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アレック・セガールトがセンセーショナルな逃げ切り 23歳がTTステージで上位進出逃した雪辱の大金星|ジロ・デ・イタリア2026 レースレポート:第12ステージ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介ロングアタックで勝利を掴んだアレック・セガールト
スプリントに向けプロトン全体がペースを上げて突き進む脇からの、乾坤一擲のアタック。集団全体の消耗度が高かったなか、本来はタイムトライアルを得意とするアレック・セガールト(バーレーン・ヴィクトリアス)がここぞとばかりに持ち味の独走力を生かす。最後の最後まで集団が追いつくことはなく、23歳が2度目のグランツールで大金星。アフォンソ・エウラリオのマリア・ローザに沸くバーレーン・ヴィクトリアスに、さらなる歓喜が舞い込んだ。
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「まさかジロで勝てるなんて……最高の舞台でこれほどの成功を収められると思っていなかった。正直に言えば、残り3kmをメドにアタックすることは決めていた。今日はずっとそのことを考えていたんだ。ただ、ここまでうまくいくとは僕でさえも思っていなかったんだ」(セガールト)
2つの3級山岳でスプリンターの大多数が後退
ジロ・デ・イタリアは第2週のなかばに差し掛かっている。第12ステージは、インぺリアからノーヴィ・リーグレまでの175km。星2つの平坦コースにカテゴライズされているが、スプリンターたちにとって問題は、中間地点を過ぎてそびえている2つの3級山岳。どちらも楽にクリアできるものではないので、この2つの上りをこなせるかどうかで、スプリントに臨めるかが決まるといえるだろう。もっとも、ここまでの戦いでリタイア者が増えており、レースをコントロールできるチームがあるのかも見ていく必要がある。
ここ数日と同様に、リアルスタートから幾人もが猛然と集団を飛び出していく。しかし、集団もそう簡単に彼らの動きを容認するつもりはなく、10kmほど進んだところでリセット。
逃げが決まったのは、20km地点に差し掛かろうかというタイミング。5人が抜け出して、先を急ぐ。メイン集団では、ユニベット・ローズ・ロケッツやスーダル・クイックステップがペースをコントロール。残り100kmを切ったところで、先頭5人と集団との差は約30秒。すると、集団から数人が飛び出して先頭グループへとジャンプ。前を行くメンバーが再編成され、6人がレースをリードする形になった。
モビスターが上りを利用してペースアップ
その流れが一変したのが、1つ目の3級山岳コッレ・ジョーヴォ(登坂距離11.5km、平均勾配4.2%)へ向かって上り基調になったタイミング。フィニッシュまで80kmを切ったところでモビスター チームが集団を引っ張り、上りを利用して意識的にペースを上げる。これに、多くのスプリンターが苦しめられる。ディラン・フルーネウェーヘン(ユニベット・ローズ・ロケッツ)が真っ先に振り落とされ、ジョナタン・ミラン(リドル・トレック)、さらにはマリア・チクラミーノを着るポール・マニエ(スーダル・クイックステップ)までもがこぼれ落ちてしまう。なお、集団はこの間に逃げていた選手たちをすべてキャッチしている。
コッレ・ジョーヴォを上り終えたところで、マニエらは懸命の追走で集団へと復帰したが、次の3級山岳ブリック・ベルトン(5.5km、6%)で再び後退。モビスターが牽き続ける集団のペースには、スプリンターに限らず大多数のライダーが苦戦。60人程度まで絞られた集団には、スプリント力の高い選手は数える程度。大型スプリンターがいない間にチャンスを得ようと、彼らの復帰を避けたいチームが中心となって集団をコントロールする流れへと転化していく。
そんな中、残り23kmでベン・ターナー(ネットカンパニー・イネオス)がメカトラブルでストップ。この日のステージ優勝候補のひとりが戦線から離れていく。フィニッシュ前13.4kmのポイントに置かれたこの日のレッドブルKMは、集団の一瞬の緩みを見逃さなかったマリア・ローザのエウラリオが1位通過に成功。6秒のボーナスタイムをゲットしている。
