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サイクル ロードレース コラム 2025年3月17日

ジョーゲンソンが悪天候に震えつつもパリ〜ニースで2連覇、負傷リタイアの僚友ヴィンゲゴーの無念を晴らす【Cycle*2025 パリ〜ニース:レビュー】

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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パリ〜ニース

第1ステージ出走前のジョーゲンソン(左)とヴィンゲゴー

第83回パリ〜ニースが3月9日から16日まで8日間のステージレースとしてフランスで開催され、チームヴィスマ・リースアバイクのマッテオ・ジョーゲンソン(米国)が大会連覇を達成した。ジョーゲンソンは第3ステージのチームタイムトライアルでトップフィニッシュして総合1位に。第4ステージでチームメートのヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)にその座を譲るが、第5ステージでヴィンゲゴーが負傷して再び首位に。シーズン前から連覇へのストレスを感じながらも、最後まで積極的な走りを見せた。

「太陽への道」という大会のキャッチフレーズはどこに行ってしまったの? 出場選手の嘆きが聞こえてきそうな悪天候に見舞われた1週間だった。みぞれまじりの冷雨を最先端ウエアで防御しながらフィニッシュを目指す。第7ステージはたまらず距離が短縮された。そんな厳しい条件でも崩れなかったのがジョーゲンソンだった。

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パリ〜ニース

第2ステージでメルリールが前日に続いて勝利

初日の第1ステージはスーダル・クイックステップのティム・メルリール(ベルギー)が得意のゴールスプリント勝負を制して優勝。総合成績で首位に立った。
「ステージレースを勝利でスタートするのはいつもうれしい。パリ〜ニースの黄色いジャージを獲得するのは2回目、そして小さなライオンを獲得するのも2回目。だから、もちろんそれを維持しようと努力したい。今後の天気がどうなるか。今日のように寒すぎなければ完璧なんだけど」とメルリール。

第2ステージでもメルリールが優勝して首位を守ったが、総合成績を争う本格的な戦いが始まったのは第3ステージだ。ヌヴェールのサーキットを出発する距離28.4kmのチームタイムトライアルが行われ、ここで実力を示したのがチームヴィスマ・リースアバイク。トップタイムでゴールするとともに、ジョーゲンソンが総合1位に、ヴィンゲゴーが総合2位に浮上した。

パリ〜ニース

第3ステージのチームタイムトライアルを制したヴィスマチーム

新チームTTは先頭選手のゴールタイムで優劣
各選手の総合成績はそれぞれのゴールタイムを反映

ところで、2023年のパリ〜ニースで新ルールのチームタイムトライアルが採用された。これは2026ツール・ド・フランス初日のチームタイムトライアルにも適用される予定なので、ここでその新ルールをチェックしておきたい。

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】パリ〜ニース 第8ステージ|Cycle*2025

チームタイムトライアルは1チームごとに全選手が一斉にスタートし、チームの4番目(大会の1チームあたりの出場選手数によって異なる)にフィニッシュラインを通過した選手の所要タイムでステージの着順が決められた。この4番目の選手と一緒にゴールしたチームメート全員がそのタイムを個人総合成績上で反映される。途中でチームの隊列から脱落した選手は各選手が実際に要した時間がそれぞれの個人総合成績に反映される。

パリ〜ニースで採用された新ルールでは、所属選手が一斉にスタートするのは同じだが、チーム内で最初にフィニッシュした選手の所要時間でステージ成績を決める。一方、個人総合成績は選手1人ひとりの所要時間を計算し、それを反映させることになった。これが大きな変更ポイントだ。総合優勝を狙う選手は独走で無駄に足を使いたくないので1番先にフィニッシュする役目を担うことはあまりない。それでも最後の最後まで1番手についていって可能な限りタイムロスせずにレースを終えたい。チームとしての総合戦略に影響する部分だ。

チームタイムトライアルの国際規定が一律変更されたのではなく、パリ〜ニースがレースを面白くするために導入したもの。面白ければ当然、主催者が同じツール・ド・フランスにも適用される。スペインのバルセルナで行われる2026年大会の第1ステージは距離19.7kmのチームタイムトライアルであり、この方式を採用することが決まっている。

パリ〜ニース

マイヨジョーヌ・エ・ブランを着用するジョーゲンソン

それではどうしてパリ〜ニースは新ルールを考えたのか? チームタイムトライアルはリタイア選手ができるだけ少ない大会序盤、ともすると初日に設定されるケースが多い。そしてこれまでは4番目の選手と一緒にゴールした選手全員に、個人総合成績の所要時間が当てはめられるので、特定のチームが総合成績の上位を独占してしまう。そして2位チームもまたずらりと続く。3位チームも。そんな弊害を排除するのが主な目的だ。

