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レッドブルという翼を手に入れた盤石なレムコ。新天地で狙う総合優勝|ツール・ド・フランス直前コラム vol.8
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかマイヨ・ブラン表彰待機中のエヴェネプール
神童と呼ばれ続けてきたレムコ・エヴェネプールも、26歳の青年となり、自転車選手として成熟の時を迎えた。マイヨ・ブランの資格を昨年限りで卒業し、すでに世界選手権のジャージを4枚、五輪の金メダルを2枚手にしてきた才能の塊が、この先のキャリアを懸けて追い求めるもの。それがツール・ド・フランスのマイヨ・ジョーヌだ。
J SPORTS オンデマンド番組情報
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聖飢魔Ⅱルーク篁参謀が掻き鳴らす サイクル新テーマ曲ついに解禁&チームプレゼンテーションSP Cycle*2026 ツール・ド・フランス まもなく開幕!
配信日時 : 2026年7月4日(土)午後10:15 ~
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配信日時 : 2026年7月4日(土)午後11:45 ~
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配信日時 : 2026年7月5日(日)午後9:00 ~
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今季からはレッドブル・ボーラ・ハンスグローエへ活動の場を移し、資金、組織、そして知見において、これまで以上に盤石な支えを手に入れた。グランツールライダーとしてのポテンシャルを完全に解き放つ瞬間は、確実に、近づいている。
世界最高のタイムトライアリストの、光と影
スーダル・クイックステップで過ごした7年間は、その才能の強烈な輝きと、歯がゆい限界とが交錯し続けた時間だった。
ジュニアで文字通り無双すると、エヴェネプールは18歳の終わりにプロの門を叩いた。わずか1年半前までサッカーに打ち込み、ベルギー年代別代表のキャプテンも務めた異色の経歴の持ち主は、自転車のアンダー23タイトルには目もくれなかった。
選択が正しかったことは、すぐに証明される。プロ1年目の8月には史上最年少でワールドツアー優勝を果たし、秋の世界選手権個人タイムトライアルでは、史上最年少のエリートメダリストとなった。
やがて世界屈指のタイムトライアリストへと成長し、圧倒的な独走力を武器に、ワンデーレースでも数々の勝利を積み重ねた。世界選手権と夏季五輪で、ロードレースと個人タイムトライアルの両タイトルを手にした史上唯一の存在にさえなった。
一方、3週間を戦い抜くグランツールでは、また別の物語が待っていた。初出場となった2021年ジロ・デ・イタリアは、序盤から少々飛ばしすぎた。たしかに大落車から約9か月ぶりの復帰戦だったとは言え、次第に失速し、最終的には落車を機に大会を去った。
プロトン随一のクラシック精鋭軍は、若きエースのために、少しずつグランツール体制へと移行していく。例えば今年のセクサスのように「いきなりツール」という道も選ばず、賢明に、地道に、まずは他のグランツールで経験を積み重ねた。
クリテリウム・デュ・ドーフィネでリーダージャージを纏うエヴェネプール
その歩みは、2度目のグランツールで実を結ぶ。2022年ブエルタ・ア・エスパーニャを制し、ベルギーに34年ぶりとなるグランツール総合優勝をもたらした。
だが、その先も、決して一直線ではない。2023年ジロは新型コロナウイルス陽性により、マリア・ローザをまとったまま無念の途中リタイア。秋のブエルタでは中盤のバッドデーで総合争いから脱落した。それでも誇り高く戦い抜き、山岳賞を手に入れた。
挫折のたびに、エヴェネプールは必ず強くなって帰ってきた。24歳で満を持して臨んだツールでは、総合3位と新人賞を獲得。世界最大の舞台でも、高い実力を証明してみせた。
翌2025年のツールで、しかし再び失意を味わう。後の発表によれば、開幕直前のベルギー選手権で肋骨を骨折していたという。得意の個人タイムトライアルで、後発の選手に追い抜かれる屈辱を喫し、その翌日、エヴェネプールは自転車を下りた。
真の王座を目指して、エヴェネプールの決断
1年以上も前から、水面下では準備が進められていた。2026年シーズンを前に、プロ入り以来所属してきた母国ベルギーの「ウルフパック」に、エヴェネプールは別れを告げた。
