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「最後のスプリントチャンス」はメルリールが今大会3勝目 フィニッシュ前は落車で混乱|ツール・ド・フランス2026 レースレポート:第12ステージ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介メルリールが今大会3勝目
第2週のなかばにして、スプリンターにとっては「最後のチャンス」を迎えた。2年前までであれば“世界スプリント選手権”ことパリ・シャンゼリゼでの大決戦があったけれど、昨年からコースが変わって趣きが異なっている。ピュアスプリンターにとって大事な、大事な1日はティム・メルリール(スーダル・クイックステップ)に光が差した。今大会3勝目も、ライバルたちの間からスプリントラインを見つけての猛加速だった。
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「昨日(第11ステージ)よりも良い結果を出そうと気合いを入れて臨んでいた。失敗(15位)から学んだことを今日は生かそうと思っていた。それが実行できれば勝てると信じていたんだ」(メルリール)
ヴェストロフールが今大会3度目の逃げ
中央山塊に別れを告げた第11ステージを経て、この日からは東へと針路をとる。スタート地はフランスきってのサーキット「シルキュイ・ヌヴェール・マニ・クール」。1991年から2008年までF1フランスGPが開催され、ミハエル・シューマッハが8度の優勝。フィニッシュ地シャロン・シュール・ソーヌを目指すルートは、中盤以降に細かな高低の変化はあるが、3つあるカテゴリー山岳はいずれも4級。平坦にカテゴライズされるステージが少ない今大会だが、ここを逃すとスプリンターたちにとってはただただパリを目指す苦行の日々に入ってしまう。実質最後のスプリントチャンス、レース距離は179.1km。
サーキットを1周回パレード走行し、公道へ出たところでリアルスタート。アタックに次ぐアタックはなかなか集団の容認を得られず、出入りを繰り返したまま25km以上進んだ。そんな流れを変えたのは、今大会たびたび逃げを試みているバティスト・ヴェストロフール(ロット・アンテルマルシェ)。彼の飛び出しを見た集団は、意識的にペースを落として、慌ただしい状況に一段落。ヴェストロフールにとっては、これが3度目の逃げである。
45.8km地点に設置された中間スプリントポイントでは、1位通過のヴェストロフールから1分40秒後にメイン集団が到達。マイヨ・ヴェールのマッズ・ピーダスン(リドル・トレック)が先着し全体2番手としたが、スプリント時にヤスペル・フィリプセン(アルペシン・プレミアテック)の進路をふさいだとして降着の運びに。それをチームから告げられたピーダスンは、審判車両まで下がってしばし確認。結果的に降着とはならず、2位通過が認められた。20点の加算はジャージをキープするのに大きな意味を持つことだろう。
この日もスプリンターチームにコントロールされた逃げとなった
55km地点を前に、集団からダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)、エウェン・コステュー(グルパマ・FDJユナイテッド)、マッテオ・ヴェルシェ(トタルエネルジー)が抜け出した。3kmほど進んだところでヴェストロフールに合流し、4人逃げとする。
逃げの人数が増えたとはいえ、長く逃げ続けるにはタイム差が厳しい。フィニッシュまで60kmを残したところでヴェストロフールが他の逃げメンバーを引き離して単独先頭に立ったけれど、それも長くは続かない。メイン集団では残り35kmから次々アタックがかかって、ヴェストロフールは吸収。インパクト十分な走りは誰もが認めるところで、文句なしのステージ敢闘賞となった。
愛息に捧ぐステージ優勝
クイン・シモンズ(リドル・トレック)らのアタックをきっかけに、一時は最大14人が集団に対してリードを得る。逃げ切りにかけてハイペースを刻んだが、スプリント狙いのチームが集団を率いてアタッカーを封じていく。最後のカテゴリー山岳である4級の上りで再びシモンズが前に出たが、やはり集団へと引き戻された。
