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サイクル ロードレース コラム 2025年5月8日

【輪生相談】長きにわたってロードバイクを楽しむにはお金がかかる趣味となってしまうのでしょうか?

輪生相談 by 栗村 修
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ロードバイク歴10年以上になる40代です。リムブレーキ仕様のロードバイクを3台保有しています。古い機材で我慢して乗り続けていると機材にも疎くなり、長きにわたってロードバイクを楽しむにはお金がかかる趣味となってしまうのでしょうか?やはり新しい機材に触れる楽しさ、パーツをいじる楽しさもロードバイクのモチベーションを維持するうえで重要かと思います。私はロードバイク4台目を購入することは、無理だと諦めてます。3台目は中古パーツで組んだくらいですので。趣味として機材の買い替えもなかなかハードルが高く、モチベーション維持も難しく乗らなくなってしまう人も多いこともロードバイク離れの原因になっているかと思います。栗村さんはどうお考えでしょうか。

(男性 会社員)

■栗村さんからの回答

栗村さん

価格の高騰が原因でロードバイクから離れる人がいるのは事実だと思います。特に、リムブレーキ時代の最終盤に、お金と手間暇をかけて自分だけの最高のバイクを組み上げた人にとっては、その後の電動変速化やディスク化などはダメージ大ですよね。また、ゼロから同じ作業をやり直さなくてはなりませんし、当時と同等のグレードで最新の車種を組むとなると、場合によっては予算が倍近く必要になるわけですから。

メンテナンス性の低下も問題です。かつては自分で気軽に整備やカスタマイズが可能だったのですが、最新機材だと専用工具や専門知識が必要となり、一般ユーザーがいじりにくくなってしまいました。さらに、新しい規格や技術の導入によってパーツ同士の互換性が下がり、パーツ選びに制約がかかるケースも増えています。販売店にとっては整備需要が増えているものの、作業時間と手間が増えるため、利益率については必ずしも喜べる状況ではないとのことです。

それだけではありません。重要な問題だと僕が思っているのが、見た目についてです。最新のエアロロードバイクの「マシーン感」は、ほんの数年前のものであっても、リムブレーキバイクに「古さ」を感じさせる原因になっています。ワイヤー類が内蔵されハンドル周りがすっきりとし、リム幅の広いカーボンホイールに極太タイヤが生み出す迫力を目の当たりにすると、数年前のハイエンドバイクですら時代遅れに感じられます。

しかし、最新のハイエンドモデルは既に150万円超えが当たり前の世界です。趣味の継続を断念せざるを得ない方は少なくないのではないかと考えています。

しかし、僕は思うのですが、最新のバイクと10年ほど前の25Cタイヤを履いたリムブレーキバイクを乗り比べても、重量とグレードが同じならば、たとえば峠のタイムに大きな差が生じるわけではないんですよ。価格はそれこそ倍くらい違うのに、です。僕は「電動変速+ディスクブレーキ+30Cタイヤ」のバイクと「機械式変速+リムブレーキ+25Cタイヤ」の古いバイクを使い分けていますが、正直なところ後者のほうがしっくりきます。もちろん慣れの問題が大きいのは事実ですが、同じように感じるサイクリストは多いのではないでしょうか。

ならば、堂々とリムブレーキのバイクに乗ればいいのです。パーツはまだまだ供給されているので基本的なメンテナンスだけで乗れますから、お金もかかりません。メーカーや販売店はこの考えを快く思わないかもしれませんが、質問者さんのように趣味を断念してしまっては元も子もありません。続けられる選択をするほうが、業界にとってもずっと賢明だと思います。

最新のハイエンドロードバイクをなかなか購入できないユーザーにとって、主な選択肢は二つあります。ひとつは、これまで購入した一世代前のハイエンドバイクに乗り続けること。

もうひとつは、グレードを下げて最新のロードバイクに乗り換えることです。

しかし、前者についてはなかなかそういう雰囲気にならない。それは、さっき書いたリムブレーキバイクの微妙な「古さ」が一因になっているからだと思うんです。

であれば、クラシックなクロモリバイクとまではいかないけれど、00年代や10年代のロードバイクを綺麗に整備し、自分なりにチューンして大事に乗る、という「ちょっとした古さ」に魅力を見出す、自分だけの価値観を持ってみてはいかがでしょうか。

日本の自転車文化は、価値観がちょっとシンプルすぎるきらいがあります。「新しいもの」「高価なもの」「速いもの」が価値を持つのはまったく否定しませんが、それ以外の多様な価値があってもいいと僕は思います。10年落ちのロードバイクをかっこよく乗りこなす中高年サイクリストなんて、いいと思いますけどね。

「新しいもの」「高価なもの」「速いもの」以外の価値を確立するためには、自分の中での価値観をしっかりさせることが肝心だと思います。たとえば、コンタドールやフルームが活躍していた時代のレースが好きな方なら、当時のスタイルをウェアなど含めて再現してみるのはいかがでしょうか。当時のアイテムを揃える行為が、新たなモチベーションや購買意欲を刺激するかもしれません。

一方で、グレードを落として最新のロードバイクに乗り換えるという選択肢も全然ありです。現行の105コンポーネントはひと昔前のデュラエースに匹敵しますからね。

あくまでも趣味ですから、ご自身が楽しみながら継続できる方法をぜひ見つけてください。その第一歩として、まずご自身の価値観を設定することをおすすめします。そこから再出発してみましょう。

フルームらが活躍していた時代のスタイルを再現してみるのも一興だ

文:栗村 修・佐藤 喬

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栗村 修

中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。

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