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【Cycle*2021 パリ~ルーベ:レビュー】欧州王者のコルブレッリが雨と寒さと石畳に苛まれた地獄巡りを制す「最も美しい勝利」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかトップでフィニッシュするソンニ・コルブレッリ
泥だらけの肢体で、生き残った3人が最後の力を振り絞った。雨と寒さと石畳に苛まれ、6時間もサドルにしがみついた果てのスプリント。903日ぶりに勇者を迎え入れたルーベの屋外自転車競技場には、歓声が地鳴りのように轟いた。大逃げフロリアン・フェルメールスと、攻めて攻めて攻め続けたマチュー・ファンデルプールを、ソンニ・コルブレッリが力強い一押しで退けた。31歳、生まれて初めて挑んだ地獄巡りは、天国の門へと続いていた。
「初めてのルーベで勝てたなんて信じられない。僕の人生における最も美しい勝利は、子供を持てたこと。でも自転車人生において最も美しいのは、間違いなく今回の勝利。モニュメント制覇をずっと夢見てきたんだ」(コルブレッリ)
前日、同じ競技場に、歴史上初めて女子選手たちがたどり着いた。82kmもの逃げ切り勝利で、エリザベス・ダイグナンがいきなり伝説を作り上げた。2位のマリアンヌ・フォスも、3位のエリザ・ロンゴボルギーニも、長い苦難の終わりに、フィニッシュラインではまるで勝者のように腕を突き上げた。美しい瞬間だった。すべての選手がヒロインで、誰の瞳にも感激の涙が光っていた。
ちょうど同じ頃、フランスの大西洋岸から北部にかけて、大雨洪水注意報が出された。テレビはできるだけ外に出ぬよう呼びかけている。夜半に雨脚はいっそう強くなった。激しい雨の音で目覚めた選手だっているかもしれない。朝には辺り一面が水浸しになり、強風のせいで気温は大きく下がった。2002年大会以来となる湿り気たっぷりの、2001年以来となる雨に祟られた、パリ~ルーベの幕が開けた。
つまりどんなにベテランで、どれほど同大会での経験が豊富だったとしてもーーイマノル・エルビティが最多16回目の出場ーーこんなパリ〜ルーベは初体験だったのだ。石畳の農道は泥沼で、アスファルトの道さえスケートリンクと化した。スタート直後に早くも数人が滑って転んだ。それはフィニッシュ地まで延々と繰り返された。極度の集中と高いハンドルテクニックをもってしても、集団の前でも、後ろでも、複数で、単独で、冷たい地面の上に次々と選手たちは投げ出された。
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