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タイム差以上の強さを示したUAE勢 絶対王者ポガチャルがデルトロにツール初勝利をプレゼント|ツール・ド・フランス2026 レースレポート:第2ステージ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介イサーク・デルトロがツール初出場、区間初優勝
フィニッシュで、2人が並んだ。残り1kmでイサーク・デルトロ(UAEチームエミレーツ・XRG)が仕掛けると、チームメートのタデイ・ポガチャルは最大のライバルであるヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(チーム ヴィスマ・リースアバイク)を振り切ってデルトロまでジャンプ。ギラギラと照り付けるスペインの日差しにも劣らない鮮やかなワン・ツーフィニッシュは、大会2日目にしてUAE勢の強さを実証するものに。デルトロはツール初勝利に涙し、ポガチャルはわが事のように喜びを爆発させた。何より、この先の戦いへの楽しみが膨らむレースになった。
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「僕にとってはこれがすべてだよ。最高の気分だ。ここへ来るまでどれほどの努力を重ねてきたか、誰にも想像できないと思う。僕でさえも成し遂げたことが信じられないんだ。この嬉しさをどうやって言葉に表したらよいのだろう」(デルトロ)
ツール最南端のステージ開催地
開幕地バルセロナを彩ったチームタイムトライアルから一夜明け、ロードステージがスタートする。第2ステージは、タラゴナからバルセロナまでの168.5km。スタート地タラゴナにはユネスコ世界遺産に登録される円形劇場があり、薬草系リキュールのシャルトリューズも名物だとか。サイクルロードレースとのかかわりも深く、ブエルタ・ア・エスパーニャやボルタ・ア・カタルーニャでたびたび登場。ちなみに、この日スタート地を務めることによって、ツール最南端のステージ開催地になる。
コースに目を向けると、前半は海岸線を走行し、中盤以降に内陸部へ。勝負どころとなるのが、終盤を占めるモンジュイックの丘を基点とする12.2kmの周回コース。これを2周半する間に、登坂距離1.6km・平均勾配9.3%・最大勾配13%の3級山岳を3回上る。クライマックスは、フィニッシュ前700mから始まる勾配7%の上り。実際に、これらの区間がステージ優勝争いにおける大きなファクターとなる。
レースは3人の逃げで始まった。フェリックス・エンゲルハート(チーム ジェイコ・アルウラー)、フランク・ファンデンブルーク(チーム ピクニック・ポストNL)に、アレックス・モレナール(カハルラル・セグロスRGA)が合流。いくつか追走の動きが見られたものの、いずれも決まらず。先行を容認された3人は、最大で3分30秒程度までリードを拡大。メイン集団ではチーム ヴィスマ・リースアバイクやピナレロ・Q36.5プロサイクリング チームなどがペーシングを担って、先頭3人とのタイム差を少しずつ縮めていった。
エンゲルハートは敢闘賞、モレナールは山岳賞ジャージをこの日の終わりに手に入れた
85.6km地点に設けられた中間スプリントポイントは、モレナールが1位通過。メイン集団ではスプリンターを送り出すべくペースが上がっていて、1分30秒差での到達。ビニヤム・ギルマイ(NSNサイクリングチーム)が先着し、全体4位通過。14点を獲得している。
さらに9km進んだ地点に待ち受けた2級山岳コート・ド・ベゲスもモレナールが1位で通過。カハルラル陣営はスタート前にマイヨ・アポワを狙うと公言しており、有言実行のアクティブさを見せた。モレナールの攻めによって、ファンデンブルークがいち早く後退。エンゲルハートは残ったものの、2人逃げでは集団に対して分が悪い。気が付くとタイム差は1分を切っていた。
勢いが増す集団では、デルトロやポール・セクサス(デカトロン・CMA CGM チーム)にバイクトラブルが発生したが、いずれも冷静にリカバリー。逃げ続けていた2人を残り32kmで捕らえると、そのままモンジュイックの周回へ。数チームが主導権を得るべく前へと上がったが、ほどなくして上りが始まるとUAEチームエミレーツ・XRGがペースメイクを始めた。
殊勲のデルトロへ、ポガチャルが大きなプレゼント
UAEはブランドン・マクナルティが牽引役を務め、集団の人数を絞り込んでいく。最初の半周を終えて、残り2周回としたところで最前線にいるのは約30人。マクナルティの牽きは長く続き、最終周回の鐘を聞いたところでアダム・イェーツへバトンタッチ。後ろにはポガチャルが位置し、マイヨ・ジョーヌでスタートしたヴィンゲゴーやレムコ・エヴェネプール(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、セクサスらが番手を争う。
