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サイクルロードレース コラム 2026年7月7日

大事故と2度のツール敗北を乗り越えたヴィンゲゴー ツール2026で「人生の新章」を象徴する走りができるか|ツール・ド・フランス2026

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ツール・ド・フランス

チームタイムトライアル、スタート直前のヴィンゲゴー

ツール・ド・フランス2026は開幕地スペイン・バルセロナを離れ、本来の舞台であるフランスへと入国している。本記執筆時点で3ステージを終えていて、ヨナス・ヴィンゲゴーハンセンチーム ヴィスマ・リースアバイク)がトップと同タイムの個人総合2位。第2・第3ステージではマイヨ・ジョーヌを着用して走った。今年はジロ・デ・イタリアを制し、順調にツール入りしたヴィンゲゴーだけれど、いまに至るまでの道のりは長く険しいものだった。だからこそ、第1ステージのチームタイムトライアルに勝ち、マイヨ・ジョーヌに袖を通した事実は何よりも意義深く、感動的なものであった。

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地面に横たわりながら生きる価値を探った

勝利の瞬間、チームみんなで喜びを爆発させ、その後のポディウムではヴィンゲゴーがエースらしくマイヨ・ジョーヌを受け取った。

その翌日、第2ステージで改めてイエローに映えるジャージを着て現れたヴィンゲゴーだけれど、それは実に3年ぶりのこと。なんと1077日ぶりのマイヨ・ジョーヌだった。

ただ久々のイエローというだけではない。ヴィンゲゴーにとっては、2024年の大事故以来にそれを着るということに大きな意味があった。

同年4月、スペイン・バスク地方で開催されたステージレース、イツリア・バスクカントリーにヴィンゲゴーは臨んだ。絶対的な個人総合優勝候補としてバスクに乗り込み、快調にレースを展開。しかし、事態は第4ステージで急転する。大会後半戦でのジャンプアップをもくろんでいた中、雨に濡れた路面でタイヤをスリップさせ落車。命まで脅かされるほどではなかったとはいえ、複数箇所を骨折し、とてもではないがレースができる状態ではなかった。

ツール・ド・フランス

マイヨ・ジョーヌ姿のヴィンゲゴー

「"死ぬかと思った”といえば大げさなのだろうけれど、これからどうやって生きていこうかとは思ったよ。地面に横たわりながら、僕の人生はどうなっていくのだろう……と。あの瞬間は一生忘れることはないだろうし、人生におけるストーリーとして永遠に残り続けるものだと理解している」(ヴィンゲゴー)

幸いというべきか、いや……奇跡というべきだろう。その3カ月後には戦列に復帰し、ツールを走った。その年を含め2年連続でツールではタデイ・ポガチャルUAEチームエミレーツ・XRG)に敗れたといえ、ヴィンゲゴーは正面から彼と戦ったことに喜びを見出していた。

マイヨ・ジョーヌの再着用は「夢の実現」

それでも……である。ヴィンゲゴーに闘争心はまだまだ残されていた。むしろ、その火は強くなっていく一方だ。2025年秋にはブエルタ・ア・エスパーニャに勝ち、今年は春にジロを制した。「勝利」への手ごたえをつかんで迎えているのが、このツールである。

だからこそ、マイヨ・ジョーヌを着られたことを心から喜んだ。その嬉しさは、初めてイエローを身にまとい、ものすごい勢いでパリの総合表彰台まで駆け上がった2022年大会を超えているかもしれない。

「夢がかなったんだ。あの事故によって、一度は生きるだけで精いっぱいの時期を過ごしたんだ。そのことを思うと、再びイエロージャージを獲得できたなんて、夢の実現と言って良いと思う。苦しんだ日々は、これで終わりだと思いたい」(ヴィンゲゴー)

ツール・ド・フランス

第3ステージスタート前の風景

ロードレーサーとしてのキャリア、さらにはヨナス・ヴィンゲゴーハンセンという男の人生は、新章を迎えた。

ツール王座奪還とダブル・ツールが人生の新章を彩るものに

イエローで走った第2ステージではイサーク・デルトロとポガチャルによるコンビプレーの後塵を拝した。続く第3ステージも2位とまとめたものの、やはりポガチャルの先着を許した。3ステージを終えた段階で、ポガチャルと総合同タイムで2位となっている。

第2ステージ後には「僕に合ったコースレイアウトではなかった」と振り返ったヴィンゲゴーだが、その意味では第3ステージも脚質的には粘りどころだったといえよう。彼にとっての本番は、本格的な山岳。大会初日に手に入れたマイヨ・ジョーヌは手放すことになったけれど、この先にそびえる山岳で奪還を目指していく。

その向こうには……。3年ぶりのツール・ド・フランス制覇と、ジロとの2冠「ダブル・ツール」が視野に入る。ツール2026が人生の新章を象徴するものとすべく、ヴィンゲゴーは戦いを続ける。

文:福光 俊介 from Les Angles, France

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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