新天地に選んだのは、レッドブル・ボラ・ハンスグローエ。そこにはグランツール総合5勝のログリッチと、ジロの総合表彰台のすべての段に上がってきたヒンドレーがいる。チームメイトの総合優勝を支え、自らもジロ総合2位に食い込んだマルティネス。昨季のジロ総合6位で一躍エース候補に名乗りを上げた22歳ペッリツァーリ。そして、昨年のツールで総合3位・新人賞のリポヴィッツ──。
グランツール総合を狙える実力者たちがひしめく、まさに「虎の穴」。エヴェネプールは、自らその只中へ飛び込んだ。
もちろん、生まれながらに王者の資質を備えたエヴェネプールが、「数あるリーダー候補のひとり」に甘んじるはずはない。むしろ、この移籍は、自らが理想とするチームを築き上げる絶好の機会でもあった。
世界一のアルカンシエルと五輪金メダリストの金色ヘルメット
移籍先には専属マッサーと専属メカニックを伴い、グランツールで2度にわたり献身を尽くしてくれたベテランのマッティア・カッタネオも引き抜いた。スーダル時代に指揮してくれた監督も合流し、加えて、パリ五輪で2つの金メダル獲得に導いたベルギー代表コーチも、今年からは年間を通じてレッドブルでエヴェネプールをサポートする。
予算規模ではUAEチームエミレーツ・XRGに及ばないものの、このドイツの強豪が、プロトン屈指の資金力を誇ることに変わりはない。豊富な資本は、最高の機材、最先端のトレーニング環境、一流スタッフ、さらには強力なアシスト陣へと姿を変える。将来的にはアワーレコード挑戦も見据えるエヴェネプールにとって、チームが擁するエアロダイナミクス専門エンジニアのもとで、独走力を磨き上げられることも大きな魅力だった。
チームや環境は変わっても、愛車は変わらない。スーダル時代から苦楽をともにしてきたスペシャライズドとは、この4月に「生涯契約」を結んだ。
沈黙の2か月、その答えは7月に出される
新しいジャージ姿で迎えた2026年シーズン。初戦にエヴェネプールが選んだのは、マヨルカ・チャレンジのチームタイムトライアルだった。もちろん視線の先にあるのは、ツール・ド・フランス開幕ステージ。同じく「ダブルリーダー」を務める予定のリポヴィッツとともに快勝し、新天地でのシーズンを最高の形で滑り出した。
勢いは翌日も止まらない。ラインレース初戦では、いきなり50kmの独走勝利。7月のライバルたちへ向けた、これ以上ない宣戦布告だった。
そのまま4月末まで、濃密な春を駆け抜けた。2月にはプロ通算70勝、個人タイムトライアル25勝を達成。初挑戦ロンド・ファン・フラーンデレンでも石畳に負けず3位に食い込み、アムステル・ゴールドレースでは待望の初優勝を飾った。
もっとも、今年も不運とは無縁ではなかった。UAEツアーではクイーンステージで脚を痙攣させ、リーダージャージを失う。ヴィンゲゴーとの激突が期待されたボルタ・ア・カタルーニャでは、第3ステージで横風分断を利用して飛び出しながら、フィニッシュ目前で激しく落車。その影響もあってか、山頂決戦ではライバルの加速に応じることができなかった。
レッドブルに移籍した2026年のリエージュでは3位入賞
春最後の大舞台、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも試練は続く。ラ・ルドゥットでポガチャルが加速すると、新たな神童セクサスは食らいついた一方、かつての神童エヴェネプールは置き去りにされた。3位争いのスプリントを制し、表彰台だけは死守した。
このリエージュを最後に、エヴェネプールは約2か月間、表舞台から完全に姿を消した。予定していたはずのツール・オーヴェルニュ・ローヌ・アルプを見送り、国内選手権も体調管理を優先して欠場。実戦を重ねながら調子を上げ、6月のツアー・オブ・スロベニアを制したリポヴィッツとは対照的に、自らのリズムで仕上げる道を選んだ。
その間、ヴィンゲゴーはジロ・デ・イタリア制覇で三大ツール完全制覇を達成し、ポガチャルは春の勢いそのままに、スイスで2つのステージレースを席巻した。ただエヴェネプールだけが静かだった。スペイン南部シエラネバダで高地トレーニングを積み、ツールのコースを下見し、体重をギリギリまで絞った。すべては7月のために。
エヴェネプールは野心を隠さない。バルセロナの開幕ステージで、自身初のマイヨ・ジョーヌをつかみに行く。チームを変え、ツールへ懸けた選択は正しかったのか。その答えは、まもなく示される。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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