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サイクル ロードレース コラム 2025年3月21日

最長距離289kmの春のモニュメント、ポガチャルは攻略できるのか? アルペシンコンビは今年も立ちはだかる【Cycle*2025 ミラノ〜サンレモ:プレビュー】

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ミラノ〜サンレモ

ミラノ〜サンレモは個々の得意技が次々と飛び出す

春一番の興奮が吹き荒れる。長く退屈にも思える待ち時間を、突如として鋭いアタックが切り裂き、めくるめくサスペンスはフィニッシュまで続く。2025年3月22日(土)、クラシックの中のクラシック「クラシチッシマ」ミラノ〜サンレモが、今季もシーズン最初のモニュメント覇者を選び出す。

今年は春分の日の2日後に行われる「プリマヴェーラ(春)」は、現存するワンデーレースとしては最長距離を誇る。2年前にスタート地がミラノ郊外へと移動した影響で、実はほんの少しだけ短縮傾向にあるのだけれど……そうは言っても289km。走行時間は6時間を超える。

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ミラノ〜サンレモ

ミラノ〜サンレモ、ルートマップ

モニュメントの中では、実は、最も完走しやすいレースとしても知られる。スタートからしばらくはポー平原を南へもくもくと下るだけ。コース半ばでパッセ・デル・トゥルキーノを上って下りるが、その後もしばらくは地形的に難所は登場しない。それでも春のリグーリア海岸線に出てからは、息を呑むような美しさに感激しつつも、プロトン内の緊迫感は徐々に増していく。

なによりサンレモは、果たして誰がどんな風に勝つのかが、最も予想しづらいモニュメントなのだ。あらゆる脚質に輝けるチャンスがあるからこそ、異なるタイプのリーダーがスタートラインに並び、様々な思惑が交差する。最後の瞬間までハラハラドキドキが止まらない!

ミラノ〜サンレモ

あらゆる脚質に輝けるチャンスがあるミラノ〜サンレモ

「スプリンターズクラシック」として親しまれてきたとおり、昨大会のヤスペル・フィリプセンを筆頭に、時代を象徴する最速の男たちは確実に今大会を射止めてきた。ただ過去10回の大会を振り返ると、いわゆるピュアスプリンターと呼ばれる人種がヴィア・ローマで小集団勝負を制したのは、半分以下の4回に過ぎない。

ミラノ〜サンレモ

ミラノ〜サンレモ高低差図

最終盤に詰め込まれたいくつもの「上り」が、平地巧者の脚を試す。レース距離が残り50kmを切る頃、リヴィエラに突き出す小さな3つの岬「トレ・カピ」がプロトンに揺さぶりをかけ、ラスト21.7kmのチプレッサ(登坂距離5.6km、平均勾配4.1%、最大9%)が、疲弊した者たちを後方から切り捨てていく。そしてフィニッシュ手前5.6km地点に立ちはだかるのは、ご存知、ポッジオ。2018年大会では、ヴィンチェンツォ・ニバリがポッジオ中盤からのアタックで独走に持ち込み、3大ツール総合覇者としては23年ぶりのサンレモ制覇を成功させている。

ミラノ〜サンレモ

美しいイタリアン・リヴィエラが眼下に広がる

ポッジオ自体は距離3.7km・平均勾配3.7%と、決して平地巧者を震え上がらせるような代物ではなく、山岳巧者があっさりライバルを突き放せるような難関でもない。2年前のマチュー・ファンデルプールは、坂のてっぺん付近に待ち構える勾配8%ゾーンで飛び出したが、むしろそこからの目がくらむような急降下で距離を開いた。2022年のマテイ・モホリッチもまた、ヘアピンカーブ続きのダウンヒルでクレイジーなまでのテクニックを披露し、ライバルたちをまとめて置き去りにした。

最終3kmまではくねくね道ながら、その後しばらくはほぼ直線。だからこそ後方に取り残された選手たちには協力しあって追い上げることも可能だし、同時に顔を見合わせすぎて、自滅してしまう危険性もはらんでいる。最終2.5kmは平坦基調だからこそ、体躯の大きな健脚ルーラーにも極めて有利となる。

たとえラスト1kmを切った直後の、2つの直角コーナーに先頭で突っ込めたとしても、いまだ勝利は確約されていない。恐ろしい勢いで迫りくるプレッシャーを背中に感じながら、時にはぎりぎりまで我慢する勇気も必要だ。ラスト100mまでライバルの後輪で粘り、後続の16人をタイム差なしで交わしきった2021年大会のヤスペル・ストゥイヴェンのように。

すると、2025年大会のタデイ・ポガチャルは、ミラノ〜サンレモをどう攻めるべきなのか。

すでに本格クライマー向けのイル・ロンバルディアやリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、さらには石畳の激坂大戦ロンド・ファン・フラーンデレンをもぎ取ってきたモニュメントハンターは、過去3年連続で、いわゆる正攻法を試みてきた。つまりポッジオの坂道で猛烈にチームを働かせ、8%ゾーンで自らアタックに転じるというもの。ただポガチャルがどんなに踏み込んでも、決して独走態勢には持ち込めなかった。ツール・ド・フランスでは初出場・初優勝を成し遂げた鬼才ながら、サンレモに関しては、昨春、4度目の挑戦にしてようやく初めての表彰台乗りを実現させた。

ミラノ〜サンレモ

トゥルキーノからフィニッシュまでは150km残っている

チプレッサからの飛び出しを、今年こそトライするのかもしれない。昨春のストラーデ・ビアンケで81kmという驚異的な独走勝利を飾り、秋には100kmアタック・50km独走で世界チャンピオンジャージをつかんだポガチャルにとって、フィニッシュまでの残り20kmなど取るには足らない距離のはず。トゥルキーノは登坂距離約26kmとクライマーには申し分ない上りだが、残り150kmとは少々遠すぎるだろうか?

ポガチャルが下りアタックを用意しているという噂もある。ポッジオからはもちろん、チプレッサからの下りもまた目眩がするような急坂だ。しかも同地で2019年に鮮やかな下り急襲をしかけた地元っ子ニッコロ・ボニファツィオと一緒に、今回は入念に下見を積んだとのこと。そもそも2週間前のストラーデ・ビアンケで、あえてダウンヒル巧者トム・ピドコックと同伴したのは、もしかしたら下りテストだったのかもしれない。その下りで攻めすぎて転ぶ羽目になるのだが、最終的には独走優勝をさらっている。

いずれにしても、ポガチャルの周囲を固めるのは最強のアシスト陣。最終発射台を務めつつ自らもストラーデ・ビアンケ3位に入ったティム・ウェレンスを筆頭に、ほんの3日前にミラノ〜トリノを制したイサーク・デルトロや、ダウンアンダー総合覇者にして……昨ジロでポガチャルの初日マリア・ローザを阻止した男ジョナタン・ナルバエスと、自らも勝負を打てるエース級たちを揃えている。

過去2年連続でポガチャルを完璧に封じ込めたファンデルプール&フィリプセンのアルペシンコンビは、今年も必ずや手強い敵となる。ティレーノ〜アドリアティコで凄まじい好調さを見せた大型ルーラーのフィリッポ・ガンナや、パリ〜ニースで上れる脚を披露したスプリンターのマッズ・ピーダスンも、間違いなく勝負に絡んでくる。参戦11回・表彰台3回のマイケル・マシューズは念願のビッグタイトルを追い求め、モホリッチやピドコックの下りテクニック炸裂にも期待がかかる。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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