最後のモンジュイック登坂で緊張感が高まったが、ここでは決定打が生まれず。トビアス・ヨハンネセン(ウノエックス・モビリティ)のアタックも脅威とはならない。20人近くがまとまった状態で、3級山岳頂上からのダウンヒルへと移った。
この下りが流れを一変させた。フィニッシュまで1.7kmのタイミングで、マティアス・スケルモース(リドル・トレック)がアタック。集団が活性化すると、残り1kmを示すフラムルージュ通過のタイミングでデルトロが先頭に立った。
モンジュイックの周回コースには大勢のファンが詰めかけた
「下りでかなりのスピードになることは想定していた。ただ、先頭に出ることまでは考えていなくて、スケルモースをチェックにいったまでなんだ。そこからはタデイに勝負してもらうつもりだったのだけど……まさかあんなことになるとは思ってもみなかったよ」(デルトロ)
猛然とペースを上げたデルトロを、ヴィンゲゴーが追った。さらにポガチャルも加わると、ヴィンゲゴーはマークする相手をチェンジ。この間にデルトロが加速して逃げ切りを試みると、ポガチャルはヴィンゲゴーを振り切ってデルトロまでジャンプ。フィニッシュライン目前でUAEのダブルリーダーが横並びになった。肩を組んでのウイニングセレブレーションは、わずかばかり前に出ていたデルトロがステージ優勝。ポガチャルは意識的に前へ出ず、デルトロに勝利を譲った。
「僕はもう、タデイが率いるチームの一員でいるだけで大満足なんだ。今日のステージだって、彼が勝つべきだったと思う。でもタデイは前に出ようとしなかったんだ。どんな形であれ、僕にとっては夢がかなった瞬間さ。本当にうれしいよ」(デルトロ)
ひとりの走りが国を動かす
大会が始まって以来、スタート地・フィニッシュ地・コース上問わず、メキシコ人の大応援団が駆けつけている。もちろん、デルトロによる効果である。第1ステージでは彼らのあまりの盛り上がりに、チームTTを前にしたポガチャルの準備が手間取った……なんて話もあるけれど、いずれにしてもツールに新しい風が吹いている。ひとりの走りが、国民の心を動かしている。
「スペインにいながらまるでホームコースを走っているような感覚なんだ。プロトンでメキシコ人ライダーは僕だけだけれど、たくさんの国旗を見るとみんなで一緒に走っている気分になれる。彼らにはすごく勇気づけられているんだ」(デルトロ)
そして、ポガチャルとの共闘も原動力になっていると認める。
「彼とチームメートであることを心から誇りに思っているよ。タデイは常にチームをより良くしようと努めていて、僕たちは彼から学ぶと同時に感謝もしているんだ。タデイと一緒に走ることで、僕も強くなれる」(デルトロ)
ステージ優勝の表彰を受けるデルトロ
歓喜したデルトロの横では、自分が勝った時以上に喜びを爆発させるポガチャルの姿があった。いよいよ、UAEチームエミレーツ・XRGが“その気”になってきた。
ヴィンゲゴー「いまを楽しまなくちゃ」
UAE勢のワン・ツーの後ろでは、レムコが3位、ヴィンゲゴーが4位で続いた。ここまでが同タイムフィニッシュ。彼らから3秒差で、スケルモースらがステージを終えている。セクサスやフアン・アユソ(リドル・トレック)らも同じグループだ。
ヴィンゲゴーはマイヨ・ジョーヌこそ守ったものの、フィニッシュでのボーナスタイムをライバルに譲った。どうにも、最終局面では不発だった感さえある。
「今日のコースは得意なレイアウトではなかった。デルトロやタデイと比べると、爆発力に欠けていたのは否めない。残り1kmでデルトロが先頭に立った時点で、僕に勝ち目がないのは分かっていたんだ。今日のデルトロは勝利に値するし、1番を譲ったタデイの寛大さも素晴らしい振る舞いだね」(ヴィンゲゴー)
第2ステージを終えて、総合トップのヴィンゲゴーと2位ポガチャルとは6秒、3位レムコとは15秒、4位デルトロとは16秒。ピレネーへ踏み込む第3ステージでは、どんな結果が待ち受けているだろうか。
「マイヨ・ジョーヌを着て走れることを喜びたい。何か起きるか分からないのが人生なんだ。いまを楽しまなくちゃ。とにかく現状に満足しているんだ」(ヴィンゲゴー)
なお第3ステージは、フランス・ピレネー=オリアンタル県で発生している大規模な山火事の鎮圧を最優先事項とし、レース実施の条件を変更すると主催者A.S.O.が発表。国境越えのステージとなるが、フランス側は無観客とし、関係者によるコース周辺の移動も最小限にとどめるとしている。
文:福光 俊介 from Barcelona, Spain
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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