“障壁”など関係なかった」といったところだろうか。

先を見据えるポガチャル「タイムトライアルにはかなりのエネルギーを注いで準備をしてきた」

話をポガチャルに戻そう。フィニッシュでは体いっぱいに喜びを表現したポガチャルだけど、まだまだ気は緩めない。

「僕が2023年のツールで負けたとき、タイムトライアルでヨナス(ヴィンゲゴーハンセン)に2分近く差を付けられて、次のステージではさらに7分近い大差を許してしまった(第16-17ステージ)。たった1日や2日ですべてが変わり得るのがサイクルロードレース。いまはまだ何も決まっていないんだ」

ツール・ド・フランス

すっかり勝ちパターンとなったポガチャルの独走

それでも、狙い目に据えていたステージを勝って、視界が明るくなったことは確かなよう。先々のステージへのプランも口にしている。

「ここまでは素晴らしいレースができている。明日(第15ステージ)も自信を持って走れると思うけど、休息日をはさんでの個人タイムトライアル(第16ステージ)への集中力も高めていきたい。タイムトライアルにはかなりのエネルギーを注いで準備をしてきたので、この日だけはワンデーレースのつもりで全力を尽くしたい。アルプスについて考えるのはそれからだよ」

第14ステージを終えた時点で、最大のライバルであるヴィンゲゴーとの総合タイム差は4分30秒。ポガチャルのコンディションや、ここまでのレース展開を見る限り、数字以上に両者の差は大きいように思える。

文:福光 俊介 from Le Markstein, France

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクルロードレースを応援しよう!

サイクルロードレースの放送・配信ページへ