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2025年モニュメント大戦の第3弾、全長55.3kmの石畳が待ち受ける最も運に恵まれた選手が勝つレース【Cycle*2025 パリ~ルーベ:プレビュー】
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか起伏のない石畳が勝敗をわけるパリ~ルーベ
長く苦しい石畳地獄の先には、天国への門が、大きく開いている。春クラシック前半戦のクライマックスにして、2025年モニュメント大戦の第3弾。ミラノ〜サンレモ、さらにはロンド・ファン・フラーンデレンで壮絶なバトルを繰り広げた2人のチャンピオンが、4月13日(日)のパリ〜ルーベで、この春3度目の直接対決へと走り出す。
全部で5つしかないモニュメントを、昨季は平等に2つずつ持ち帰ったマチュー・ファンデルプールとタデイ・ポガチャルは、今季もここまで1対1。3月末のイタリアでは、マチューが少人数スプリントでライバルを蹴散らし、4月上旬のベルギーでは、ポガチャルが独走で敵を突き放した。しかも両レースともに、表彰台では、2人仲良く1位と3位の段に立った。
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序盤の約100kmはアスファルトの道を爆走するだけ
モニュメントタイトルをポガチャル8、マチュー7に伸ばした時点で、2人の競り合いは一旦打ち止めとなる予定だった。ところがサンレモ直後に、ポガチャルがあっさり心変わり。ルーベ参戦を宣言してしまった。現役マイヨ・ジョーヌとしては、1991年のグレッグ・レモン以来となる出走だ!
この夏のフランス一周で総合4勝目をかける大切なエースの、無謀な挑戦に、もちろん所属チーム側は大慌て。2年前はリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで手首を骨折し、ツール準備が大幅に遅れたが、それ以上に重大な事態が起こりかねない。「ルーベは最優先目標ではない。必ずしも今年出場する必要はないはずだ」と、代表のマウロ・ジャネッティは強調する。
史上最強への道を突き進むポガチャルにとっては、きっと今年だからこそ、ルーベに出場する必要があった。自転車史に燦然と輝く偉大なる王者たち……エディ・メルクスもファウスト・コッピも、それぞれマイヨ・ジョーヌ保持者としてルーベを制してきた。特にメルクスは、世界チャンピオンジャージ姿で栄光を射止めた。
さすがのポガチャルでも、簡単に勝てるレースではない。開催122回目を迎える大会で、初出場・初優勝の快挙はただ2回だけ。たしかにポガチャルは、ジュニア版なら2度走っている。2022年ツール第5ステージでは、区間7位と素晴らしい石畳適応力をも披露した。ただし、今回は、本物のパリ〜ルーベなのだ。259.2kmの長い道のりには、全30セクター・全長55.3kmもの石畳が待っている。しかも序盤の約100kmはアスファルトの道を爆走するだけだから、残す160kmの約3分の1は、ひたすら凹凸だらけの「北の地獄」に耐えねばならない。
パリ~ルーベ コースマップ
実は石畳の総距離は、史上最長だった昨大会より400m短い。代わりにセクター数が1つ増え、配置も軽く変更された。開催委員会の狙いは、早い段階から戦いを活気づけること。特に第25セクター(最初から数えて6番目)から第21セクターまで、入っては抜け、抜けては入り……と、立て続けにパヴェが襲いかかる。いつもより早く集団のふるい分けが進むだろうか。今大会1つ目の「5つ星」、第19セクターのトゥルエ・ダランベールは、ほんのすぐ眼の前に迫っている。
それは鬱蒼とした森を貫く長い長い一本道。時に選手たちは、大集団のまま、時速60km超でなだれ込む。ご存知、大会名物の「審判の地」であり、この地でのアクシデントは即、勝負の終わりを意味する。全長2.3kmの石畳に詰めかけたファンたちの凄まじい歓声に、無線の音はかき消され、両脇にびっしり並べられたフェンスのせいで、そもそもチームカーが選手救済に駆けつけることなどできない。混沌の世界。
パリ~ルーベ 石畳セクター
ちなみに1年前は、スピードを抑える目的で、アランベール入口に「シケイン」が設けられた。今年の開催委員会は別の方法で減速を目指す。それが突入前に横道に一旦逸れる作戦だ。セクターの500mほど手前で直角コーナーを2回曲がり、炭鉱敷地内を横切った後、再び直角コーナーを2回曲がってセクターイン。レース委員長のティエリー・グヴヌーの計算によれば、直角を4回こなすことで、時速は35km前後にまで下げられるという。
