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マウロ・シュミット「今日は僕が一番ラッキーだった」 最大57人の逃げをモノにしステージ初優勝|ツール・ド・フランス2026 レースレポート:第13ステージ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介マウロ・シュミットが嬉しいツール初区間優勝
何ステージぶりか忘れてしまうほどに久々に逃げが容認された(前回逃げ切りが決まったのは第9ステージ)。最大で57人がリードしたレースは、最後2人のステージ優勝争いに。マウロ・シュミット(チーム ジェイコ・アルウラー)がアロルド・テハダ(XDS・アスタナ チーム)に先着し、ツールでは初めてとなるステージ優勝を挙げた。
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「今日は僕が一番ラッキーなライダーだった。僕ひとりではなく、チーム一丸となってつかんだ勝利だよ。この瞬間のために今までたくさんの努力をしてきたけど……勝てたことが信じられない。言葉にならないよ」(シュミット)
逃げに入ったピドコックに総合ジャンプアップのチャンス
2日連続の平坦ステージを終えて、山岳地帯へと入っていく。第13ステージは今大会最長の205.8km。スタートからしばらくは平坦区間が続いて、150kmを過ぎたところからヴォージュ山脈へと足を踏み入れる。3級山岳コル・デ・クロワ(登坂距離5.1km、平均勾配4.8%)、1級山岳バロン・ダルザス(8.9km、6.9%)を連続して越えると、フィニッシュ地ベルフォールをめがけての長距離ダウンヒル。
この日はスタート地点に、2023年シーズンでレーサーキャリアを終えたティボー・ピノが顔を見せた。中間スプリントポイントが置かれるメリゼが生まれ故郷で、いまは同地で農園を営んでいる。ファンを募っての観戦ツアーを行って、古巣のグルパマ・FDJユナイテッドのパドックを案内していた。
レースに目を向けると、前日のフィニッシュ前クラッシュで鎖骨を折ったフェルナンド・ガビリア(カハルラル・セグロスRGA)とイェノ・ベルクムース(ロット・アンテルマルシェ)が出走を取りやめ。落車とは関係なく、フリッツ・ビーステルボス(チーム ピクニック・ポストNL)はチーム判断によって大会を去っている。
ここまでのステージと同様に、リアルスタートからアタックの応酬。その中には、ポイント賞のマイヨ・ヴェールを着るマッズ・ピーダスン(リドル・トレック)の姿も。一時は5人が数十秒のリードを得たが、30km地点を前に集団がキャッチ。ふりだしに戻った直後に今度は25人ほどが先行。大多数のチームが選手を送り込んだことによって、逃げ容認ムードに。さらに人数が増えて、37人にまで膨らんだ。
厳しいサバイバルが延々と続いた
メイン集団ではなおも前をうかがう動きが発生し、今度は20人で構成される追走グループが生まれる。彼らは50km近く追いかけ続けた末に、ついに先頭グループへ。全出走ライダーの3分の1近い、57人が先行した。
137.8km地点に設けられた中間スプリントポイントは、ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・プレミアテック)、ピーダスン、ビニヤム・ギルマイ(NSNサイクリングチーム)の順に通過。スプリントステージは実質終わっているが、彼らはマイヨ・ヴェールへまだまだ意欲的だ。
やがてヴォージュの山道に入ると、ピナレロ・Q36.5サイクリング チーム勢が先頭グループの牽引を始める。総合タイム差11分49秒で10位につけるトーマス・ピドコックにジャンプアップのチャンス。コル・デ・クロワの頂上で、メイン集団に対して8分近いタイム差を得ており、バーチャルではあるが個人総合トップ3が視野に入ってきている。
数的な有利を生かしたチーム ジェイコ・アルウラー
1級山岳バロン・ダルザスを上り始めると、ケヴィン・ヴォークラン(ネットカンパニー・イネオス)がアタック。これをきっかけに6人が追随し、後にピドコックらも合流。先頭は9人まで絞られる。頂上が近づいてきたところでピドコックがアタックし、そのまま下りへ。集団とのタイム差はなおも8分台。
下りで合流した選手も含めて、10人が先頭でパックを組んで終盤戦へ。その下りのさなか、フィニッシュまで16kmを残したところでシュミットとテハダが抜け出した。完全にペースに乗せた2人は、後続との差を20秒程度に保ってフィニッシュへと急ぐ。