それからは、フィニッシュへ向かって集団はひたすら前進。スプリント狙いのチームと危険を回避したいチームとが混ざりつつ、自然とペースが上がっていく。残り7kmでジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)とイゴール・アリエタ(UAEチームエミレーツ・XRG)がアタックを試みたが、1kmともたずに集団へと引き戻されている。
紺碧のリグリア海岸線を走る
「残り3kmにチャンスあり」読みが冴えわたったセガールト
フィニッシュまでは残り5km。ヨナス・ヴィンゲゴーハンセンを確実に前方に位置させたいチーム ヴィスマ・リースアバイクが集団牽引を担う。隊列を伸ばしながら残り距離を減らしていく。そうした流れの中、残り3.3kmでセガールトがアタック。ヴィスマの隊列の脇からスッと前に出ると、その勢いは集団を完全に上回っている。牽引するヴィスマはステージを狙うスプリンター系の選手が控えていないこともあり、セガールトを無理に追う様子にもない。
「スタート前にコースマップをチェックしていたときに、残り3kmあたりにチャンスがあるのではないかと思ったんだ。アタックさえできれば、何か起きるんじゃないかとね。1日中レースペースが速くて、上りではかなり苦しんだよ。でも集団に残ることができたし、レース前のプランを実行できると感じていたんだ」(セガールト)
集団では、数人が追走を試みるも失敗。残り1kmからはウノエックス・モビリティが隊列を組んで集団の最前線へ。彼らが牽くペース次第で、セガールトの運命が決まる。
「自分に何ができるのか考えたときに、今日のような逃げ切り方は可能だと思っていた。特に今日は大きな可能性があった。チャンスがあるならつかみとる……強い意志をもって走っていたよ」(セガールト)
集団は全体的に早掛けでセガールトを追ったが、その差は思うように縮まらない。セガールトは残り100mを切って勝利を確信し右こぶしを握りしめた。そして堂々と、大きなアクションでグランツール初勝利のセレブレーションを演じた。
「クレイジーだよ! 僕にチャンスをくれたチームに感謝しなくちゃね。プラン通りの勝ち方に本当に驚いている。ジロ・デ・イタリアは初出場だけど、大好きなレース。ジロ・ネクスト・ジェン(U23版ジロと言われる大会)では、マリア・ローザを着たことがあるんだ。それ以来のイタリアでの成果だよ。次は“ジロ・デ・イタリアでステージ優勝だ!”って本気で思っていたんだ」(セガールト)
チーム全体がすごく良いムード
マリア・ローザ マジックはチーム全体に波及
23歳のセガールトは、アンダー23カテゴリー時代にタイムトライアルで無類の強さを誇った。同種目のヨーロッパ選手権では2022年から3連覇し、世界選手権でも2度の銀メダル。昨年まではロットで走っていて、同チームが再編になったタイミングでバーレーン・ヴィクトリアスへ。3月にはワンデーレースで1勝。このジロでは、得意のタイムトライアルで上位進出を狙いながら、他のステージでの活躍を目指していた。
「タイムトライアルは体調が悪く、思っていたような結果にはならなかった(第10ステージ16位)。すごく悔しかったんだ。サイクリングは感情も大切だと思っていて、タイムトライアルでの悔しさをどこかで晴らすつもりでいた。結果的にそれが今日だったのだけど、いざ成し遂げてみたら実感がなかなか湧かない。不思議な感覚だよ」(セガールト)
前夜はマリア・ローザのエウラリオと同部屋になったという。
「ガールフレンドに“ピンクのルームメイトがいるよ”って報告したんだ。彼女からは“力をもらえるんじゃない!?”って返ってきた。本当にその通りになったよ!」(セガールト)
その“ピンクのルームメイト”も、レッドブルKMでの6秒を活かして、ヴィンゲゴーとの総合タイム差を33秒へ拡大することに成功。エウラリオによるマリア・ローザのキープは、チームにプレッシャーどころか、大きな希望をもたらしているという。
「僕が、というよりはマリア・ローザのおかげだよね。チーム全体がすごく良いムードで、毎日を楽しめているんだ。ライダーはみんな若くて、いつもどこかから冗談が飛んでくる。アレックが勝ったのは僕が力を与えたからだって? それはどうか分からないけど、チームのムードが彼の背中を押したところは大いにあるだろうね」(エウラリオ)
バーレーン・ヴィクトリアスにとって最高の1日。彼らがリーダーチームを務める日々は、もう少し続きそうだ。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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