たとえアランベールを先頭で抜け出せたとしても、罠はいたるところで待ち受けている。特に残り48.6km地点からの第11セクター、モンサン・ペヴェール(5つ星)は全長3kmと長く、事故多発箇所である直角コーナーも2つこなさねばならない。第4セクターのカルフール・ド・ラルブル(5つ星、全長2.1km)は、まるで巨大なパーティー会場だ。決して熱に浮かされてはならない。ほんのわずかな集中力の欠如で、そこまで積み重ねてきた努力がすべて無に帰してしまう可能性がある。
鬱蒼とした森を貫く長い長い一本道の石畳
ところでポガチャルは、どこで勝負をかけるつもりなのだろう。サンレモでは終盤2つの上りを利用して集団を粉々にし、ロンドでも激坂のたびに加速し、着実にライバルの脚を削っていったものが、パリ〜ルーベに起伏は一切存在しない。
地元フランスメディアは、「サン・カンタン(残り205km地点)から逃げるべき」なんて冗談のように語る。たしかにモニュメントの中では唯一、大逃げにも勝機がある。2011年と2016年には朝からの逃げが優勝をさらった。2021年フロリアン・フェルメールシュも2019年ニルス・ポリッツも、さらには2018年シルヴァン・ディリエも、逃げグループから驚異的な体力で生き残った果てに、それぞれ2位に食い込んだ。前者2人は今やポガチャルの頼もしい補佐役で、3人目がファンデルプールの現アシストというのは、おそらく偶然ではない。
対する2連覇中のマチューは、現役シクロクロス&グラベル世界王者として、悪路にめっぽう強いだけではない。どうやら、自分にふさわしい、ルーベの勝ち方を知っている。
初出場の2021年大会は、ルーベ自転車競技場まで勝負がもつれ込んだ。普段ならスプリントにめっぽう強く、全身泥まみれ状態にも慣れっこのはずだったが、初めての「バンク」でうまく立ち回れなかった。3人によるスプリント勝負で、3位に沈むという大失態。だからこそ2023年はカルフール・ド・ラルブルの出口で独走を始めた。2024年は第13セクターでしかけ、60kmの一人旅だった。
もしもマチューが3年連続で「石畳トロフィー」を持ち帰った場合、フランチェスコ・モゼール(1978〜1980)以来のルーベ3連覇。また過去2回ともチームメイトのヤスペル・フィリップセンが、後続集団内でスプリントを制し、2位に食い込いこんでいる。頼もしい相棒とのタッグで、3年連続のワンツーフィニッシュも十分にあり得そうだ。
もちろんポガチャルvsマチューの構図をどうにか打ち破ろうと、他の有力者たちはあらゆる知恵を絞るだろう。前週のロンドで見られたように、大胆に先手を仕掛ける選手も出てくるはずだ。ワウト・ファンアールトはもちろん、今大会と同じ石畳を使うGPデュナンを制した19歳の新生マシュー・ブレナン擁するヴィスマ・リースアバイク、マッズ・ピーダスン中心にスプリント強者を揃えたリドル・トレック、フィリッポ・ガンナ筆頭に重量級TT巧者で攻めるイネオス・グレナディアーズ、かつて石畳精鋭群として鳴らした「ウルフパック」スーダル・クイックステップ等々、ビッグチームたちの意地とプライドをかけた走りにも期待したい。
最も運に恵まれた選手が勝つレース、パリ〜ルーベ
パリ〜ルーベと言えば気になるのが空模様で、予報によれば前夜から軽い雨模様とのこと。実は3月上旬からフランス北部は好天が続いてきた。つまり乾いた地面を軽く湿らせ、砂埃を抑える程度……の小雨なら大歓迎したいところ。ただ専門家によれば、「夏の雨氷」現象が起こる可能性もあるという。アスファルトや石畳に水の膜が張り、まるで凍結した路面のように滑りやすくなってしまうのだとか!!
サンレモが「誰が勝つのかわからないレース」であり、ロンドが「最も強い選手が勝つレース」であるならば、ルーベは「最も運に恵まれた選手が勝つレース」と言われる。強いチームと強い脚だけでは十分ではない。石畳の上で次々と降り掛かってくる難題を、華麗に切り抜ける強運の持ち主だけが、「クラシックの女王」に愛されるのだ。
執筆日時:2025/4/11
※出場予定選手は執筆時の情報を元に作成しています
※※変更になる場合がございますのでご了承ください
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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