「プラッピー(ルーク・プラップ)が後ろで他チームの選手たちを抑えてくれていたし、ブリング(マイケル・マシューズ)もスプリントに備えていた。ベン(オコーナー)も上りで良い動きだった。チームとしては最高の展開で、僕としては行けるところまで逃げ続けるだけだったんだ」(シュミット)
抑え役となったプラップらの働きが利いて、シュミットはテハダと一緒にフィニッシュ前まで逃げ続けられた。フィニッシュ前1.5kmでテハダを前に出したシュミットだけど、相手を探っている間に前に押し出されるような形になってしまった。
1級山岳バロン・ダルザスは大賑わい
「正直追い込まれていた。彼(テハダ)はとても巧くて、僕は前に出ざるを得なかったんだ。それもあってスプリントタイミングが少し遅れた。でもここまで逃げてきたのだから、僕にできることは全力で踏み込むだけだった」(シュミット)
横並びのマッチスプリントは、わずかな差でシュミットに軍配。ツールでは初のステージ優勝だ。
シュミット「メンタル面で成長した」
26歳のシュミットは、これがプロキャリア14勝目。そのうち5勝を今季だけで挙げている。ツアー・ダウンアンダーやラ・フレーシュ・ワロンヌといったビッグレースでも2位に入っていて、トップライダーとして十分な戦績を有している。グランツールでの勝利は、2021年のジロ・デ・イタリア第11ステージ以来。
「昨年のツールでは第11ステージで2位になっているのだけど、あのときと今日は似たシチュエーションだった。最初から全力で走って、最後はマッチスプリント。今日は残り4kmで脚を攣りかけて、“また2位か……”と思ったよ」(シュミット)
ピンチを乗り切った末の大勝利。レース後のプレスカンファレンスでは、勝因のひとつに精神面の充実を挙げた。
「ツアー・ダウンアンダーでの個人総合2位はかなり大きな自信になった。あれで僕もやれると確信したんだ。それから連鎖的に良いリザルトを得られるようになった。過去には大事なレースで集中力がもたず、チャンスをふいにしてしまったこともあった。だけど今年はそんなことがないんだ。今日も集中して走って勝てたから、メンタル面で成長したことは確かだろうね」(シュミット)
今大会は逃げライダーになかなかチャンスがめぐってこないけど、数少ない機会をモノにしてチームとしての目標を達成した。
「チームとしては最低でも1勝はしたいと思っていた。めぐってきたチャンスを生かすしかないと思っていたけど、それが今日だった。目標が達成できて最高の気分だよ」(シュミット)
ポガチャルが仲間のためにボトル運び
完全に別のレースになったメイン集団。ピドコックに総合ジャンプアップの可能性が高まっているとあって、終盤はレッドブル・ボーラ・ハンスグローエとリドル・トレックが主に牽引。前者は個人総合3位にレムコ・エヴェネプールが、後者は同4位にフアン・アユソを送り込んでいる。できることなら順位は落としたくない。
総合大幅ジャンプアップのピドコックは敢闘賞
ピドコックはステージ3位でまとめて、個人総合上位陣のフィニッシュを待つ。集団はシュミットから7分32秒差でレースクローズ。結果、ピドコックはアユソまでを追い抜いて、個人総合10位から4位までジャンプアップした。
「今大会の目標としてはステージ優勝なのだけど、総合成績も狙えるのなら意識して走りたい。タイムトライアル(第16ステージ)でロスするだろうから、山岳で耐えなければならないね。明日以降もベストを尽くすよ」(ピドコック)
マイヨ・ジョーヌはタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)で変わらない。この日は途中でチームメートのためにボトル運びをする姿も。次に待つ本格山岳2連戦へ、仲間を盛り立てることも忘れない。
「集団後方に下がった際に、チームカーから予備のボトルをいくつか受け取ったんだ。それをメンバーに渡そうと思ってね。チームメートはあれを10分おきにやってくれているのだと思うと、本当に頭が上がらないよ。どれほど過酷な仕事をしているのか、身をもって知ることになった」(ポガチャル)
第2週のハイライトになるであろう2日間へ向けては、何を思うだろうか
「ヨナス(ヴィンゲゴーハンセン)を含め、たくさんのアタックがあることを予想している。僕たちは焦らず、ペースをキープして走ることを心掛けたい。特に明日(第14ステージ)はチームとして相性の良いコースレイアウトだと思うよ。いまから楽しみだ」(ポガチャル)
第14ステージはヴォージュの高峰へ。総合系ライダーにとって大きな1日がやってくる。
文:福光 俊介 from Belfort, France
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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