リドル・トレックの波状攻撃には、ピーダスンも加わった。マイヨ・ヴェールは何度も先頭に立ったけど、彼が動けば多くの選手がチェックに走る。決定打を奪えず、やがてXDS・アスタナ チームが集団のコントロールを占めた。
そこからはセオリー通りともいえるスプリントへのムードに。しばしXDS・アスタナが握った主導権は、残り1kmでアルペシン・プレミアテックへ。十分な人数を有して先頭に上がれば、あとはフィリプセンでレースをクローズするのみである。
最後の数キロに潜んでいた鋭角コーナーやラウンドアバウトを抜け、スプリントへの集中力が高まっていく。ところが、残り400mでフェルナンド・ガビリア(カハルラル・セグロスRGA)が他選手と接触し落車。連鎖的に次々と巻き込まれてしまい、その中には前日勝者のソーレン・ヴァーレンショルト(ウノエックス・モビリティ)の姿も。
インタビューにこたえるメルリール
この難を逃れた前方の約20人によるステージ優勝争い。十二分なお膳立てをしてもらったフィリプセンだが、いまひとつ伸びを欠く。オラフ・コーイ(デカトロン・CMA CGM チーム)やミラン・フレンティン(コフィディス)が横に並び、さらにはその間からメルリールが上がってきた。この日も一番の加速を見せてトップへ。一番にフィニッシュラインを通過した。
「息子が観に来てくれていたんだ。だからどうしても勝ちたかった。きっとこの勝利を覚えていてくれるだろうし、何かの折に映像で見せてあげたい。家族のために走って勝つなんて、こんな素敵なことはないよ」(メルリール)
メルリール「パリまで生き残ること、それが僕の仕事」
ここまでの2勝では、最終局面でのポジショニングに苦労していたメルリール。この日はレース終盤で無線が不調に陥り、戦況が耳に入っていなかったとか。
「無線が聞こえなくなって何人が逃げているのか分からなかった。その後にはリードアウト役のヤスペル・ストゥイヴェンがパンク。ヤスペルとは“落ち着いて走ろう”と言い合って、改めてフィニッシュに向けて集中を高めたんだ」(メルリール)
レース後のプレスカンファレンスでは、今後のステージで勝利を狙うのは脚質的に難しいことを認めた。険しい山々が待っているだけに、スプリンターたちがパリを目指すべきなのかどうか……との見方もあるが、メルリールの答えは明確だ。
「パリに行くよ。そんな簡単に諦めたくないんだ。“何としてもパリに行くんだ!”と強い気持ちを持った者同士でグルペットを形成できれば、きっとうまくいくと思う。去年は自分自身との闘いだったけれど、それと比べれば体調は良いし回復もできているからね」(メルリール)
ポディウムには愛息と登壇し、バックステージではタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)とサイン交換もした。次のステージからは、また違った“勝負”に挑む。
「生き残ること。僕に課されている大きな仕事だ」(メルリール)
第13ステージはヴォージュ山脈へ
大規模なクラッシュによって多くの選手が足止めとなったが、「5kmルール」によってメルリールと同タイムフィニッシュ扱いに。個人総合上位陣は落車を回避し、次へと進む。ポガチャルのマイヨ・ジョーヌも安泰だ。
マニクール・サーキットでパレードラン
「まずは明日(第13ステージ)だね。レース距離は長いし、フィニッシュ手前に大きな山も控えている。トリッキーなコースだね。それに下りフィニッシュだ。ベストな形で走り終えてから、その後のステージを考えたい」(ポガチャル)
その第13ステージは、今大会最長の205.8km。ヴォージュ山脈に入り、1級山岳バロン・ダルザスへ。上り終えたら、フィニッシュ地ベルフォールめがけてのダウンヒル。総合系ライダーたちの見せ場となるのか、違った展開が待っているのか。落車による影響がいくつかのチームから発表されているが、第一報ではガビリアとイェノ・ベルクムース(ロット・アンテルマルシェ)がともに鎖骨骨折とのこと。両選手は大会を去ることになる。
文:福光 俊介 from Chalon-sur-Saône, France
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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