今回の第3ステージを制したヴィスマ・リースアバイクの作戦は、タイムトライアル欧州チャンピオンのエドアルド・アッフィニが前半に爆走。総合成績でどんなに遅れてもいいので、アッフィニはお役御免となって脱落する。中盤からは長い独走が得意なヴィクトル・カンペナールツがガンガン行った。ローテーションを多用して終盤までできるだけ多くの人数で走り、最後はトップタイムを目指してジョーゲンソンが最終ロケット。総合成績のためにヴィンゲゴーも行けるところまで一緒に行った。それが見事に的中した。

パリ〜ニース

第4ステージはアルメイダがヴィンゲゴーに競り勝つ

作戦大成功のヴィスマ・リースアバイクだが、南フランスの天候さながらに暗雲が立ち込める。第4ステージはレース途中から雹(ひょう)が降り始め、路面が滑りやすくなったことでレースが一時中断。天候がなんとか回復してその後のレースを再開することになった。最後の上りでヴィンゲゴーがアタックして残り2kmを単独で走り始めた。しかしUAEチームエミレーツ・XRGのジョアン・アルメイダ(ポルトガル)が背後からスパートして、最後に逆転。ヴィンゲゴーは1秒遅れの2位だったが、ジョーゲンソンに代わって首位になった。

「複雑な気持ちだ。いや、実際のところ、私はほとんど失望している。最後の25mまではリードしていたが、負けてしまった」とヴィンゲゴー。「僕たちはみんな震えていたから、そんな状況でレースをするべきではなかったと思う。結局、誰もがこの天候に苦しんだ。調子はよかったし、リードしていた時は勝てると思ったのだが……」

パリ〜ニース

第5ステージも太陽は現れてくれなかった

続く第5ステージでさらなる致命傷。ヴィンゲゴーが転倒して手を負傷し、衰弱して先頭から脱落したのだ。ジョーゲンソンがチームとしてリーダージャージを守るように動いたが、ゴール手前でバーレーン・ヴィクトリアスのレニー・マルティネス(フランス)を振り切ることができず、マルティネスが最後の100mで先頭に。マルティネスは初のワールドツアーレース勝利を手に入れた。ヴィンゲゴーは26秒遅れの16位。なんとか3秒遅れの3位に入ったジョーゲンソンに首位の座が移った。

「ヨナスは転倒した後に私のところに来て『手を骨折したかもしれない』と言った」と複雑な表情のジョーゲンソン。「ゴールではエースとしての役割を果たせるとヨナスは言ったが、その時点で彼はとても苦しんでいた。だから最後の上りでボクはベストを尽くしたし、不運でもリーダージャージを維持できたことはうれしい」

第6ステージに総合2位のヴィンゲゴーは出走しなかった。ヴィスマ・リースアバイクはエースを失うスタートとなったが、この暗い天候を巧みに利用した。ジョーゲンソンのアシスト役が下り坂で集団を粉砕。総合成績で40秒遅れにつけていたジョアン・アルメイダ(ポルトガル)、1分05秒遅れのブランドン・マクナルティ(米国、ともにUAEチームエミレーツ・XRG)、55秒遅れのレニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス)といった総合順位の上位選手をふるい落とした。

パリ〜ニース

第6ステージの終盤、総攻撃に出たヴィスマチーム

17選手だけでゴール勝負に挑んだが、すでにメルリールは脱落していて、リドル・トレックのマッズ・ピーダスン(デンマーク)が優勝した。総合成績ではジョーゲンソンが首位を守り、新人賞ジャージを着るレッドブル・ボーラ・ハンスグローエのフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ)が40秒遅れの総合2位に浮上した。

「今朝、ルートを調べてチームで立てた計画を忠実に実行した。それができるチームであることは分かっていた。コース状況を最大限に活用して、天候的には非常に暗い1日を、少なくとも結果的には素晴らしいものに変えることができてうれしい」とジョーゲンソン。
「ダウンヒルのときに十分な風があるかどうかを確認した。何度か振り返って後続と差があることを見たので、そこからゴールまでは全力でペダルをこぐだけだった」

パリ〜ニース

第7ステージを冷静に走るジョーゲンソン

第7ステージはさらなる悪天候で距離短縮の109.5kmに変更され、チューダープロサイクリングチームのマイケル・ストーラー(オーストラリア)が優勝。ジョーゲンソンが首位の座を守った。

「パリ〜ニースに最終日が来るまで戦いは決して終わらないということをよく知っている」とジョーゲンソン。「2位とのタイム差は総合優勝に十分だと思うが、同時に最終ステージがいかに緊張するものかも分かっている。でも昨年すでに経験していることは私にとって有利なことであり、多少の自信もある」

そして最終日、ジョーゲンソンが首位を守りきった。喜びよりも安堵の表情が印象的だった。
「今週のことを3カ月間考えていた。ついにレースの日がきて、全力を尽くして、それがうまくいってよかった。このチームに所属してよかった。本当にチームを祝福しなければならない」

文:山口和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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